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“ある音”に注意して自然の中を歩くと幸福度はさらに向上する

  • 2026.1.26
「ある音」に注意しながら自然の中を歩くと、幸福度がより高まる / Credit:Canva

自然の中を歩くだけでも、私たちは爽やかな気分になり、心が落ち着くものです。

では、こうした効果をさらに高める方法はあるのでしょうか。

ドイツのエーベルハルト・カールス大学テュービンゲン(Eberhard Karl University of Tübingen)の研究チームは、自然環境の中でもとくに「鳥の声に注意を向けること」が、人の幸福度にどのような影響を与えるのかを詳しく調べました。

この研究成果は、2025年7月22日付の『Landscape and Urban Planning』に掲載されています。

目次

  • 自然を歩くと幸福度が高まるが、鳥の鳴き声に注意することでその効果がさらに向上する
  • 「鳥の声」を増やすのではなく、「意識を向ける」ことが大切

自然を歩くと幸福度が高まるが、鳥の鳴き声に注意することでその効果がさらに向上する

自然環境が人の心身に良い影響を与えることは、これまでの研究で繰り返し示されてきました。

緑の中を歩くと気分が改善し、ストレスホルモンが低下することも知られています。

そして、「鳥の存在」も注目されてきました。

鳥のさえずりは自然音の代表的な要素であり、「鳥が多い環境ほど気分が良い」「鳥の多様性が高い場所ほど回復感が高い」といった関連が報告されてきました。

しかし、その詳細はよく分かっていませんでした。

「鳥の種類や数そのもの」が大切なのか、それとも「人が意識的に自然へ注意を向けていること」が大切なのか、これまで明確に切り分けられていなかったのです。

そこで研究チームはこの疑問を検証するため、233人の参加者にテュービンゲン大学の植物園を約30分間、自由に散策してもらいました。

散策の前後には、気分や回復感などを問う心理アンケートとともに、血圧と心拍数、そして唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)が測定しています。

参加者はランダムに5つのグループに分けられました。

一部のグループではスピーカーで追加の鳥のさえずりが流され、別のグループでは自然の鳥の声のみを聞きました。

さらに、それぞれの条件で「鳥の声に注意してください」と促される場合と、特に指示を与えない場合が設定されました。

対照群として、ノイズキャンセリングヘッドホンを装着して歩くグループも用意されました。

こうした実験の結果、すべてのグループで共通して、自然の中を歩くことで血圧や心拍数が低下し、唾液中コルチゾールも平均で約33%減少すると分かりました。

また、主観的な気分や回復感も、散策後には一貫して向上していました。

そして、重要な違いも生じました。

鳥の声に意識的に注意を向けるよう促されたグループでは、「自然を味わった」という実感が強くなり、それにともなってポジティブな気分の変化もより大きく報告されたのです。

一方で、スピーカーによって鳥の声を人工的に増やしただけのグループでは、心理的・生理的な改善が特別に強まることはありませんでした。

なぜこうした違いが生じたのでしょうか。次項でより詳しく見ていきます。

「鳥の声」を増やすのではなく、「意識を向ける」ことが大切

研究チームが詳細な解析を行った結果、精神的な幸福度を最も強く左右していたのは、鳥の声そのものの数や種類ではなく、「自然をどれだけ深く体験したと感じたか」という点でした。

そして、その自然体験を高めていた要因の1つが、鳥の声に注意を向けたかどうかだったのです。

鳥の声に注意するよう促された参加者は、「自然を味わった」「自然とのつながりを感じた」といった自然体験の評価が有意に高くなっていました。

そして、この自然体験の深まりが、満足感や回復感、穏やかな気分の向上と強く結びついていました。

重要なのは、鳥の種類が多いと感じたかどうかや、実際の種の数は、幸福度に直接影響していなかった点です。

つまり、音の量や珍しさではなく、自然に向けられた意識のあり方が、体験の質を左右していたことになります。

では、スピーカーによる鳥のさえずりの追加で、期待された効果を示さなかったのはなぜでしょうか。

研究者たちはその理由について、「参加者が無意識に不自然さを感じていたことが影響した可能性」や「もともと自然の鳥の声が十分にあり、上乗せ効果が出にくかった可能性」を挙げています。

この研究の意義は、自然環境の「量」ではなく、「関わり方」に焦点を当てた点にあります。

ただ自然を用意するだけでなく、人が自然に気づき、注意を向けられるかどうかが、回復効果を左右することを示したのです。

これは公園や植物園の設計で役立つかもしれません。

たとえば、単に鳥の数を増やすことだけを目指すのではなく、「鳥のさえずりに耳を澄ませてみましょう」といった案内や、自然に意識を向けやすくする工夫が役立つかもしれません。

参考文献

Paying attention to birdsong while walking in nature can boost wellbeing, my research shows
https://theconversation.com/paying-attention-to-birdsong-while-walking-in-nature-can-boost-wellbeing-my-research-shows-273165

元論文

Effects of nature experience on mental well-being and physiological stress parameters in an experimental bird walk setting – the role of bird song
https://doi.org/10.1016/j.landurbplan.2025.105456

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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