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震災と水害、備えに違いはある?<br>能登で二重被災した方に聞きました

  • 2026.1.2

地震と水害でいちばん違うのは、避難方法

今回お話を伺ったのは震災と水害の発生時、輪島市にお住まいだった4人の方です。そのうち、自宅に直接被害のなかったお1人を除いて3人の方に共通していたのは「水害時に建物の2階に避難した」ことでした。

そしてみなさんが口を揃えて話していたのは「あっという間に命の危険を感じるほど水かさが増えた」というエピソード。

地震と比べ、水害はある程度発生の予測ができると言われています。そうはいっても、実際に体験すると、先回りして検討・行動することはかなり難しいようです。

館長を務めていた公民館で被災したAさん(70代):大雨の予報を受けて公民館で備蓄品の準備などをしていたが、あっという間に川が増水し、身の危険を感じて近くの消防署の2階へ避難した。避難してすぐに公民館が濁流にのまれた。

自身は市外にいたものの、父と祖父母が仕事場である店舗で被災したBさん(20代):雨量が増えてきた当初は商品などを2階に運んでいたが、途中から自分たちの避難を優先した。避難のため移動中に水に巻き込まれて亡くなったという話を複数聞いた。そのことからも、建物の上階へ避難をしたのは正解だったと思う。

自宅で母とペット(犬2匹・猫2匹)と被災したCさん(50代):外の水たまりが厚みを増してきたな、と思っていたら30分も経たないうちに家の中が川のようになってしまった。最初は貴重品を持って上がったが、途中から命の危険を感じたので物の移動は諦め、犬・猫とともに2階へ避難した。

みなさん、「何十年もの間、一度も浸水したことがないと親から聞いていた」「ここが浸水すれば町中が沈むと言われていた」「(そのため)ハザードマップで浸水が想定されていたかどうかもわからない」と語り、大雨の予報があっても、まさか自分の住む地域が被災するとは思いもよらなかったそうです。

避難で焦らないために家族で共有しておきたいこと

大きな災害が起きた時は、近くの体育館や公園などの指定緊急避難場所に避難する、いわゆる「水平避難」が基本という認識を持っている方が多いかもしれません。しかし被災された方のお話を聞くと、災害の種類によっては必ずしもそうではないことがわかりました。実際、今回お話を伺ったみなさんは、水害時は自宅や避難施設の上階へと避難する「垂直避難」で助かったと話しています。

またよく似た言葉ですが、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の2つがあることをご存じでしょうか?

<指定緊急避難場所>:災害発生時に、危険から命を守るために緊急的に避難する場所。小中学校のグラウンドや体育館、校舎の2階以上などが指定されていることが多い。

<指定避難所>:災害によって避難をしてきた被災者が一定期間生活をするための施設。公民館や学校・体育館などの公共施設が指定されていることが多い。

この2つは同じ施設が兼ねていることもあります。なお、災害の種類や状況によって適した避難場所は変わります。どこに避難すべきか判断できるように複数の指定緊急避難場所を確認しておきましょう。

Aさんが大雨に備えて作業をしていた公民館も、指定避難所でした。ですが、結果的にはAさんの背丈ほどまで浸水したそうで、作業を続けていたら流されてしまっていたでしょう。

このように指定避難所になっていても、指定緊急避難場所とは違い緊急的な避難には適切でない場合があるので、事前の確認が大切です。指定避難所・指定緊急避難場所は、各自治体のホームページやハザードマップ、防災マップなどでチェックしましょう。災害種類別の指定緊急避難場所は、国土地理院のホームページで調べることもできます。ただし最新の情報は、必ず各自治体に確認しましょう。

水害発生時は高台の仮設住宅に住んでいたため、直接の被害はなかったというDさん(40代)も、「自身や家族の通勤・通学範囲を含め、生活圏がどのような特性のある地域なのかを、ハザードマップで確認し、避難先を家族単位で検討することが重要」と感じたそうです。

実際に、Cさんは「避難を検討する間もなく浸水してしまった。自宅は勾配のある場所で、避難場所の公民館や体育館へは、橋を渡らないと行けない。反対側はくぼんでいる地形で水が溜まりやすいため、外へ出てもどこにも避難できなかったと思う」と話してくれました。

こうした実体験からも、いざという時のために以下の3つを家族で共有しておくことが大切です。

  1. 災害の種類別に適した指定緊急避難場所
  2. 自宅から、あるいは勤務先・学校などから指定緊急避難場所まで安全に移動できるルート
  3. 指定緊急避難場所への移動が難しい時、自宅内あるいは周辺で避難できる場所。また、そこまで安全に移動できるルート

どの災害も防災グッズは基本的な備えを

震災と水害で避難行動や避難ルートに違いがあることがわかりましたが、防災グッズに違いはあるのでしょうか? そもそも災害のために非常食などの防災グッズを備えていましたか? という質問には、4人中3人が、震災時には「特別な備えはしていなかった」と回答しました。

特別な備えではなく、災害の種類を問わず、食料や水(飲料水・生活用水)、簡易トイレといった、基本的な備えが一番大切という意見が多くありました。備えておく必要性を感じたものは、地震と水害で大きな違いはなく、食料、水(飲料水・生活用水)、簡易トイレなどでした。やはり基本的な備えが大切なことがわかります。

これらの防災グッズ以外にも、体の清潔を保てるよう汗拭きシートを挙げてくれたBさん。「体が汚れていくと、心もどんどん落ち込んでいくのを痛感した」という言葉が印象的でした。

また燃料や食料、水、医薬品などひととおりの備えをしていたDさんが、準備しておけばよかったと感じたのはポータブル電源。あれば安心感が高まったかも、と話してくれました。

一方で、必要性は感じたものの、震災時、意外と食料には困らなかったことがみなさんに共通していました。非常食を備蓄していたほか、たくさんあったお正月用の食品を近所の人と持ち寄って分け合った、普段食べるために常備していた保存食(缶詰やレトルト食品など)があったなどの理由からです。

ただし地域によっては2週間以上孤立し、支援物資なども発災後1週間ほど経ってから届いたという話も聞きました。支援物資がいつ届くかは、災害の規模や道路状況等によっても変わってくるので、国も推奨しているように最低でも3日分、できれば1週間分の非常食をストックしていると安心でしょう。

また地震と水害どちらのケースにも対応できるよう、防災グッズの保管場所を1階と2階に分散させておくと、いざという時に慌てて移動しなくて済みそうです。

それぞれ被災状況や備えは違ったみなさんですが、同じように困ったことは「情報の入手」だったといいます。特に家族や親戚の安否確認、全体の被災状況などの情報を得るまでにはかなりの時間や労力が必要だったそうです。

Bさん:「震災発生時に七尾市にいたため、家族との連絡が2週間とれず生きた心地がしなかった。スマホの電波が届かない状況でもラジオはつながったので、震災後ラジオは常に近くに置くようになった」

Dさん:「ネットがつながらず、外部の情報が入手できなかった。発災から数日が経って、動ける住民が市街地まで徒歩で状況を確認しに行ったことで、自分たちの置かれている状況をやっと少し把握できた」

家族との安否確認には、SNSや災害伝言用サービスのほか、現在は一部のスマホや携帯キャリアで衛星通信を利用したテキストメッセージの送受信が可能なものも普及しつつあります。衛星通信の利用方法を練習しておくのも、いざという時に役に立ちそうです。

どう備えるか、おさえておきたいポイント

震災と水害。被害の特徴やリスクの違う災害ですが、備えるべき防災グッズに違いはありませんでした。一方で、避難場所やルートなど、事前に把握しておかないといけない情報は違うことがわかりました。

今回お話を伺って、指定避難所になっている場所も時としては危険なことが衝撃的でした。指定緊急避難場所と指定避難所の違いを理解し、改めて自分の住む地域の防災マップを見直す必要がありそうです。

ご自身の家族構成や地域の特性などを踏まえた上で、二重被災を経験されたみなさんの体験談を参考に、わが家に必要な備えは何かを考えるきっかけにしてみてくださいね。

<執筆者プロフィル>
那須 あさみ
フリーランスライター。幼児、小学生、中学生の4児の母。さまざまな年齢の子どもと一緒に家庭で備えられる防災を模索中。

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