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「給料は増えても手取りが減る…」一体ナゼ?→お金のプロが明かす、給与明細に隠された「自動徴収」のカラクリとは

  • 2025.12.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

最近、給料は変わらないのに手取りが減っていると感じていませんか?

「物価が上がったからかな」と思うかもしれませんが、それだけでは説明できない現象が起きています。

実は、「税金が上がったわけではないのに負担が増える仕組み」が静かに家計を圧迫しているのです。

この記事では、その正体と具体的な対策について、マネーシップス代表の石坂貴史さんに詳しく伺いました。自分の収入を守るための第一歩を一緒に踏み出しましょう。

「給料が増えても手取りが減る」現象の正体とは

---会社員の手取りが年々減少する現象の背景には、社会保険料や税制のどのような仕組みの変化が影響しているのでしょうか?

石坂貴史さん:

「会社員の手取りが静かに減っている最大の要因は、「税金が上がった」というより、「自動的に増える仕組み」が組み込まれている点にあります。その代表例が社会保険料です。

健康保険料や年金保険料は、法律上「給料に比例して負担が増える」設計になります。昇給や残業増で名目収入が少し上がると、その分だけ保険料も機械的に引き上げられます。一方で、物価上昇ほど給料が増えていないため、生活の実感としては「増税された」と感じやすくなります。

近年は、微減の年があるものの、保険料率そのものも段階的に上がってきました。高齢者医療や年金を支えるため、現役世代の負担割合が少しずつ増やされているためです。この増加は毎年ニュースになるほど大きくはありませんが、数年単位で見ると確実に効いてくるでしょう。

税金では、「控除」と呼ばれる差し引き分が実質的に小さくなっています。代表的なのが給与所得控除です。これは、会社員にとっての仕事上の経費をまとめて見込んだもので、昔は今より多めに引けました。しかし制度改正により、この控除には上限が設けられて、引ける金額が抑えられています。

その結果、給料の額が同じでも、税金を計算する対象となる金額が増えました。税率自体が変わっていなくても、「税金をかけられる土台」が大きくなれば、支払う税金は増えます。これが、増税された実感がないまま手取りが減る理由です。

つまり、新しい税金が突然増えるのではなく、「給料連動で負担が増える仕組み」と「控除の価値低下」が同時進行している状態です。気づきにくいからこそ、長期で見ると家計への影響が大きくなります。」

対策のポイントは“課税される金額を減らす”こと

---手取り減少の原因がわかりましたが、具体的にはどのように対抗すれば良いのでしょうか?効果的な節税方法を教えてください。

石坂貴史さん:

「増税に対抗するには、「税率を下げる」発想ではなく、「課税される金額を減らす」視点が大切です。その代表がiDeCoです。

iDeCoの最大の強みは、積み立てた金額がそのまま所得から差し引かれる点です。たとえば、年収500万円の会社員が年間24万円積み立てると、その24万円分は最初から税金計算の対象外になります。これは即効性のある仕組みです。

その一方で、注意点もあります。iDeCoは、原則60歳まで引き出せません。老後資金としては優秀ですが、生活防衛資金が不足している人が無理に使うと、家計が不安定になります。節税額だけを見て判断するのは危険です。

次に見落とされやすいのが、生命保険料控除や医療費控除です。特に医療費控除は「10万円を超えないと意味がない」と誤解されがちですが、家族分を合算できるため、実際には対象になる家庭も多くあります。しかし、控除を目的に不要な保険や、過剰な医療支出を増やすのは本末転倒です。

節税で一番避けたいのは、「得するためにお金を使う」状態です。FPの立場としては、節税は結果としてついてくるものであり、支出の合理性が先にあるべきだと考えます。「使う予定のあるお金を、税制上有利な形に置き換える」この順番を間違えないことが大事です。」

まずは給与明細の中身を知ることから!手取り減少に気づく第一歩

---手取りを少しでも増やすために、会社員が今すぐ始められる最も効果的な「最初の一歩」を具体的に教えていただけますでしょうか。

石坂貴史さん:

「最も効果的で、かつ今日からできる一歩は、『自分の給料から、何が引かれているかを把握すること』です。

具体的には、給与明細を一枚、まずは落ち着いて確認しましょう。手取り額だけを見るのではなく、健康保険料、年金、雇用保険、所得税、住民税をそれぞれ分けて見ます。

多くの方は、手取りが減っている理由を『なんとなく物価のせい』と捉えてしまうかもしれません。しかし、実際には、固定費として毎月引かれている社会保険料が大きく影響しています。ここを把握しないまま、仮に節税のために投資商品を探しても、的外れになりやすいです。

次の一歩として、年単位で金額をチェックしてください。多くの人は、手取りが減ると『毎月少しずつ減っている』という感覚で止まります。社会保険料が月2万円増えたとしても、『2万円くらいなら仕方ない』と受け止める傾向があります。ここで話している『次の一歩』は、この感覚を数字で捉え直すことです。

月2万円という負担を、年単位に直します。2万円が12か月続くと、年間では24万円です。つまり、自分では気づかないうちに、1年で24万円分の自由に使えるお金が減っている、という事実が見えてくるでしょう。この瞬間に、『これは無視できる額なのか』『他の支出と比べてどうなのか』という判断ができるようになります。

この年額を知ると、対策の考え方が変わります。たとえば、月3千円の節約や小さな節税よりも、社会保険料や住民税など、金額の大きい項目を優先して対策すべきだと分かります。『どこを頑張るのか』を感覚ではなく、金額の大きさで決められるようになるのです。

『節税を考える前に、どの負担が一番重いのか』を知ることが、最短ルートです。そのうえで『余裕資金があるなら、iDeCoなどを検討する』『余裕がなければ、まず支出の固定化を防ぐ』この順番が大切です。手取りを増やす第一歩は、現状を正確に知ることです。FPとしては、この第一歩を飛ばして、あれこれ対策を試みるケースは、長続きしないと考えています。」

「自分の給料から何が引かれているか」を理解し、現状把握から賢く対策を始めよう

給料がなかなか増えないのに手取りが減る――そんな悩みの裏には、気づきにくい負担増の仕組みがあります。社会保険料の自動増加や控除額の縮小が長期的に家計に影響を及ぼしていることを理解することが大切です。

そして、節税は単に税率を下げるのではなく、課税対象となる金額を減らす視点で行うべきです。たとえばiDeCoを活用するなど、計画的に資金を活用する方法が効果的ですが、無理のない範囲で始めることが肝心です。

まずは自分の給与明細をじっくりと見て、どの項目がいくら引かれているのかを把握すること。年単位の金額で負担を把握すれば、節約や節税の優先順位も見えてきます。現実を知ることが、家計改善への最短ルートなのです。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。