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離れた場所でも飛び火に注意!冬の大規模火災の原因と防災のポイント

  • 2025.12.15

冬は空気の乾燥や強風、暖房器具の使用などにより、大規模火災が発生しやすい季節です。
2025年11月に発生した大分県佐賀関の大規模火災では、170棟以上が焼失し、火の粉が1.4km離れた無人島まで飛び火するという事例も報告されました。
風下にある場所は、たとえ遠く離れていても飛び火のリスクがあるため、油断は禁物です。

この記事では、冬の大規模火災の原因と防災のポイントを詳しく解説します。

冬は大規模火災が起こりやすい季節

冬は空気の乾燥や強風、暖房器具の使用が重なり、大規模火災が起こりやすい季節です。まずは、冬に大規模火災が起こりやすい理由について知っておきましょう。

空気の乾燥

冬に空気が乾燥しやすい理由として以下が挙げられます。

・冬に日本を覆う高気圧(シベリア高気圧)が乾燥しているため
・気温が低く空気中に含むことのできる水蒸気量が少ないため

まず、冬に日本を覆うシベリア高気圧は中国大陸で生まれ寒冷・乾燥した性質を持ちます。シベリア高気圧が日本海を通過する際に多少水分を含むものの、日本海側で雪を降らせて水分を失うため、再び乾燥した空気に戻ります。

また、空気に含むことができる水蒸気量は気温が低いほど少ない特徴があります。例えば、気温20℃の場合だと1㎥あたり17.3gの水蒸気を含むことができますが、気温10℃だと9.4g、気温0℃だと4.8gしか含むことができません。

このため、気温が低い冬は空気中に多くの水蒸気を含むことができず、他の季節に比べて空気が乾燥しやすい特徴があります。

また、空気が乾燥した状態が続くことにより、建物や家具、落ち葉などに含まれる水分が少なくなるため、火がつきやすくなります。

強風

冬は強い季節風が吹きやすく、火災が発生すると火の粉が風に乗って広範囲に飛び火しやすくなります。

特に木造住宅が密集している地域では、強風により火が隣の建物や山林に瞬く間に延焼する危険性があります。また、風が強い日は、消火活動も困難になり、被害が拡大しやすくなります。

暖房器具の使用

冬は暖房器具の使用が増えるため、火災のリスクも高まります。
電気ストーブや石油ストーブ、こたつなどの暖房器具は、取り扱いを誤ると内部の異常発熱や可燃物との接触により火災につながることがあります。

電気ストーブの周囲に布団やカーテンを置いたまま使用したり、長時間連続で使用したりすると、過熱や発火の危険性が高まります。また、石油ストーブでは給油口のふたの閉め忘れや清掃不足により灯油が漏れ、引火するケースも報告されています。

就寝中に暖房器具をつけたままにすると、発見が遅れて大きな被害につながることもあります。

冬の火災で気をつけるべきポイント

冬の火災で気をつけるべきポイントは、短時間で被害が拡大しやすいことと、飛び火のリスクが高いことです。
それぞれのポイントを解説します。

短時間で大規模火災につながりやすい

冬は空気の乾燥・強風・暖房器具の使用により、火災が発生すると短時間で大規模に広がる危険性があります。

特に、住宅密集地や空き家が多い地域では、小さな火でも瞬く間に延焼し、避難が間に合わないケースも少なくありません。また、夜間や就寝中は火災に気づくのが遅れやすく、被害が拡大しやすくなります。
火のそばを離れるときは必ず消し、暖房器具の周囲に可燃物を置かないことが重要です。

飛び火のリスク

冬の火災で注意すべきポイントは飛び火による二次災害です。

2025年11月に発生した大分県佐賀関の大規模火災では、火の粉が1.4km離れた無人島(蔦島)まで飛び火するなど、延焼が予想されないような離れた場所に新たな火災を発生させることがあります。

一般的な火の粉の飛距離は50mから200mほどですが、2km以上の遠くまで及ぶケースもあります。
なお、飛び火の飛距離は風速が大きいほど長くなります。

強風注意報が発表されるような状況下においては遠くまで飛び火するリスクが高まります。

例えば、愛媛県松山市では強風注意報の基準が風速12m/s(海上では15m/s以上)となっています。つまり、強風注意報が発表されている際に火災が発生した場合、1km以上飛び火する可能性が生じます。

このため、特に火災の風下にあたる地域では飛び火による二次被害にも注意しなければなりません。

中見出し:飛び火によって火災が拡大した事例

飛び火によって火災が拡大するケースは珍しくありません。
以下に、飛び火が新たな火災をもたらした過去の事例を表にまとめました。

冬の火災に備えるポイント

冬の火災に備えるためにも以下を心がけることが大切です。

・寝たばこをしない
・ストーブやヒーターの周りに洗濯物やカーテンなどの可燃物を置かない。
・石油ストーブの給油は必ず火を消してから行う。
・外出や就寝時は暖房器具の電源をオフにする。
・電気配線やコンセント周りのホコリをこまめに掃除し、タコ足配線や古いコードは避ける。
・コンロの使用中は火のそばを離れない。
・住宅用火災警報器を設置し、定期的に点検する。
・家庭用消火器を備え、使い方を確認しておく。
・防炎品(防炎カーテン・寝具など)の使用を心がける。

また、乾燥注意報や強風注意報が発表された日は火災や飛び火のリスクが高まります。

特に風下側の地域では、離れた場所でも飛び火に注意するとともに、可燃物の整理整頓や早期避難の心構えをすることが大切です。

<執筆者プロフィル>
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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