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赤血球を持たない2種類の魚とは?ただし異なる理由を持つ

  • 2026.1.5
無色透明の血をもつ魚たち / Credit:(上)Wikipedia Commons、(下)Wikipedia Commons

赤血球やヘモグロビンは酸素を体中へ運ぶために欠かせないものです。

魚も同じで、えらで取り込んだ酸素を赤血球に運ばせることで、全身の筋肉や内臓を動かしています。

ところが、こうした「当たり前」のしくみに頼っていない魚がいます。

中国科学院の研究チームは、赤血球をほとんど持たない2つの魚のグループを詳しく調べました。

その結果、見かけはよく似た「透明な血」を持ちながら、赤血球やヘモグロビンを失った理由がまったく違うことが分かりました。

この研究成果は、2025年6月18日付の『Current Biology』に掲載されています。

目次

  • 南極のコオリウオ科が赤血球を持たない理由とは?
  • シラウオ科は、なぜ温かい海でも「無色透明の血」なのか

南極のコオリウオ科が赤血球を持たない理由とは?

まずは、南極海にすむコオリウオ科(Channichthyidae)に注目しましょう。

コオリウオ科はノトテニア亜目に属する魚のグループで、「アイスフィッシュ」とも呼ばれます。

血液が赤くなく、無色透明なことで有名です。

私たちを含め、多くの脊椎動物では、「赤血球がヘモグロビンを運ぶ」「ヘモグロビンが酸素をつかまえる」「血液がその酸素を全身に届ける」という流れが、生命維持にとって欠かせないしくみになっています。

ところがコオリウオ科では、遺伝子を詳しく調べると、ヘモグロビンを作るための遺伝子が失われていることが分かっています。

その結果、赤血球もほとんど作られず、血液は赤くならないのです。

それでも彼らが生きていける理由は、南極海という特殊な環境にあります。

南極周辺の海水は水温が非常に低く、その分だけ酸素をたっぷり溶かし込むことができます。

研究チームは、コオリウオ科の魚たちはヘモグロビンに頼らなくても、血液の液体部分(血しょう)に物理的に溶けた酸素を利用できるため、赤血球をほとんど持たないままでも生きてこられたと考えています。

このようにコオリウオ科は、「極端に酸素が豊富な冷たい海」という条件に助けられながら、赤血球とヘモグロビンという基本装備を手放していたのです。

しかし、赤血球をほとんど持たない魚は、南極だけの話ではありません。

まったく違う環境に暮らしながら、同じように「透明な血」を持つ別のグループが存在します。

それが、次に紹介するシラウオ科です。

シラウオ科は、なぜ温かい海でも「無色透明の血」なのか

シラウオ科(Salangidae)の魚は、キュウリウオ目に属し、東アジアの沿岸や河川・汽水域に広く分布しています。

日本では、その代表種の一つである「シラウオ(Salangichthys microdon )」がよく知られており、透明感のある細長い体を持つ、小さな魚として親しまれています。

アジア産のシラウオ科は一見すると、とても普通の小魚に見えますが、このグループの多くの種もまた、赤血球やヘモグロビンをあまり使わないという、かなり変わった特徴を持っています。

しかも彼らが暮らしているのは、南極のような極端に冷たい海ではなく、中国や日本、韓国、ベトナムなどの温かい水域です。

研究チームがシラウオ科の11種のゲノム(全遺伝情報)を詳しく調べたところ、まず筋肉内で酸素をためる役目を持つミオグロビンの遺伝子が、完全に失われていることが分かりました。

一方で、ヘモグロビンを作るための遺伝子を調べると、コオリウオ科とは異なっていることも明らかになってきました。

遺伝子そのものはゲノム上に残っているものの、小さな欠失や読み枠のずれ、正しく働かない変異が、種ごとに別々に積み重なっていたのです。

その結果、ヘモグロビンは作られなくなり、赤血球もほとんど機能しない状態になっていました。

では、なぜシラウオ科は、赤血球やヘモグロビンをほとんど使わないままでも生きていけるのでしょうか。

ここで重要になるのが、彼らの寿命と成長のしかたです。

シラウオ科の魚は寿命が非常に短く、おおむね1年スケールのごく短い一生を送ります。

体も小さく細長いままで、成体になっても幼魚のような特徴を残す「幼形成熟」と呼ばれる状態にあります。

一部の魚では、幼魚の段階では体が小さく細長く、うろこも未発達なため、皮膚から直接酸素を取り込めることが知られています。

そのため、成長するまでは赤血球をあまり作らなくても生きていける種類もあります。

シラウオ科では、この「幼魚に近い状態」がほぼ一生続いてしまいます。

その結果、赤血球やヘモグロビンにあまり頼らない体のしくみのまま、成長と繁殖を終えることができるのです。

こうして見てみると、コオリウオ科とシラウオ科は、同じように「無色透明の血」を持ちながら、その理由はまったく異なります。

前者は極端に酸素が豊富な寒冷環境への適応として赤血球を捨てており、後者は短い寿命と幼魚的な体のまま生きる生活史の結果として、赤血球にほとんど頼らない道を選んでいるのです。

参考文献

Two white-blooded fish, two paths: Icefish and noodlefish independently lose red blood cell function
https://phys.org/news/2026-01-white-blooded-fish-paths-icefish.html

元論文

Independent evolutionary deterioration of the oxygen-transport system in Asian noodlefishes and Antarctic icefishes
https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.05.050

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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