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ホテルで「お一人様1個まで」のお菓子を補充→数分後には無くなっていて…その後、発覚した“驚きの犯人”に「まさか」

  • 2026.2.10

 

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

サービス業において「お客様を信じること」は美徳です。しかし、その美徳が「確認の放棄」に変わったとき、現場は思わぬ危機に直面します。

ある年代のご夫婦をお迎えしたあの日。私は自分の「人を見る目」がいかに不確かで、危ういものであるかを思い知らされることになりました。

「外見」というバイアスが招いた判断の遅れ

ホテルで働いていると、つい“人を見た気”になってしまいます。

午後のチェックイン。

そのご夫婦は、服装も声のトーンも穏やか。一見して「良識あるお客様」そのものでした。ご主人は軽く会釈をし、奥様はにこりと微笑んで「よろしくお願いします」と一言。

しかし、彼らが通り過ぎた直後、ロビーのウェルカムコーナーに異変が起きます。地元の特産菓子を「お一人様1個まで」とご案内しているのですが、補充したばかりの菓子が、わずか数分で底をついていたのです。

「まさか、あのご夫婦が?」

スタッフ間に流れた疑念を、私は「失礼にあたる」と一度は打ち消しました。

しかし、これこそがプロとしての最初のミスでした。「感じが良いから」という主観的なバイアスが、客観的な事実(備品の異常な減少)への対処を遅らせたのです。

「常道」を逸した、静かな略奪

確信に変わったのは、夕食バイキングの会場でした。

奥様は肩にバッグをかけたまま、極めて自然な動作で、卓上の小袋の塩、醤油、さらには割り箸までも次々とバッグへ吸い込ませていきます。

その手つきには一切の迷いも、周囲を気にする素振りもありません。そのあまりに自然な一連の動作に、私は背筋が凍るような感覚を覚えました。

私はその場で声を荒らげることはせず、退場時を待ちました。他のお客様の体験を守りつつ、逃げ場のない状況で事実を確認するためです。

「お客様、大変恐れ入ります。少しお時間よろしいでしょうか」

別室で提示されたバッグの中身は、もはや「お土産」の範疇を超えた異様な光景でした。数十個の和菓子、束になった歯ブラシ、カミソリ、調味料……。それは旅の記念というにはあまりにも多く、私たちはそこに明確な意図を感じざるを得ませんでした。

それを見たご主人の顔が、みるみる赤くなります。

「……なんだ、これは!!」

怒鳴るというより、声が震えていました。奥様はその場にへたり込み、言い訳もせず、ただ声を上げて泣き始めました。

私たちは「警察へ通報する」という苦渋の決断を下しました。 ホテルの役割は寛ぎを提供することです。しかし「ご自由に」という言葉は、あくまで公序良俗と相互信頼の上に成り立つ契約です。

度を超した不正を温情で片付けることは、正当な対価を払って利用されている他のお客様への裏切りであり、現場の規律を崩壊させることにつながります。

事情聴取を受けるご夫婦の後ろ姿を見送りながら、私は重苦しい沈黙の中で「信頼すること」と「管理すること」は、決して相反するものではないのだと学びました。

善意を損なわせないための「仕組み」

この一件を経て、当館ではアメニティの配置や提供方法を根本から見直しました。

「人は見た目では分からない」という教訓は、人間不信になるためではありません。「誰に対しても常に一定のプロトコルで接し、隙を見せない」という真の公平性を保つためにあります。

お客様の善意に甘えるのではなく、その善意を損なわせないための仕組みを作ること。それが、一度壊れた信頼の先に私たちが辿り着いた、プロとしての答えです。


ライター名:tata_work

北海道・道東の厳しい寒さと温かい人情が交差するホテルで、現役フロントマンとして勤務。通信業界8年、ホテル業界3年など、接客業一筋15年以上のキャリアを持つベテラン。
「事実は小説より奇なり」を地で行く現場では、理不尽なトラブルから涙が出るような感動秘話まで、数多の人間ドラマを目撃してきました。教科書通りのマニュアル対応ではなく、泥臭くもリアルな「接客の真髄」を知り尽くしています。趣味は人間観察とトラブル解決。現場の温度感と心の機微を、臨場感たっぷりの文章でお届けします。


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