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営業を終えたホテルの夕食会場→客「まだ営業していますか?」駆け込んできて…その後、スタッフが取った“対応”に「本当に嬉しい」

  • 2026.2.9
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出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

ホテルや接客業に携わっていると、「ルール上は対応できない」場面に必ず直面します。

ただ謝罪して終わらせるのか、それとも別の可能性を探すのか。その判断ひとつで、お客様の印象は大きく変わります。

深夜、空腹と疲労で限界に近い状態のお客様を前に、私が何を考え、どんな選択をしたのか。今回は、私が夜間のフロント勤務中に経験した「夕食を提供できなかったお客様」への対応についてお話しします。

深夜のフロント、涙ながらの訴え

その出来事は、土曜日の深夜に起こりました。

館内はほぼ満室で、夕食会場もすでに営業を終えた時間帯です。

フロントに駆け込んできたお客様は、夕食付きプランで宿泊予定でしたが、移動中の電車遅延により夕食時間に間に合わなかったとのことでした。

「まだ夕食会場は営業していますか?」

そう尋ねるお客様の表情には、空腹と疲労、そして焦りがはっきりと表れていました。

新人スタッフであれば、マニュアルを思い出しながら戸惑ってしまう状況です。実際、その場の空気も一瞬張り詰めました。

規則だけを見れば、夕食提供は不可能。

しかし、お客様は「夕食時にしか提供されない料理をどうしても食べたい」と、涙を浮かべながら訴えてこられました。私は、この瞬間こそフロントの対応力が試されていると感じました。

「結論」を急がない。共に状況を整理する勇気

私の頭の中には、すぐに「正直なところ、規則に則り提供不可」という答えが浮かびました。しかし、これまでの経験から、結論を急いで伝えてしまうことが、かえってクレームに発展することを知っていました。

そこで私は、まず「徹底的に聞くこと」を選びました。

否定的な言葉を一切使わず、到着までの経緯やお客様の思いを、落ち着いた口調で一つずつ確認していきます。

「できない理由」を押し付けるのではなく、「今、何が起きているのか」をお客様と一緒に確認する。

最終的に、その場での夕食提供はやはり不可能でした。しかし、「今できないなら、次に何ができるか」に思考を切り替えました。私はその場で話を完結させず、翌朝にリカバーできる可能性を模索し、上司への詳細な引き継ぎを約束したのです。

イレギュラーが生んだ、期待を超えるリカバリー

翌朝、夜間の状況を聞いた上司が調理担当へ掛け合い、特別な対応が決まりました。チェックアウトの直前、お客様の元へ「昨夜、お出しするはずだった料理」を届けたのです。

予期せぬおもてなしに、お客様は驚き、そして満面の笑みを浮かべてくださいました。

「昨晩は残念だったけれど、ここまで考えてくれて本当に嬉しい。」

この経験から学んだのは、「できない」と伝える前の姿勢の大切さです。

100%の要望には応えられなくても、まずは受け止め、考え、次の可能性を提示する。その一歩踏み込む姿勢こそが、ルールという冷たい壁を温かい信頼へと変える力になるのだと実感しました。

「終わらせない選択」がサービスの質を変える

クレーム対応やミスのリカバリーに必要なのは、特別な技術ではありません。 目の前の人と真剣に向き合い、「ここで終わらせないために何ができるか」を考えること。

たとえその場で解決できなくても、その誠実な姿勢は必ずお客様に伝わります。その積み重ねこそが、サービスの質を一段引き上げる力になると、私は信じています。


ライター名:相沢 凌

ホテル業界で約10年間勤務。フロント・夜間対応を中心に、数多くのクレーム対応やミスリカバリーを経験した。現場で培った「人の感情に寄り添う視点」を活かし、現在は実体験を軸にした記事執筆を行っている。


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