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「男の隠れ家」が「極寒の独房」に…書斎を作った40代男性の“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.1.5
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「『男の隠れ家』に憧れて、寝室のウォークインクローゼットを削って、2畳の書斎を作ったんです。狭い方が集中できると思って。でも、冬になったらそこは『極寒の独房』でした」

そう肩をすくめるのは、テレワーク中心の生活を送るMさん(40代男性)。

Mさんの書斎は、デスクと椅子を入れるといっぱいになる「お籠り感」のあるスペース。扉を閉めれば完全に一人の世界に浸れる、はずでした。

しかし、12月に入ると、Mさんは書斎ではなくリビングのダイニングテーブルで仕事をするようになりました。

「2畳にエアコンはいらない」という油断

「寒いんです。とにかく寒い。足元から冷気が這い上がってきて、キーボードを打つ指がかじかんで動かないんです」

最大の問題は、「空調計画の甘さ」でした。設計時、Mさんはこう考えていました。

「たった2畳の狭さだし、専用のエアコンを入れるのは大袈裟だ。暑かったり寒かったりしたら、ドアを少し開けておけば寝室の空気が入ってくるだろう」

しかし、実際に仕事を始めると、Web会議や集中したい時はドアを閉め切る必要があります。

窓もなく、暖房設備もない密室。一度冷え切ったその部屋は、体温だけでは到底温まらず、まるで冷蔵庫の中にいるような環境になってしまったのです。

ヒーターを持ち込むも“酸欠”のような状態に

耐えかねたMさんは、足元に小型のセラミックファンヒーターを持ち込みましたが、今度は別の問題が発生しました。

「狭い部屋で温風を出すと、一瞬で室温が上がるんですが、同時にまるで酸欠のように息苦しくなるんです。しかも、すぐに暑くなりすぎて頭がボーッとしてくる」

換気しようにも窓がないため、ドアを開けるしかありません。しかし、ドアを開ければ家族の生活音が聞こえてくる。

「寒さを取るか、“酸欠”を取るか、騒音を取るか」

Mさんは結局、そのどれにも耐えられず、書斎から逃げ出しました。

一級建築士が教える“狭小部屋の空調”

Mさんのように、2〜3畳の書斎を作る場合、専用エアコンを設置するのはオーバースペック(効きすぎる)になりがちで、現実的ではありません。だからこそ、「エアコンなしでどう空気を回すか」の計画が命綱になります。

以下の対策が必要でした。

1、第一種換気の給気口
熱交換器からの空調された新鮮な空気が、必ず書斎に吹き出すように空調計画を行う。

2、排気ファンとアンダーカット
書斎に「排気用ファン」をつけ、アンダーカット(ドアの足元の隙間)やガラリ(通気口)から、廊下や寝室の暖かい空気を強制的に引っ張り込む「空気の道」を作る。

ただの物置になった隠れ家

「結局、今はただの物置になっています。集中するための部屋だったのに、環境が悪すぎて思考停止する部屋になってしまいました」

書斎づくりでは、デスクのサイズやコンセントの位置ばかり気にしがちです。

しかし、より大切なのは、「その狭い箱の中で、長時間呼吸をし、快適な室温を維持できるか?」という生命維持の視点です。

空気の流れを計算しなかった書斎は、冬には“ただの独房”と化してしまった。それがMさんの誤算でした。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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