「コピー機すら使えないのか」新人を見下すベテラン。だが、新人が提案した業務改善案を見て絶句【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

私の部署には、勤続30年のベテラン男性社員がいます。

彼は「仕事は足と手を使って稼ぐもの」という古い考えの持ち主で、デジタルツールを毛嫌いしていました。

ある日、複合機の前で、配属されたばかりの新人くんが操作パネルをじっと見つめ、考え込んでいました。

それを見たベテラン社員は、鬼の首を取ったように近づき、大きな声で言いました。

「おいおい、最近の若いのはスマホは使えるくせに、コピー機の使い方も知らないのか？ただ部数を入れてスタートボタンを押すだけだろ。こんな簡単なことも教わらないとできないのか？」

新人くんが

「いえ、使い方がわからないわけではなくて……」

と言いかけますが、ベテラン社員は遮ります。

「言い訳はいらない！俺が若手の頃は、先輩のために資料を綺麗に揃えるのが仕事だったんだ。ほら、貸してみろ！」

彼は新人くんを押しのけ、得意げに大量の紙を印刷し始めました。新人くんは何か言いたげでしたが、その場は黙って引き下がりました。

数日後の部署会議でのことです。

「業務効率化」の議題になった時、新人くんが手を挙げ、一つの資料をプロジェクターに映し出しました。

それは『会議資料の完全ペーパーレス化と、クラウド共有によるコスト削減案』でした。

「先日、複合機の設定を確認していたのですが、当社の機種には高性能なスキャン機能と自動振り分け機能がついています。これを使えば、紙で配布している資料をすべてタブレット端末に即時共有できます。試算したところ、これで年間〇〇万円の用紙代と、印刷にかかる人件費を削減できます」

そう、あの日新人くんはコピーの仕方がわからなかったのではなく、複合機の隠れた機能を調べて、無駄な印刷作業をなくそうとしていたのです。

「コピー機すら使えない」と馬鹿にしていたベテラン社員は、口をあんぐりと開けて固まっていました。

「……というわけで、今後は『コピーを取る』という作業自体が不要になります」

新人くんが淡々と締めくくると、ベテラン社員は顔を真っ赤にして俯きました。
その後、コピー取りの仕事を奪われた彼は、苦手なタブレット操作を一から覚える羽目になり、今では逆に新人くんに操作方法を教わる立場になっています。

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