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筋肉がネオンブルーになった「青色イノシシ」を発見、原因は?

  • 2025.12.2
Credit: canva

解体してみたら、筋肉がブルーベリーのように真っ青だった…。

アメリカ・カリフォルニア州モントレー郡で、内部の肉や脂肪が「ネオンブルー」に変色した野生のイノシシが見つかり、地元当局が「絶対に食べないで」と緊急警告を出す事態になっています。

その裏に隠されていたのは、人間による「毒」の食物連鎖でした。

いったいイノシシの体内で何が起きていたのでしょうか。

目次

  • 解体してわかった「中身が真っ青」の異常事態
  • 静かに広がる二次中毒のリスク

解体してわかった「中身が真っ青」の異常事態

これまで数百頭のイノシシの解体をおこなってきた専門家は、今回の発見に驚きを隠せませんでした。

「ものの例えではなく、本当にネオンのように青い、ブルーベリーみたいな青さなんです」と話します。

異常を感じた専門家はすぐに州当局へ報告し、カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)が調査に乗り出しました。

【青いイノシシの画像一覧がこちら

その結果、青色の原因として浮上したのが、農地などで使われる殺鼠剤(さっそざい、ネズミやリスの駆除用の毒)に含まれる「ジファシノン(diphacinone)」でした。

この化合物を含む毒餌は、製品として識別しやすいように青く着色されていることが多く、小動物の体内に入ったあと、それを食べた大型動物の体内にまで色素が移行してしまう場合があります。

恐ろしいのは、体の中に毒が残っていたにもかかわらず、イノシシ自身は普通に動き回っており、外見からはほとんど異常が分からなかったことです。

解体して初めて、「中身がネオンブルー」という異常が露呈しました。

CDFWによると、このような殺鼠剤が体内に取り込まれると、脂肪を中心に肉が青く染まるケースがあるといいます。

過去の研究では、検査した野生イノシシのおよそ8.3%から、何らかの殺鼠剤の残留が見つかったとの報告もあり、こうした「汚染された野生肉」は決して完全なレアケースとは言えません。

このため、州当局は狩猟者や地元住民に対して、

・青く変色した肉や脂肪を見つけたら、絶対に食べないこと

・その場で廃棄するのではなく、当局に連絡し報告すること

を強く呼びかけています。

静かに広がる二次中毒のリスク

イノシシの筋肉をネオンブルーに変えた「ジファシノン」とはどのような毒なのでしょうか。

ジファシノンは「抗凝固性殺鼠剤」に分類される化合物です。

その仕組みは、血液を固めるために必要なビタミンKの再利用を担う酵素に結合し、その働きを邪魔するというもの。

ビタミンKが足りなくなると、肝臓は血液凝固に必要な因子を十分に作れなくなり、身体のあちこちで止血ができなくなります。

その結果、動物は見た目には分かりにくいものの、体の内部でじわじわと出血を起こし、重篤な内出血に至ることがあります。

こうした殺鼠剤が問題なのは、標的ではない動物にも被害が広がることです。

・農地などで毒餌をまく

・それをネズミやリスが食べる

・その小動物を、イノシシ・シカ・キツネ・猛禽類などが捕食する

という経路で、毒が食物連鎖をかけめぐり、「二次中毒」として大型の野生動物や、場合によっては人間にも影響します。

実際に、ジファシノンを含む殺鼠剤は、ワシやタカなどの猛禽類、ピューマ、ボブキャット、キツネ、さらに絶滅が危惧されている北方ミミズクやサンホアキンキタキツネなど、多くの捕食動物から検出されたことが報告されています。

ジファシノンは、死んだ動物の組織内ではしばらく活性を保ち、火を通して調理しても完全には分解されないことが問題です。

つまり、「加熱すれば大丈夫」という安心は通用しないのです。

こうした事情を受けて、カリフォルニア州では2024年にジファシノンの使用が大幅に制限されました。

それでもなお、一部の農地では例外的に利用が続いており、今回の「青色イノシシ」のようなケースが発生するおそれがあります。

さらに幅広く見れば、農薬や殺虫剤は人間の健康にも影響を与えます。

多くの研究から、農薬は精子数の減少、糖尿病、がん、アルツハイマー病など様々な健康問題との関連が指摘されています。

そのため、代替策として提案されているのが、「統合的害虫管理(IPM)」という考え方です。

これは、

・自然の捕食者を活用する

・フェンスや罠、通気口などの物理的なバリアを設置する

・光や音(ラジオ音声など)で動物を近づけない

といった複数の方法を組み合わせ、化学的な毒に頼り切らない形で被害を減らしていこうとするアプローチです。

今回のネオンブルーに染まったイノシシの肉は、人間がまいてきた毒が野生動物の体内にたまって起こった問題でもあったのです。

参考文献

Wild Pigs Turned ‘Neon Blue’ in California, Triggering Warnings
https://www.sciencealert.com/wild-pigs-turned-neon-blue-in-california-triggering-warnings

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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