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「本当に私の数字ですか?」“試算表”を見て絶句。年金受給を65歳→70歳に繰り下げた人の“大誤算”【社労士が解説】

  • 2026.2.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

老後のお金、漠然とした不安を感じていませんか? 年金はただ「もらうもの」、退職金は「もらえるもの」と、深く考えずにいる方も多いかもしれません。しかし、ほんの少しの知識と行動で、生涯受け取る金額が数百万円、いや、数千万円も変わる可能性があるとしたらどうでしょうか?

今回は、あゆ実社労士事務所の専門家が語る、年金と退職金の受取額を最大化するための賢い選択について、皆さんが見落としがちなポイントを深掘りします。「なぜ、たった1日の違いが大きな差を生むのか?」、そして「どうすればその差を最大限に活かせるのか?」。その真実に迫り、あなたの老後の安心を確かなものにするヒントをお届けします。

年金「まさか!生涯1,500万円超の差に言葉を失う」

---年金の受給開始時期で、生涯受取額に大きな差が出ると伺いました。具体的にどのような仕組みで、どれくらいの差が生まれるのでしょうか?

あゆ実社労士事務所さん:

「これ、本当に私の数字ですか?」と何度も画面を見直す方がいました。65歳からの受給と70歳からの受給を並べた試算表を見た瞬間のことです。ある条件下のシミュレーションでは、その差が生涯で1,500万円を超えることもあり、言葉を失っていました。

厚生年金の受給額は、加入期間と報酬の積み重ねで決まります。長く加入し、報酬が高いほど受給額が増える仕組みです。ここに「繰下げ受給」が加わると、差がさらに広がります。現在は75歳まで繰下げが可能で、最大84%の増額になります。65歳から1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増額され、70歳まで繰り下げた場合は42%の上乗せです。月額15万円の方を例にすると、70歳まで繰り下げることで月6万円以上の差が生まれ、受給期間が長くなるほどその積み重ねは大きくなります。

ただし、繰下げには注意点もあります。受給開始が遅くなる分、早く亡くなった場合は総受給額が逆転することもあります。損益分岐点は試算条件によって異なりますが、おおむね81〜82歳程度と言われており、健康状態や家計の状況と合わせて考える必要があります。

年金はただ「もらうもの」ではなく、加入を積み重ねてきた結果としての権利です。その権利をいつ、どのように行使するかで、老後の手取りは大きく変わってきます。制度の仕組みを知っているかどうかが、生涯受取額に直結する領域だと感じています。

定年退職で「たった1日」が招く年金・退職金の損失とは

---定年退職の際、退職日の設定が年金や退職金に大きく影響すると伺いました。なぜたった1日の違いで、そんなに変わるのでしょうか?

あゆ実社労士事務所さん:

「月末の一日前に退職したことで、厚生年金の加入月が1ヶ月分少なくなっていた」。そう声を漏らす方は少なくありません。定年退職という大きな節目だからこそ、日付一つの意味を軽く見てほしくないと感じています。

厚生年金の加入期間は、年金額の計算上、月単位でカウントされます。その月を「厚生年金に加入している月」として扱うかどうかは、原則として月末時点で厚生年金の資格があるかどうかで判断されます。月末に在籍していれば、その月は厚生年金の加入月としてカウントされますが、月末の前日に退職すると、その月が厚生年金の加入月に含まれなくなる場合があります。たった1日の違いが加入月数に影響し、それが年金額の計算に直接響くため、この仕組みを知らずに退職日を決めてしまうのは少しもったいないと感じています。

退職金への影響も見落とせません。多くの企業では勤続年数をもとに退職金を計算しており、月途中の退職が「端数切り捨て」扱いになる規程であれば、想定より支給額が少なくなることがあります。たとえば、勤続24年11ヶ月での退職が「24年」として計算される場合、1ヶ月に満たない期間がそのまま切り捨てられます。就業規則を確認した方から「そんな規定があったとは知らなかった」と言われることは少なくありません。

退職金規程の端数処理は、会社によって「切り捨て」「切り上げ」「月割り計算」とさまざまです。退職日を会社の慣例に合わせるだけでなく、自社の規程がどうなっているかを事前に人事担当者に確認しておくことが、具体的な損失を防ぐ第一歩だと思います。

「こんなに違うなら…」後悔しないための退職日決定3ステップ

---年金や退職金を最大限にするために、退職日を決める上で具体的に何をすれば良いのでしょうか?

あゆ実社労士事務所さん:

「こんなに違うなら、誕生日の前日まで働きます」と即答した方がいました。ねんきんネットで自分の見込み受給額を初めて確認した日のことです。試算表を見るまで、退職日をそこまで意識していなかったとおっしゃっていました。

いつまで働くのか決断するためにまず動いてほしいのは、ねんきんネットや直近のねんきん定期便で、自分の加入月数と見込み受給額を確認することです。「自分の加入記録ってこんなにギリギリだったんですね」と気づく方は少なくありません。加入漏れや記録の誤りが見つかれば、年金事務所での訂正手続きが必要になるため、早めのチェックが重要です。その確認を終えてから、自社の退職金規程と継続雇用制度の内容を照らし合わせると、退職日の選択肢が自然と具体的に見えてきます。

退職日の設定は、加入月数を最大限確保できる月末を基本に置いて検討することをお勧めしたいと思います。ただし、転職先への入社日程や社会保険料の負担タイミングによっては、月末前日の退職が合理的な場合もあります。一概に月末が正解とは言い切れないため、自分の状況に合わせた判断が大切です。繰下げ受給を視野に入れるなら、65歳以降の生活費をどう賄うかも含めて、継続雇用や貯蓄との兼ね合いを試算しておくことも必要になります。

数字を揃えたうえで、年金事務所や社会保険労務士への個別相談を早めに行うことが理想的です。退職日という一点の判断が、長い老後に静かに積み重なっていくと感じています。

老後の手取りを増やす! 知る人ぞ知る「賢い選択」

年金や退職金は、ただ「もらうもの」ではなく、あなた自身の働き方や選択によって大きく形を変える「権利」であることが、今回の取材であゆ実社労士事務所さんのお話から明確になりました。

繰下げ受給による生涯1,500万円超の差、そして退職日のたった1日が招く年金加入月数や退職金の損失。これらは、多くの人が見過ごしがちな「落とし穴」であり、同時に「賢い選択のチャンス」でもあります。

後悔しない老後のためにも、まずは「ねんきんネット」で自身の状況を確認し、会社の退職金規程や継続雇用制度を把握する。そして、年金事務所や社会保険労務士といった専門家への相談を、ぜひ早めに検討してみてください。

退職日という「一点の判断」が、あなたの「長い老後」に静かに、しかし確実に積み重なっていく。その事実を心に留め、あなたにとって最適な選択を見つけるための行動を今日から始めていきましょう。


監修者:あゆ実社労士事務所
人材育成・キャリア支援を軸に約10年の実務経験を持つ、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント。 IT企業の人事として、新卒・若手育成、研修設計、評価・キャリア支援の仕組みづくりに携わる一方、個人では企業や個人に向けたキャリア相談・人事支援を行っている。 これまでに累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1制度設計や面談シートの設計、育成施策の言語化を支援。 近年は生成AIを活用した業務設計・人事業務の効率化にも注力し、「現場で使えること」を前提にしたAI活用の伴走支援を行っている。