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相続した実家が「全く売れない…」3社に断られた“死に地”。50代女性を救った「たった1つの選択」【不動産のプロは見た】

  • 2025.12.16
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

土地をお持ちの方の中には、「形が悪いから売れないかもしれない」「何社に聞いても、値下げしないと売るのが厳しいと言われる」という不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。

実際に、変形している土地や接している道路が細い土地となると、不動産会社から「正直、売るのは厳しいですね」「売れるまで時間が相当かかると思います」と言われてしまうケースは決して珍しくありません。

ところが実は、「売れないはずだった土地」が、想定外の条件で売れていく瞬間が不動産業の現場では確かに存在します。

そこで今日は、売主様が半ば諦めかけていた“ある旗竿地”が、たった一つの視点の変化で一変した実際のエピソードをご紹介します。

相続したのは「売れない」と言われ続けた旗竿地

今から5年ほど前のことです。私がまだ会社員として不動産売買の仕事をしていた際、50代前半の女性、Aさんからこんな相談を受けました。

「相続で土地をもらったんですが…正直、売れませんよね?」

Aさんが相続されたのは、いわゆる“旗竿地(はたざおち)”と呼ばれる土地でした。旗竿地とは、道路に接する間口が細く、奥まったところに敷地が広がる形の土地のこと。

接道(道路に接している部分)は約2メートル。再建築は可能でしたが、見た目の印象は正直よくありません。

「車も停めにくそうだし、住みにくそうですよね…」と、Aさん自身もかなり不安そうでした。

実はAさん、この土地についてすでに不動産会社3社に査定を依頼していました。しかし、どの会社からも返ってきた言葉は、ほぼ同じだったそうです。

「正直、売るのはかなり厳しいですね」「この形だと、相当値下げしないと売れないと思います」

その言葉を聞き続けるうちに、Aさんの気持ちはすっかり沈み込んでしまいました。

「もう…とにかく売れればいいです」

売れない3ヶ月。失われていく自信

そう言ってスタートした販売活動でしたが、現実は想像以上に厳しいものでした。内見(実際に現地を見ること)が入ることはほとんどなく、たまに問い合わせがあっても「形がちょっと…」と、その場で辞退されるばかり。

気づけば、3ヶ月が経過しても何ひとつ進展がありません。

そんなある日、Aさんから一本の電話が入りました。

「この土地って…やっぱり、価値がないんでしょうか」

その言葉を聞いたとき、私はどうしてもAさんのために、この土地を売りきりたいと思いました。そして、なぜ売れないのかを改めて考え直す中で、あることに気がついたのです。

「問題は土地そのものではなく、売り方にあるのかもしれない」

「売り方」を変えた2週間後に空気が一変

そこで私は、知り合いの建築会社と連携し、この土地専用のコンパクト住宅プランを作成することにしました。主に以下の3つを一つひとつ見直し、イラスト付きで「見える化」した販売資料へと切り替えたのです。

  • 駐車の動線
  • 玄関の位置
  • 家の中での生活動線

さらに、これまで「不便」と思われがちだった細いアプローチ(通路部分)も、視点を変えて伝えることにしました。

「道路から生活空間が見えにくい=プライバシー性が高い住まいになる」

このコンセプトに切り替えて再販売したところ、わずか2週間後、30代の子育て世帯のご夫婦が内見に。室内のプランとイラスト資料に目を通した奥様が、こんな言葉を口にされました。

「道路から家の中が見えないのが、逆に安心ですね」「土地は狭いですけど、間取りの工夫で十分暮らせそう」

その言葉を聞いた瞬間、それまで動かなかった時間が、ようやく前に進み出したように感じました。

結果的に、当初、何度も「値下げしないと無理」と言われ続けたこの土地は大きな値下げをすることなく、売主様の希望条件どおりの時期で無事に契約成立となったのです。

土地の価値を左右する「見せ方」

今回のケースを通して、私自身があらためて強く感じたのは、「土地の価値は、形ではなく“使い方のイメージ”で決まる」ということでした。

旗竿地、変形地、狭小地は確かに一般的に見ればクセはあります。けれど、それだけで「売れない土地」になるとは限りません。

ただ、そのまま並べて売るだけでは、本当の魅力が伝わらないことが多いのも事実です。

もし今、「この土地は条件が悪いから仕方がない」「どうせ安くしか売れない」と思い込んでいる方がいらっしゃったら、ほんの少しだけ立ち止まってみてください。

土地は、条件そのものよりも、“どう見せるか”で評価が大きく変わることがあります。

そしてその選択ひとつで、売主様の気持ちも、結果も、思いがけず大きく動き出すことがあるのです。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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