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世帯年収800万でも「住宅ローン地獄」。ボーナス併用で家を買った30代夫婦の末路【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.12
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅を購入するとき、多くの方が最初に確認するのは「月々の返済額」ではないでしょうか。

  • 今の家賃と同じくらいなら問題ない
  • 生活は変わらない
  • 無理のない計画

そう説明されると、不安よりも安心のほうが先に立ちます。しかし、その返済計画にボーナス払いが含まれていたとしたらどうでしょう。その家は、数年後、静かに家計を縛る存在に変わることがあります。

今日は、住宅ローンにボーナス払いを組み込んだことで将来の選択肢を少しずつ失っていった、30代共働き夫婦の実例をご紹介します。

「家賃と同じ返済額」その言葉で始まったマイホーム計画

相談に来られたのは、30代前半の共働き夫婦、Aさんご夫妻でした。

お子さんは3歳と1歳。世帯年収は約800万円で、収入は安定しており、賃貸生活にも大きな不満はありませんでした。それでも、子どもの成長や将来の教育費、老後の住まいを考え、持ち家の購入を決断します。

ハウスメーカーから提案されたのは、ボーナス払いを併用した住宅ローンでした。

「ボーナスを入れれば、月々の返済はかなり軽くなります」
「今の家賃とほとんど変わりませんよ」

返済計画には、年2回、各20万円超のボーナス払いが組み込まれていました。月々の返済額だけを見ると、たしかに無理のない計画に見えます。

Aさんは、この説明を受け「これなら大丈夫だろう」と判断し、契約を進めました。

入居当初は順調な返済。満足できるマイホーム生活だった

入居してからしばらくの間、Aさんご夫妻の生活は安定していました。毎月の住宅ローン返済も予定どおりで、家計が大きく揺らぐことはありません。

「家を買ったからといって、生活が急に苦しくなった感じはなかった」

当時を振り返り、Aさんはそう話します。

新居は4LDK。子育て世帯としては、決して背伸びしすぎた広さではありませんでした。部屋数にも余裕があり、生活動線や収納面でも不便は感じていなかったそうです。

特に、家族それぞれの時間を確保できる点は想像以上に快適でした。子どもたちが遊ぶスペース。大人が落ち着ける空間。「賃貸の頃より、暮らしに余白が生まれた」と感じていたといいます。

ローンについても、月々の返済額だけを見れば無理のない水準でした。共働きで収入も安定しており

「このペースなら問題なく払っていける」

そんな手応えを持っていました。この時点では、住宅ローンが将来の生活を縛る存在になるとは、誰も思っていなかったのです。

ボーナスが減少。家計の歯車が狂い始める

状況が変わったのは、翌年の冬でした。勤務先の業績悪化により、ボーナスが大幅に減額されたのです。予定していたボーナス返済分が足りず、その不足分を貯蓄で補う形になりました。

一度きりであれば、まだ耐えられたかもしれません。しかし、その後もボーナス額は回復しませんでした。

固定資産税に加え、保育料や教育費、車の維持費といった支出は変わらず続きます。支出は減らない一方で、ボーナス月を迎えるたびに貯金は確実に減っていきました。

気づけば、まったくお金が残らない生活へと変わっていったのです。

「返せているのに苦しい」住宅ローン地獄の正体

ボーナス月が近づくたび、Aさんご夫妻には強い精神的プレッシャーがかかるようになりました。

「またこの時期か」
「今回はどうやって埋めようか」

そんな会話が、次第に当たり前になっていったといいます。一時的にカードローンに頼ったこともありました。そのときAさんは、「やってはいけないことをしている気がした」と振り返ります。

売却も検討しましたが、購入から年数が浅く、売却価格よりローン残債のほうが多くなる可能性が高いことが分かりました。簡単には引き返せないという現実が、より重くのしかかります。

家計をあらためて見直したとき、Aさんご夫妻は初めて「ボーナス払いは余裕資金ではなかった」という事実に気づきました。生活費を切り詰め、貯蓄を取り崩し、収入が今後も下がらないことを前提にしなければ成り立たない返済計画だったのです。

返済が滞っているわけではありません。延滞もなく、表面上は問題なく支払いは続いています。それでも、転職や働き方を変える余地はなくなり、気づけば「住宅ローンを支払うために今の仕事を続けるしかない生活」に静かに足を踏み入れてしまっていました。

ボーナス払いが向いている人、向いていない人

ボーナス払いそのものが、必ずしも悪い選択というわけではありません。ボーナス額が安定しており、十分な余裕資金がある家庭にとっては、返済方法の一つとして有効に機能するケースもあります。

ただし、今回のように「ボーナスが減らないこと」を前提に組まれた返済計画は、環境が少し変わっただけで家計を一気に苦しくしてしまいます。本来、確認すべきだったのは、ボーナスが支給されなくても月々の返済だけで生活が回るかどうかでした。

住宅ローンは、「今、払えているか」だけで判断するものではありません。何が起きても、暮らしの選択肢を失わずに済むかという視点が欠かせません。

今後、ボーナス払いを含めた住宅ローンを検討している方は、一度、ボーナスが支給されなかった場合の家計も想定してみてください。その確認をしないまま進んでしまうと、本来は無理なく返せているはずの住宅ローンが、気づかないうちに将来の選択肢を狭める存在になってしまうことがあります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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