1. トップ
  2. 「通帳から毎年50万が…」親の築40年マンションを“とりあえず”相続した兄妹の末路【不動産のプロは見た】

「通帳から毎年50万が…」親の築40年マンションを“とりあえず”相続した兄妹の末路【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.15
undefined
出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

相続の現場でよく耳にするのが、「親の家を引き継いだけれど、自分たちは住む予定がない」という声です。特にマンションの場合、「とりあえず持っておけばいい」「売るかどうかは後で考えよう」と判断されることが少なくありません。

しかし、その“後回し”が、想像以上の負担につながるケースがあります。住んでいなくても、不動産は所有しているだけでお金を消費し続ける存在だからです。

今日は、住む予定のないマンションを兄妹で共有名義のまま相続した結果、毎年50万円もの赤字を抱え続けることになった実際のエピソードをご紹介します。

「とりあえず共有名義」で始まった相続

相談に来られたのは、50代の兄・Aさんと、40代の妹・Bさんでした。ご両親が亡くなり、相続の話し合いの中で、郊外にある築40年の分譲マンションを引き継ぐことになります。

このマンションは実家とは別に所有していた物件で、兄妹ともに住む予定はありませんでした。とはいえ、すぐに売るかどうかを決めきれず、二人は「ひとまず兄妹で共有名義にしておこう」と話し合い、深く検討しないまま相続を終えています。

当時の判断を、Aさんはこう振り返ります。

「築年数は経っていますが立地も悪くないですし、売ろうと思えばそれなりの金額にはなると思っていました」

当時は、共有名義にした判断を深刻に捉えてはいませんでした。住む予定がない以上、ひとまず兄妹で持っておけばいい。そう考えるのは、ごく自然な流れだったのです。

空室でも確実に減っていくお金

最終的に、兄妹はマンションを売却する方向で動き始めました。ところが、実際に市場に出してみると、想像していたほど反応はありません。築40年という年数が壁になり、内見の問い合わせはほとんど入らない状態が続きました。

一方で、部屋が空いていても支出だけは確実に発生します。具体的には、次の費用が毎年かかっていました。

  • 管理費(共用部分の清掃や管理人費用)
  • 修繕積立金(将来の大規模修繕に備えて積み立てる費用)
  • 固定資産税(不動産の価値に応じて市区町村に毎年支払う税金)

これらを合計すると、年間でおよそ50万円。誰も使っていない部屋のために、毎年まとまったお金が出ていく状況でした。Aさんは当時を振り返り、こう話しています。

「住んでいないのに、通帳の残高だけが少しずつ減っていく。あれは、想像以上に精神的にきつかったですね」

賃貸もできず、兄妹関係にひびが入る

売却が思うように進まない中で、兄妹は賃貸として貸し出す選択肢も検討しました。しかし、設備の古さや立地条件を冷静に整理すると、リフォーム費用をかけても回収できる見込みは立ちません。

「貸すのも難しい」

そう判断した時点で、次に問題になったのがお金の負担をどうするかでした。考え方は、次第に分かれていきます。

  • 兄:「赤字が続くなら、安くても早く売りたい」
  • 妹:「そこまで下げて売るのは納得できない」

最初は意見の違いだったものが、話し合いを重ねるうちに感情の衝突へと変わっていきました。

「誰も使っていない家のために、どうしてこんな話をし続けなければならないのか」

そんな不満が積み重なり、兄妹の間には少しずつ距離が生まれていきます。このマンションは、いつの間にかお金だけでなく、関係まで削る存在になっていました。

“資産”だと思っていた不動産の正体

時間が経つにつれて、状況は少しずつ悪くなっていきました。築年数が1年、また1年と進むたびに、売却の条件は確実に厳しくなっていきます。

価格を下げても反応はなく、選べる手段は減っていく一方でした。やがて、このマンションは次の3つの状態に当てはまるようになります。

  • 売ろうとしても買い手がつかない
  • 貸そうにも現実的な見込みが立たない
  • 結局、持ち続けるしかない

現在も物件は空室のままです。兄妹のやり取りは必要最低限になり、このマンションの話題自体が、できるだけ触れたくないものになっていきました。かつては資産になると思っていたこの不動産は、気づけば家計に重くのしかかる存在になっていました。

判断を先送りにしたことが、いちばんの誤算だった

今回のケースで大きかったのは、相続した時点で「どう手放すか」を決めていなかったことです。住まない不動産は、持っているだけで毎年コストがかかります。特に共有名義の場合、時間が経つほど判断は難しくなるでしょう。

もちろん、郊外マンションの相続が必ず負担になるわけではありません。立地や管理状態、賃貸需要によっては、プラスに働くケースもあります。

ただ、「貸せない」「赤字が続く」という状況なら、不動産会社の買取を早めに検討するのも現実的な選択です。価格よりも、維持費や悩みから早く抜け出すことを優先した方がいい場面もあります。

大切なのは、「とりあえず持っておく」を続けないこと。何もしない時間が、あとから最も大きな負担になって返ってくるのです。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】