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くしを落としたら蹴ってから拾う?芸妓の世界で大切にされる粋な「3つのおまじない」とは【さっぽろ芸妓日記vol.36】

  • 2026.1.6

札幌で芸妓をしております、「こと代」と申します。 「芸妓」といえば、京都のイメージが強いと思います。
しかし北海道にも開拓期から道内各地に花柳界がございました。
現在は札幌のみになってしまいましたが、「さっぽろ 名妓連」には11名の芸者衆が所属し、毎日お稽古、お座敷などで活動しております。

Sitakke

連載「さっぽろ芸妓日記」では、札幌の花柳界の歴史や 文化などをご紹介していきたいと思います。お付き合いのほど、どうぞ宜しくお願いいたします!

雪の匂いが混じるこの街のお座敷には、昔からそっと受け継がれている“お守りごと”がいくつかあります。

本日はその中から、今も私たちの間で大切にされている3つを、ご紹介させていただきます。

1. 櫛や鏡を落としてしまったら、ひと蹴りしてから拾う

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2026年に向けて、稲穂と干支の簪(かんざし)を準備しました。稲穂の簪のジンクスについての記事もぜひご覧ください!

芸者の身だしなみを支えてくれる櫛や鏡。
もし床に落としてしまったときは、そのまま拾わず、そっと蹴ってから(というより、ちょんと優しく“踏んだふりをする”、に近いですね)手に取るという習わしがあります。

これは「悪いものを一緒に拾ってしまわないように」という意味が込められています。

こちらは私が入門したばかりの頃にお母さんやお姐さんに教えていただいたもので、今では自然と身についている願掛けの作法の一つです。

一度悪い気を“はねのける”ことで、良い気だけを手元に戻せますようにと願いを込めているんです。

2. お世話になった扇子を捨てるときは、お清めのお塩と一緒に手放します

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手前が天紅(てんべに)、奥が天金(てんきん)という、お祝いの踊りなどで私たちがよく使う扇子です。お扇子ケースは、入門当初、お姐さんから贈っていただいたものです

お座敷やお稽古で使う扇子は、どんなに大切に扱っていたとしても、日常的に使う機会が多いのでどうしても痛みが早くなってしまいます。

役目を終えた扇子を手放すときは、お清めのお塩と一緒に包んで捨てるのが私たちの習わしです。

「今までありがとうございます」
そんな感謝の気持ちを込めて、送り出しています。
お道具を優しく扱い、敬意を払う。とても素敵で大切な習慣だなと感じております。

3. ご祝儀舞を踊る前には、お塩で自分自身も清めさせていただきます

“お清め”つづきで、最近、置屋のお母さんに教えていただいた願掛けをひとつ。

私たちがお祝いの席で踊らせていただくご祝儀舞。大切なお役目をいただいた踊りの前には、お塩で自分自身を清めるという作法があるそうです。

胸元に忍ばせておいたお塩を、まずは肩や腕にぱらりと振りかけて、外側からのお清めを。
そして少量を自分でそっと舐めることで、内側からも清めさせていただきます。

「どうか無事に踊り切れますように」
「皆様にも福が訪れますように」

そんな思いを込めて、本番に挑むのだそうです。

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雪深い北の街・札幌で、芸とともに生きる私たちが大切にしている小さなおまじない。
これらは決して大げさなものではなく、悪いものを払って、良いものだけを拾い、無事に芸を尽くせますようにと願うための作法です。

それは迷信というより、やさしくて粋な“願掛け文化”そのものなのだと思っております。
見えない祈りが、今日もこの街のお座敷の芸を守ってくれています。

またお座敷でお会いできます日まで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

***

連載さっぽろ芸妓日記」

文:さっぽろ名妓連 こと代
編集:Sitakke編集部あい

<「こと代」プロフィール>
札幌生まれ、札幌育ち。2018年にお披露目して以降、現在も最北の花柳界「さっぽろ 名妓連」で芸妓として活動中。開拓期から続く北海道の花柳界文化をたくさんの方に 知っていただくべく日々奮闘中。飼い猫達と遊ぶことが日々の癒し。

※掲載の内容は記事執筆時(2025年12月)の情報に基づきます。

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