1. トップ
  2. 夏木マリさん×浜辺美波さんインタビュー|“お別れ”の場を描きながらも、そこにあるのはさまざまな形の愛

夏木マリさん×浜辺美波さんインタビュー|“お別れ”の場を描きながらも、そこにあるのはさまざまな形の愛

  • 2026.1.24
撮影=セドリック・ディラドリアン

2026年2月6日公開の映画「ほどなく、お別れです」は、同名の小説が原作。葬儀会社を舞台に、亡くなった人の姿が見える不思議な能力をもつヒロイン・清水美空(浜辺美波さん)と、彼女の能力に目を付けた敏腕葬祭プランナー漆原礼二(目黒蓮さん)が「最高の葬儀」を目指して故人や家族と向き合う物語です。人の死や葬儀という悲しみの物語のなかに、それでも前に進んでいく人々の希望を感じさせるこの作品に祖母と孫として出演する夏木マリさん、浜辺美波さん。ふたりの温かな絆は、この作品の大切な要素となっています。

写真撮影=セドリック・ディラドリアン

初共演のおふたり。“かしこまりました”の浜辺さん⁉

―就職活動がうまくいかず、自信をなくしている美空を応援する祖母・花子(夏木マリさん)、ふたりの大切なシーンが何度か出てきます。共演してみての感想をお聞かせください。

浜辺美波さん(以下・浜辺):この作品で初めて夏木さんとご一緒させていただいたのですが、初めてお話させていただいたときから、美空にとっておばあちゃんの生け花を生ける姿、粋な話し方など、すべてが誇らしいのだろうなということを一瞬にして感じました。私自身も夏木さんが大好きになってしまい。良い家族なのですが複雑な事情もあり、その家族のなかでも美空とおばあちゃんとの距離は近くて、逃げ場所のようなおばあちゃんの部屋がある。そんな二人だけの関係性という空気を夏木さんが作ってくださったこと、本当にありがたかったです。

夏木マリさん(以下・夏木):私が演じる花子は元芸者です。いろいろなことを経験した、大きなキャパシティをもったおばあちゃんなんじゃないかと思っています。美空に対しては、この子の姉が亡くなっていて、その責任が自分にあるという負い目もあり、捧げる愛情が二倍あるような気がしていますね。葬儀会社の仕事にしても、失敗してもそれはきっとよい経験になるからやってごらん、という気持ちで接しています。花街で人とのかかわりが難しい仕事をしてきた人だと思うんです。だから、孫娘の美空がとにかくかわいくて、小さいことは気にせず、人生楽しければいいじゃない、やってごらん、そんな気持ちで接しています。

ⓒ 2026 「ほどなく、お別れです」製作委員会 ⓒ長月 天音/小学館

浜辺:私は、夏木さんご本人のかっこよさにも終始しびれていました。お話がとっても面白くて、病室のシーン(シリアスなシーン)でも、合間に面白い話をしてくださるからもう楽しくて。そのかっこよさ、面白さを尊敬していて、夏木さんご自身を大好きになれたからこそ、花子おばあちゃんとしての夏木さんとの距離を縮めて作品をつくることができたのではないかと思っています。

夏木:嬉しいですね。ありがとうございます。私たちの仕事って、どんな役を演じていても映像にその人のバックグラウンドみたいなものが出てしまうんですよね。私は、今頃、人生も後半になって何だかすごい大変な仕事を選んでしまったなと気づいています。きちんと真摯に生きているか、その人の中身や思考がぜんぶごまかせなくて“ばれて”しまうんです。お芝居の仕方はそれぞれパーソナルなものですし、あまり若い俳優さんにお芝居の話をすることはないんですけれど、浜辺さんは真面目で本当にプロです。現場で監督に何か言われると「かしこまりました!」って言って、かしこまったらもう全部できちゃうんですよ(笑)。

浜辺:いやいや、そんな。でも、気合です。いつも緊張しているんですよ。

夏木:いろんな方と仕事をしてきましたが、浜辺さんはその時、その時の気持ちをきちんと監督と話して、豊かに演じられているところ、本当に素晴らしいと思っています。もう、職人なのよね。役作りは思考だと言いましたけれど、その人の暮らしぶりやそこから生まれる考え方がどうしても入ってくるわけです。いろいろなことを見たり聞いたり、興味があるというのはやはり素敵なことなんじゃないかと思いますね。

ⓒ 2026 「ほどなく、お別れです」製作委員会 ⓒ長月 天音/小学館

悲しいけれど、そこにある愛を感じる物語

―今回の作品を演じるうえで、お二人の心の“芯”にあったものは何だったのでしょうか? 今回浜辺さんは「葬儀会社」「葬儀プランナー」という普通ではなかなかイメージしづらいお仕事の役です。

浜辺:はい、とくに、葬祭プランナーという特殊なお仕事のことは全く知らなかったので、勉強しながら演じていました。本当に人を思わないとできないお仕事ですし、心を削られるようなこともたくさんあるお仕事なのに、ずっと人に寄り添っている姿を尊敬しながらお芝居をしました。そして、この作品は美空の成長の物語でもあります。もともと葬儀会社という自分とはかけ離れた仕事で、いろいろなご葬儀を経験することでお別れへの思いや仕事に対する思いが変わっていく、その変化を大切にしたいと思っていました。

夏木:私は、この作品全体を通して、芯に愛を感じていましたね。いま浜辺さんがお話ししていたような、美空の仕事に対する愛、また目黒さん演じる美空の先輩・漆原の亡くなった人に対する思い、美空に対する思い、そして私が演じるおばあちゃんの孫に対する愛……。私は美空を後押しするような役割なのですが、ずっと、愛を忘れないようにやりたいと思っていました。

ⓒ 2026 「ほどなく、お別れです」製作委員会 ⓒ長月 天音/小学館

浜辺:愛はこの作品の大きなキーだと私も思っています。私は亡くなった人の声が聞こえるという役柄です。亡くなった方が遺族を思う愛、またその逆の遺族が亡くなった方を思う愛。すべてを自分だけがしっかりと伝えられる存在なので、それぞれの愛をダイレクトに目のあたりにしているような気持ちになります。もちろん、人の死が描かれている切ない、悲しいお話なのですが、その愛があるからどこか胸が温かい気持ちになるのではないかと思っています。美空の抱える複雑な事情も、最後はすべて愛のある形でひとくぎりとなります。

夏木:そう思って前に進めたのは、美空が最後に仕事を愛せるようになっているから。それが本当に成長の証だと思うんですよね。どんな仕事でも、仕事って愛がないとできないんですよね。私たちの仕事もそうです。台本を愛するとか、役を愛するとか。それがないと基本的に進めない。だから美空は最後、仕事を愛したんだなと思いました。

撮影=セドリック・ディラドリアン

―愛せない仕事の時はどうしたらいいんでしょうか? なんて夏木さんに“仕事論”の相談に乗っていただきたくなってしまいますね。

浜辺:そうなんですよ。いろいろ相談して、お話しを聞きたくなってしまって、もうお酒でも注文しようか、なんていう気持ちになってしまいます。

夏木:私の取材って、いつもそんな風に人生相談になっちゃうの(笑)。でも、私みたいに“いい加減”に生きればOKですよ。本当に。

撮影=セドリック・ディラドリアン

―こうやって素敵な関係性を築いているおふたり。ひとつの作品が終わる“お別れ”についてはどんな風に感じるのでしょう?

夏木:それはもう嬉しいわよね。無事に完走して、監督もOKしてくださったら……。

浜辺:怪我や病気なく終わったらもうホッとします。ただ以前は、もっとよくできたはずなのに……という悔しさが湧いてくることがたくさんありました。でも、いまは一度撮り終えて、いったん監督や編集の方に託す、やり切った感覚です。

夏木:映像は本当にそうね。舞台はまた違って、また次の日があります。日々色々と失敗があって、でもそれも一つの経験だから本当に失敗させていただいてありがたいなと思うんです。

撮影=セドリック・ディラドリアン

大変さ、悲しみを乗り切るために

―「婦人画報」を読む世代は、だんだんとお別れが身近になっていったり、介護など大変なことも多くなっていく世代です。この作品が見せてくれる、悲しみの先にあるかもしれない希望のように、何か読者にメッセージをいただくことはできますでしょうか?

浜辺:私から人生の先輩である読者の皆さんに、というのは難しいところがあるので、少し角度を変えたお話をさせていただいてもよいでしょうか? 私は映画というのは娯楽として素晴らしいコンテンツだと思っています。そしてこの作品はたくさんの愛が詰まった、愛に包まれた作品です。見た後に涙は残りますが、そのあとにちょっと顔を上げたいなと思うような作品になっていると思うので、生活をするうえでいろいろなことがあるとは思うのですが、ぜひひととき、息抜きに見ていただけたら、そんな風に思っています。

夏木:皆さんやはり生きていると大変なこともたくさんありますよね。私は、一喜一憂しないということが大切なのかなと思っています。神様はいるはずで、長い人生、誰しもアップダウンがあって、平均したら同じようになっているのではないかと思います。だから、一喜一憂しないことを“生きるコツ”としています。そして「病は気から」なんていう言葉もありますが、自分の気持ちなわけだから、楽しいと思えば人間は楽しいほうに動いていく。ダメだと思ったらダメになってしまうから。

浜辺:夏木さんはちょっと嫌なことがあった時、どうされるんですか?

夏木:美味しいものを食べて気分転換しますね。チェンジマインドしないと。その場を去る、切り替える、何か動かないといけないですね。いま、浜辺さんがおっしゃった映画や、本や音楽も。そのために私たちの仕事があるんですよね。

撮影=セドリック・ディラドリアン

なつきまり〇1973年に歌手デビュー。80年代より演劇にも活動の場を広げる。93年からコンセプチュアルアートシアター「印象派」で、身体能力を極めた芸術表現を確立し、世界三大演劇祭を制覇。音楽では2023年デビュー50周年を記念して「TOKYO JUNK BOOGIE」をリリース。映画版で声優を務めた『千と千尋の神隠し』舞台版では、24年ロンドンでの4カ月ロングラン公演を行い好評を博すなど精力的に活動を続ける。

撮影=セドリック・ディラドリアン

はまべみなみ〇2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディションニュージェネレーション賞受賞。2017年映画『君の膵臓をたべたい』に主演。日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。ドラマではNHK朝の連続テレビ小説『らんまん』でヒロインを務めたほか、映画『シン・仮面ライダー 』、映画『ゴジラ-1.0 』など話題作に多数出演。現在はNHK2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』に出演中。

映画『ほどなく、お別れです』

ⓒ 2026 「ほどなく、お別れです」製作委員会 ⓒ長月 天音/小学館

「もう一度、思いを伝えたい人はいますか? もしその願いが叶うとしたら…?」就職活動で連戦連敗を重ね、自身の居場所を見つけられずにいる清水美空(浜辺美波)。彼女には、《亡くなった人の声を聴くことができる》という誰にも打ち明けられない力があった。そんな美空に、運命を変える出会いが訪れる。彼女の秘密に気付いた葬祭プランナーの漆原礼二(目黒蓮)に、「その能力を活かすべきだ」と、葬祭プランナーの道へと誘われたのだった。妊婦の妻を亡くした夫、幼い娘を失った夫婦、離れて暮らす最愛の人を看取れなかった男─。それぞれが抱える深い喪失に触れる中で、二人は「遺族だけでなく故人も納得できる葬儀とは何か?」という問いに向き合い続ける。

2026年2月6日(金)公開

原作:長月天音「ほどなく、お別れです」シリーズ(小学館文庫)
配給:東宝
監督:三木孝浩
脚本監修:岡田惠和
脚本:本田隆朗
音楽:亀田誠治
キャスト:浜辺美波、目黒蓮 ほか

詳しくは公式サイト

撮影=セドリック・ディラドリアン ヘアメイク=中山八恵(夏木マリさん)George(浜辺美波さん) ネイル=村上響子(夏木マリさん) スタイリング=瀬川結美子(浜辺美波さん) 秋月洋子(夏木マリさん) 編集・文=本田リサ(婦人画報編集部)

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。

元記事で読む
の記事をもっとみる