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「あんた、その金どこにあったの?」玄関先で母親がブチギレ。宅配員も凍りついた“代引きトラブル”の現場

  • 2026.1.12
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さんこんにちは。元宅配員のmiakoです。

コレクト便という荷物を届けに行ったとき、玄関先という限られた空間で私的なやり取りが一気に表に出てきた瞬間、場の空気がピシ…と凍ったように感じたことがありました。

宅配便が扱う荷物には、差出人が送料を支払う「発払い」のほかに、受取人が送料を支払う「着払い」、そして商品代金と引き換えに受け取る「コレクト便(代金引換)」があります。
着払いやコレクト便は、お金と引き換えでなければ、荷物をお渡しすることができません。

今回は、コレクト便のお届けをきっかけに、配達中に思わぬ家族間トラブルに居合わせたときの話です。

違和感の始まり

着払いの荷物は、事前連絡を入れるルールが特にないので、備考欄などに記されたお客様からの指示がない限りそのままお届けに向かいます。

しかし、コレクト便の場合はだいたいどこの運送会社であってもお届け前に事前連絡を入れるルールがあります。伝票に記載された電話番号に連絡し、在宅状況や代金の準備などを確認するためです。

ある日、コレクト便のお届けのため、伝票に書かれた番号へ電話をかけました。出たのは若い女性の声でした。「このあとお伺いいたしますが、ご都合はいかがでしょうか」と尋ねると、「家族がいますので、代金は家族から受け取ってください」との指示をいただき、そのまま伝票の住所へ向かうことにしたのです。

しかし、実際に伺うと状況は少し違っていました。

話が伝わっていなかった玄関先

チャイムを押して出てきたのは40代前後の女性でした。代金引換の荷物だと伝えた瞬間、「え?聞いてないけど?」と表情を固まらせます。金額を伝えると、「え?この金額を払うの?今から?」と戸惑った様子でした。どうやら電話の女性の話が伝わっていなかったようなのです。

「ねえ、コレクトの荷物が来てるんだけど。誰かお金預かってる?」
そう言って家の中へ声をかけますが、「知らない」といった返事が返ってきたのが聞こえました。

そのやり取りを目の前で見ながら、空気が少しずつ重くなっていくのをひしひしと感じました。

私は思わず「まだ保管期間はありますので、改めてご本人様から再配達のご連絡をいただければ大丈夫ですよ」と、まだ返品するまでの猶予があることをお伝えしましたが、「また来てもらうのも悪いから、今回は私が払うわ」と言って立て替えていただきました。

しかし、お客様の顔色は優れません。

この後、本人とご家族の間で何事もなければと願いつつ、一応無事届け終わったのでその家を後にしました。

繰り返されるコレクト便

しばらくして、再びあの若い女性のコレクト便が届きました。今度はふたつです。

お電話をして、コレクト便ふたつ分の代金を伝えると「あの…今日は持ち合わせが少ないのでひとつだけ届けてもらってもいいですか?もうひとつはまた後日で…」と相談されました。

宅配便は、荷物が到着してから約7日間の保管期間があります。そのため、このような相談は問題ありません。

そして、その日は指定されたコレクト便の荷物ひとつだけをお届けに行きました。

それからというもの、そのお客様名義のコレクト便が頻繁に届くようになりました。毎日ではありませんが、週に2回から3回ほどの頻度です。

お届け前に電話で確認すると、「今日は無理です」「この荷物は受け取りますが、もうひとつはまた今度で」と言われることもありました。そのうち、「今日で保管期限が切れてしまう荷物ですが、やっぱり今日は受け取れないので返品してください。」と言われるようになりました。

受け取られない荷物は保管期間いっぱいまで待ち、それでも受け取りがなければ返品手続きに移ります。コレクトという仕組み上、長く保管ができないのです。

そしてそのお客様の名前で届くコレクト便は、次第に数も頻度も増え、さらには荷物ひとつの金額まで増えていく様子が伝票から分かるようになりました。

配達のたびに確認の電話を入れ、受け取るかどうかを聞き、受け取れる日もあれば保管の指示や返品の指示があったり。そのやり取りが続く中で、このお客様のコレクト便は、名前を見ただけで困惑する荷物になっていきました。

そしてある日、受け取りの最中に、家の中から様子を見ていたご家族が玄関先に出てきたのです。

場が騒然とした瞬間

その日も、いつもと同じようにコレクト便をお渡ししていました。代金を受け取り、荷物を手渡そうとした、そのときです。

玄関先に、ご家族の方が出てきました。
「またなんか買ったの?」

強い口調で、そう声をかけます。

その瞬間、その場の空気がピシ…と凍りついたようなものに変わりました。

受け取っていた本人は「いいじゃん」と返しましたが、すぐに言い返され、次第に二人のやり取りは荒いものになっていきました。

「あんた、そんなお金どこにあったの?」
「勝手に頼まないでって何回言えば分かるの?」

玄関先で交わされる言葉の一つひとつが重く、私にまで伝わります。

その場の空気が緊迫感のあるものに変わっていました。私は荷物を手にしたまま、声を挟むこともできず、ただただ立っているしかありませんでした。

心の中はヒヤヒヤです。

家族のやり取りに、部外者である宅配員の私が立ち会っている。その状況自体に落ち着くことができず、荷物を受け取っていただくと、逃げるようにそそくさとその家を後にしました。

その日はなんとか荷物を受け取っていただきましたが、玄関先での冷えた空気の名残は、しばらく私にまとわりついてなかなか消えませんでした。

家族が止める決断をした日

その後も、あの家にはコレクト便が届き続けました。受け取る日もあれば、保管期間いっぱいまで待った末に返品になる荷物もあります。配達のたびに確認の電話を入れ、受け取るかどうかを聞く。そのやり取りが繰り返されていました。

そんなある日、コレクト便ではない荷物をお届けに伺ったときのことです。荷物を受け取ったご家族の方から、突然こう声をかけられました。
「うちの子のコレクトの荷物、今日はない?」

突然のことで、一瞬答えに迷いました。たとえ家族であっても、詳しいことをお伝えできないこともあります。

すると、そのご家族は続けてこう話されました。

「何度も言ってるんですけど、払えないのに勝手に注文してしまってて。本人がお金がなくて返品にすることも増えてて、こちらも注意はしてるし本当に困っているんです」

そう話され、その様子から本当にお困りであることが伝わってきました。

「もう頼まないように制限もかけますし、このままだと信用問題にもなりかねないので、今後この子宛てのコレクト便はすべて返品してください」

その口調からは、我慢の限界であることが伝わってきました。

原則としてご本人様以外による受け取り拒否は難しいとされています。しかし、その時はご家族が本当にお困りの様子で、またご本人が未成年であったことなど、様々な事情が重なりました。最終的に営業所に持ち帰り相談した結果、今回はあくまで『特例』として、ご家族の意向に沿うという判断が下されました。全てのケースで同じ対応ができるわけではないことを、申し添えておきます。

しかし、今回はその場で支払うお金が絡むコレクト便です。しかも受取人が未成年であったり、支払い能力がないと判断された場合、保護者の意思は有効になります。そのため、その後はご家族の方針に沿って対応することになりました。

玄関先で起きた口論は、一時的な感情のぶつかり合いではありませんでした。

繰り返されてきたコレクト便の受け取りと返品、その積み重ねの先に、親が止める決断をせざるを得ない状況があったのです。

なぜここまでこじれるのか

コレクト便は、商品代金と引き換えに荷物を受け取る仕組みです。受取人がその場で現金を支払わなければ、荷物を渡すことはできません。そのため、事前に在宅状況や支払いの準備を確認する必要があります。また、同居家族に支払いを頼むことは現場ではよくあることです。しかし、それが立て替えをしてもらう家族の了承なく、勝手に注文したとあっては、家族間のトラブルになるのは当然のことです。

この家では、受け取る荷物と受け取らない荷物が混在していました。受け取れない場合は保管期間いっぱいまで預かり、それでも受け取られなければ返品になります。注文自体は簡単にできても、支払いができなければ、荷物は返品するしかありません。

しかし、コレクト便の場合、返品になっても終わりではありません。

荷物が返品になるというのは、送り主の店側からすると、実は損失が発生します。

宅配便という形で荷物を発送している裏では、ただ「商品代金を回収できなかっただけ」で商品が返ってくるわけではありません。

店舗側の損失は商品代金だけに留まりません。契約にもよりますが、『発送時の送料』に加え、返品にかかる『返送料』、さらには『代引き手数料』までもが店舗側の負担となるケースが多く、受け取り拒否は深刻な損害に繋がる可能性があるのです。

受取人側から何度も返品が続く場合、送り主によってはお客様の元へ後から「往復の送料と代引き手数料」の請求が届いたり、その後の購入の利用制限がかかることがあります。

こうした行為が繰り返されると、店舗独自の判断や、利用しているECサイトの規約に基づき、その後の取引が制限される可能性も指摘されています。安易な注文とキャンセルは、ご自身の信用情報にも影響を与えかねない、という意識を持つことが大切です。

配達の現場では、そうした背景までを説明することはできません。ただ荷物を届け、受け取るかどうかを確認する。そのやり取りの積み重ねが、ある日突然、表立って見えてしまうことがあります。

現場で感じたこと

ネット通販はとても身近になりました。誰にでも扱うことができ、手軽で非常に便利です。

自宅にいながら、画面越しに注文した商品が、数日後には自宅に届く。数十年前には存在しなかった、とても画期的なシステムが日常になりました。

しかし、そこはバーチャルで完結するわけではありません。その裏では実際に荷物が動き、お客様のもとへと発送されます。

送り主の方が、お客様に喜んでもらえるようにと託した商品を、私たち宅配員は、送り主の「希望」とお客様の「夢」、どちらも壊さないように誠意を持ってお手元までお届けします。

その荷物が「贈り物」ではなく「注文品」であれば、どこかで金銭のやり取りが発生します。

代金引換を選んだ場合、受け取る瞬間に現実のやり取りが生まれ、それが成立しなければせっかくの荷物であってもお渡しできません。宅配員として現場に立っていると、そうした事情が積み重なった末のトラブルに出くわすことがあります。

静かだったはずの場所が、ほんの一言で騒然とする。便利な仕組みの裏側で荷物が動いている現実は、どこか現実離れのようにも感じるかもしれません。

しかしその一つひとつには、できるだけ穏やかに気持ちよく受け取っていただけるようにと願いも添えられています。

そんな願いとともに、これからも宅配員たちは、お客様の夢が詰まったお荷物をお届けするために、走り続けるのです。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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