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災害時の「お金と法律」(第3回 全壊や半壊とは?罹災証明書と自宅の被害認定)

  • 2026.1.13

罹災証明書に記載される「住家被害」とは

災害が発生すると、市町村は被災者の申請に応じて「罹災証明書」を発行する法的義務を負います。罹災証明書には、市町村が行った「住家被害認定」の結果が記載されます。

対象となる住家は、一戸建てやマンション、賃貸住宅など、実際に住んでいた建物です。空き家や会社事務所、店舗など、人が住んでいない建物は対象となりません。

この住家被害認定は、被害の大きな順に、「全壊」、「大規模半壊」、「中規模半壊」、「半壊」、「準半壊」、「準半壊に至らない」(一部損壊)という6段階に区分されています。

市町村が円滑に住家被害認定を行えるよう、国は「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」や「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」を公表しており、随時改訂しています。地震、水害、風害などの災害の種別ごとに、住家の経済的被害の標準的な調査方法を定めています。

固定資産評価額を参考に部位別の損害割合を算出し、それらを合計して最終的な損害割合を算出するのが運用の原則です。訓練や研修を受けた市町村職員・応援職員、土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士などの専門資格者らが実際の判定を行います。

たとえば、地震被害の木造住宅であれば、屋根で最大15ポイント、柱・耐力壁で最大15ポイント、床・階段で最大10ポイントなどと、多岐にわたる項目ごとに点数を積み上げていきます。その結果50ポイント以上が積算されれば「全壊」となります。家屋が完全倒壊、焼失、流出などしていなくても、全壊判定となることは当然あり得ます。

希望すれば「2次調査」や「再調査」を依頼できる!

住家被害認定は、まず「第1次調査」として、外部からの確認により、外観、傾斜、部位を目視して行います。一見して被害が大きい場合はすぐに「全壊」と判定できます。ドローン空撮映像などで被災エリアの建物を一括全壊認定した事例もあることはすでにお話ししたとおりです。

「第2次調査」では、外観目視調査に加えて、建物の内部への立入りをしたうえで、より詳細に外観損傷、傾斜状況、部位ごとの損害状況について目視確認を行います。原則として被災者の立ち合いが必要となりますので、被災者が希望する場合にのみ第2次調査が行われるケースがほとんどです。

ただ、災害の種類や規模によっては、最初から第2次調査のような内観調査を実施してから罹災証明書を発行したほうが、結果的にその後の支援が円滑になるケースもあります。

被災者から更に依頼があった場合には、「再調査」を行います。住家被害認定は10ポイント刻みで区分されています。わずか1ポイントの積算差で、住家被害認定の区分の明暗が分かれるのです。認定結果は、被災者生活再建支援金という給付金の有無やその金額、仮設住宅入居条件、義援金配分基準など、多岐にわたって参照されますから、被災者にとって最大の関心事です。少なくとも損害割合が過小評価されることは避けなければなりません。このため、より詳細な再調査を希望する被災者がいれば、市町村は機会を提供する必要があります。

長年にわたって被災者支援活動を行ってきた日本弁護士連合会は「罹災証明書に係る住家被害認定調査票(写し)の交付に関する意見書」(2024年12月19日)を公表しています。市町村が住家被害認定調査の結果やその資料を速やかに被災者に提供することで、被害区分認定の見直しを希望する人に、その機会を正当に確保するべきだとしています。

赤・黄・緑の応急危険度判定もある

罹災証明書の住家被害認定とは異なる制度として「応急危険度判定」があります。被災地では必ずと言ってよいほど利用される制度ですので、その意義や罹災証明書との違いを確認しておきましょう。

被災建築物応急危険度判定(応急危険度判定)とは、大規模災害直後において、被災建築物の倒壊危険性や、建築物の部分落下の危険性などを、建築士らよる「応急危険判定士」が判定するものです。

判定結果は3類型あり、「調査済」(緑)、「要注意」(黄)、「危険」(赤)のステッカーが直接建物に掲示されます。応急危険度判定で使用されるステッカーについては、47都道府県や国土交通省他関係団体が構成員となる「全国被災建築物応急危険度判定協議会」にて詳しい解説がありますので、ぜひ参照してください。

応急危険度判定は、被災地で活動する人の二次被害の発生を防ぐのが主な目的で、建物自体の損壊割合を調査するわけではありません。当初「危険」(赤)と判断された場合でも、落下物の除去など、適切な応急措置が講じられれば、「要注意」(黄)へと判定が変更になることもあります。このため、応急危険度判定で「危険」と判定された住宅でも、必ずしも「全壊」、「大規模半壊」、「中規模半壊」、「半壊」といった被害認定を受けるとは限りません。

損害保険金の請求に罹災証明書は必要ない!

風水害などで損害保険金を請求したり、地震被害の場合に地震保険特約に基づく保険金を請求したりする場合、市町村から交付される罹災証明書の提出は不要です。これまでの大規模災害においては、損害保険会社各社や日本損害保険協会から、注意喚起として罹災証明書の提出は必要ないというお知らせが発信されてきました。損害保険金などの請求のために罹災証明書の申請や交付を焦る必要はありません。

地震の場合、保険会社は、対象住家について、独自の「地震保険損害調査」によって被害認定を行います。現在の地震保険では「全損」、「大半損」「小半損」「一部損」という4段階の区分が設けられています。被害認定の方法は罹災証明書とは異なりますので、保険会社による「全損」判定が、必ずしも罹災証明書の「全壊」区分と一致するとは限りません。誤解のないように注意しておきましょう。

<執筆者プロフィル>
岡本正(おかもと・ただし)
弁護士/気象予報士/博士(法学)
1979年、神奈川県出身。慶応義塾大卒。銀座パートナーズ法律事務所。内閣府出向や東日本大震災での復興支援経験を活かし「災害復興法学」を創設。新潟大学研究統括機構客員教授、岩手大学地域防災研究センター客員教授、防災科学技術研究所客員研究員、人と防災未来センター特別研究調査員などを歴任するほか、慶応義塾大学などで多数の講座を担当。著書に「被災したあなたを助けるお金とくらしの話 増補版」(弘文堂)。

https://www.koubundou.co.jp/book/b593021.html

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