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ホテルで予約が見つからず焦っていると?→客「この人が仕事できなくて」と嘲笑してきて…しかし、その後発覚した“事実”にスカッ

  • 2026.2.10
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ホテルマンという仕事をしていると、時に理不尽な言葉を投げかけられることがあります。 プロとして笑顔は崩さないけれど、心の中では静かにスイッチが入る音がする——。 ある日訪れた、絵に描いたような幸せそうなご家族。しかし、予約が見当たらないというトラブルの中で、お父様が放った一言が私のプロ根性に火をつけました。 「人のふり見て、我がふり直せ」。今でも忘れられない、ある日のフロントでの教訓です。

「仕事ができない人」というラベル

「ひろーい!」 ロビーに足を踏み入れた瞬間、子どもたちの歓声が響きました。ご両親と小学生くらいのお子さんが二人。どこからどう見ても、幸せな家族旅行のワンシーンです。

私はいつものように笑顔で迎え、チェックインの確認を始めました。しかし、すぐに「違和感」が訪れます。

……予約が、ない。

 端末のキーを叩く音が、静かなロビーに乾いて響きます。 日付、名前、人数。当日だけでなく、前後一週間を検索しても、画面にそのお名前は現れません。

――システムのエラー?
――日付を一カ月間違えている?
――奥様の名前で予約している?

頭の中で可能性を次々と並べ、お客様へ確認していきます。冷や汗をにじませながら必死に確認を続ける私を、父親はカウンターにもたれかかり、口元に笑みを浮かべて私を見ていました。その態度はどこか余裕があるように感じられました。

「いやいや、大丈夫大丈夫。ちゃんと予約してるから」

急かすでもなく、どこか余裕たっぷりの態度。焦る私を見て、優越感に浸っているかのようでした。それでも、何度見てもやはり予約は見つかりません。

「少々お時間をいただいてしまい、申し訳ございません」

そう伝えた瞬間でした。不安そうに父親を見上げた子どもに対し、彼は嘲笑混じりにこう言い放ったのです。

「この人が仕事できなくてさ。パパたちの名前、見つけられないんだって〜」

頭の中で、何かのスイッチが入る音がしました。しかし、顔の表情は一切動かしません。笑顔を貼り付けたまま、カウンターを出ました。

「大変申し訳ございません」

ロビーの椅子にご家族を案内し、立ち膝になって目線を合わせます。父親は「ほら、下手に出てきた」と言わんばかりに、さらにふんぞり返りました。

「お客様、念のため予約完了メールを拝見してもよろしいでしょうか?」

「ほら、あるから。見なよ」

得意げに差し出されたスマホの画面。それを覗き込んだ瞬間、私はすべてを悟りました。そこに表示されていたのは、当館ではなく、隣の宿の名前だったのです。

「お客様、メールに記載がございますホテル名は当館ではなく、隣のホテルでございます。」

時間が止まりました。 数秒前まで勝ち誇っていた父親の顔から、みるみる血の気が引いていきます。

「……あ、あれ? 嘘だろ……?」

ようやく出た声は、驚くほど小さく、震えていました。

すると、父親は急に強い口調になり、「比較サイトで見ていて間違えただけだ!」「今からこっち泊まれないの?」と立て続けにおっしゃいました。私は淡々と「当日予約の料金」と「隣の宿のキャンセル料」の可能性を説明しました。

結局、ご家族は気まずそうにこちらを伺いながら、隣の宿へと去っていきました。最後まで、私への謝罪の言葉は一度もありませんでした。

 「人のふり見て我がふり直せ」

誰かを下に見て笑った言葉は、いつか自分を助けてくれるはずだった人の手を振り払う形で返ってきます。

彼らの後ろ姿を見送りながら、私は静かに思いました。お客様を信じることは大切。けれど、自分を貶める言葉に屈しない強さを持つのも、プロの仕事であると。

気付くとロビーには、またいつもの穏やかな時間が流れていました。


ライター名:tata_work

北海道・道東の厳しい寒さと温かい人情が交差するホテルで、現役フロントマンとして勤務。通信業界8年、ホテル業界3年など、接客業一筋15年以上のキャリアを持つベテラン。
「事実は小説より奇なり」を地で行く現場では、理不尽なトラブルから涙が出るような感動秘話まで、数多の人間ドラマを目撃してきました。教科書通りのマニュアル対応ではなく、泥臭くもリアルな「接客の真髄」を知り尽くしています。趣味は人間観察とトラブル解決。現場の温度感と心の機微を、臨場感たっぷりの文章でお届けします。


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