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秀逸な茶葉料理の数々に唸る。西荻久保「中華 玄月」での締めは名物の"里麺(リーメン)"で!

  • 2026.1.24

編集部が注目する、おいしくて居心地のいい店をご紹介する連載「いい店見つけた!」。第8回は神楽坂の名店で研鑽を積んだシェフが満を持して開店する、西荻窪の新中華です!

秀逸な茶葉料理の数々に唸る。西荻久保「中華 玄月」での締めは名物の"里麺(リーメン)"で!

■中華の街・西荻窪に誕生した清らかで奥深いおいしさ

鴨のプーアール茶スモーク。1,200円。
鴨のプーアール茶スモーク。1,200円。
海老の塩炒め
海老の塩炒め

“鴨のプーアール茶スモーク”に始まり、“海老の塩炒め白豪烏龍茶風味”や“大山鶏モモの紅茶炒め”などなど。メニューを開くや珍しい茶葉料理の数々に、思わず目を奪われるのがここ「中華 玄月」。昨年11月、西荻窪にオープンしたばかりの中華料理店だ。

西荻窪は何気に中華の気風がある。小体ながらも気の利いた中華の優良店が数多点在しているのだ。そんな中、新たに参入するとあっては「何か特徴を出さなくては……」との思いから、茶葉料理を取り入れたのは台湾出身のご主人、張振隆(チョウ・ツェンロン)シェフ、45歳。

神楽坂の人気中国料理店「膳楽房」で開店当初から料理長を務めてきた逸材と聞けば、食指の動く中華ラバーも多いことだろう。台湾で生まれ育ち、中華の道に進んだ張シェフ。数軒の店で修業を重ねる中で最も影響を受けた一軒が、台北でも屈指の茶芸館「竹里館」。台湾茶のスペシャリストであり、優れた茶師でもある黄浩然(コウ・コウゼン)氏がオーナーを務めるこの店での経験が、現在の張シェフの料理に繋がっているという。

シェフと奥さま
シェフと奥さま
店内
店内

■茶葉料理の品揃えは随一!

茶葉料理といえば、杭州料理の名物“海老の龍井茶(ロンジンチャ)炒め”や四川ダックとも呼ばれる“樟茶鴨(ジャンチャーヤー)”などの茶葉料理は、これまで幾度となく味わってきた。だがこの店ほど多岐にわたる茶葉料理を出す店は筆者も初めて。俄然、興味が湧き、まずは前述の“鴨のプーアール茶スモーク”と“海老の塩炒め白豪烏龍茶風味”をオーダー。

前菜的立ち位置の“鴨のスモーク“は、前述の“樟茶鴨”によく似ているものの、こちらは揚げずにそのままスライス。見るからにしっとりとした身質の一切れを口にすれば、ほのかな薫香が鼻に抜ける。一方、海老の一皿は、別名東方美人茶とも呼ばれる台湾特産の烏龍茶を使用。紅茶に似た発酵度の高いお茶で、蜂蜜を思わせる甘い香りとフルーティな風味が特徴だ。張シェフによれば「お茶の風味を殺さぬよう全体的に薄味にしている」そうで、確かに味付けはうすめ。上品なお茶の風味が海老のプリプリ感と相まって、舌に優しい印象を残す佳品だ。茶葉の香りが決して出すぎることなく、海老を食した後に残り香のごとく鼻を抜けるかすかな芳香も絶妙だ。

■茶葉の香りがふわりと広がる海鮮玉子炒め

海鮮玉子炒め
海鮮玉子炒め

だが、より茶葉の香りを感じさせてくれるのは“海鮮玉子炒め烏龍茶風味”だろうか。見た目は蟹玉風だが、具は海老やアサリ、貝柱の3種。使用している茶葉は高山茶でたまごの表面に散らばる細かな粉がその粉末だ。ちなみに高山茶とは標高1000m以上の高地で栽培される烏龍茶のこと。昼夜の寒暖差が大きく、霧の強い場所で育つため質の良い茶葉ができるそうで、まろみのある甘やかな香りと気品のある旨味が特徴。まさに芳醇という言葉がピッタリだ。

今回、張シェフが用いた高山茶は阿里山樟樹湖高山茶。標高1300~1600mの高地で栽培された最高級品で、独特の山の香りと蘭のような華やかな香りを持つ銘茶の一つ。これを惜しげもなく粉にして炒め合わせているのだ。更には茶葉だけでなく「溶いた卵に海鮮類を入れるとき、お茶も淹れて加えています」とは張シェフ。余韻の長さもこのお茶の特徴の一つというだけに、口にした後、ふわっと蘇る茶葉の戻り香には思わず笑みがこぼれるはず。これに合わせて高山茶をオーダーし、合いの手に嗜むのも一興。淡く香る茶の香りを受け止めつつ、より深い余韻を味わえそうだ。

ちなみに、ドリンクとしての烏龍茶は、この高山茶のほか、清香四季春烏龍茶、凍頂烏龍茶、東方美人茶(白豪烏龍茶)にプーアール茶など温冷合わせて9種程が揃っている。料理と合わせてお茶ペアリングを独自に楽しんでみるのも面白そうだ。

■驚くほど柔らかく、とろけるような牛ホホのプーアール茶煮込み

牛ホホのプーアール茶煮込み
牛ホホのプーアール茶煮込み

さて、もう一品。お腹に余裕があれば、ぜひ味わってみたいのが“牛ホホのプーアール茶煮込み”だ。フレンチなら、さしずめ“牛ホホ肉の赤ワイン煮込み”といった風合いのこの一皿、見るからにボリュームもたっぷり。口にすれば、ほろりとほどける柔らかさでパサつきは皆無。しっとりとした食感としなやかさ併せ持つ逸品だ。

聞けば、牛ほほ肉は台湾の米酒や醤油、塩、ネギ、甘草、陳皮等々と共にプーアール茶で一時間半余り蒸し煮している。直に火にかけず、ゆっくりと蒸し煮することで、前述のような弾力のある柔らかさが生まれるのだろう。仕上げの際には、煮汁にもプーアール茶の粉末を加えたソースを添え、より茶の風味を高めている。どこか土の風味を持つプーアール茶とゼラチン質を含んだ牛肉の滋味とが見事にフィット。噛み締めるほどに旨味がにじみ出る。思いの外、あっさり食べられるのもプーアール茶の成せる技かもしれない。

骨付き鶏と酸菜の蒸しスープにく
骨付き鶏と酸菜の蒸しスープにく

蒸し煮といえば、“骨付き鶏と酸菜の蒸しスープ”と“スペアリブと季節野菜の蒸しスープ”の2つのスープも隠れた秀作。どちらも地味な食材ながら、各々の持ち味が混ざり合いほっとするおいしさに心が癒される。ベースのスープは鶏ガラやもみじ(鶏足先)でとる毛湯がベース。いずれも注文を受けてから蒸し始めるため要予約だ。予約の際に一言伝えるとよいだろう。

■鮮やかな緑に目を奪われる!名物の“里麺”は必食だ

名物の里麺
名物の里麺

また、締めに外せないのはやはり“里麺(リーメン)”。幡ヶ谷「龍口酒家」の名物で、その流れを汲む「膳楽坊」でも人気のメニューだった一皿だ。緑の麺はクロレラ入り。具は千切りのチャーシューと長ネギ、搾菜と至って素朴。それだけに麺のゆで加減、締め加減、そして和え加減がポイントとなる。

シェフ曰く「まず、冷水でしっかりしめること。そして、具と麺を和えるときには空気を含むように混ぜ、粘り気を出さないように気をつけている」。
この麺に限らず、どの料理も下ごしらえの丁寧さが伺える優しい味わいが何より魅力。一つ一つ手を抜くことなく、黙々と料理を仕上げる張シェフの真心が伝わる美味しさを堪能したい。


◇店舗情報

「中華 玄月」
【住所】東京都杉並区松庵3-25-9北斗参番館
【電話番号】03-5941-6866
【営業時間】11:00~14:30(L.O.) 17:00~21:00(L.O.)
【定休日】日曜 他に不定休あり
【アクセス】JR「西荻窪駅」より3分


文:森脇慶子 撮影:伊藤菜々子

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