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「子供いないから分からないですよね?」保護者の“何気ない一言”に絶句。新卒教師が教室でひとり涙した夜

  • 2026.1.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。
教員として働いていると、保護者の方からさまざまな言葉をいただきます。

ありがたい言葉もあれば、ときには胸に刺さってしまう言葉もあります。
今日は、若い頃の私が言われて、ずっと引っかかっていた一言についてお話しします。

「子どもがいないから、分からないですよね?」

新卒で小学校に赴任して数年。
保護者の方との面談で、こんな言葉を投げかけられたことがありました。

「先生は、ご自身にお子さんがいないから、親の気持ちは分からないですよね?」

必死さのあまり、つい口から出てしまった言葉だったのかもしれません。

しかし、当時の私にはその一言が深く突き刺さりました。

最初に言われたときの気持ちは、今でもはっきり覚えています。

(あ、私って担任として信頼されてないんだな)

そんなふうに感じて、胸の奥に鉛が沈み込んだような気持ちになりました。

もちろん、保護者の方も、「この気持ちは経験者じゃないと分からない」

と担任に言いたくなるほど、真剣に悩み、追い詰められていたのかもしれません。

今なら、そう想像できるようになりました。

でも当時の私は、何も言い返すことができませんでした。

「そうですよね……」
と曖昧に笑って、その場をやり過ごすのが精一杯。

面談が終わったあと、誰もいない教室でひとり涙する。そんなこともありました。

でも今、母になって思うこと

あれから10年。
私も2児の母になり、「親の気持ち」を実感する場面は増えました。

子どもの成長への不安。
熱を出したとき、心配で眠れなくなる夜。

でも、他の何を差し置いても大切な存在であること。

たしかに、子育てを経験して初めて分かる感情はありました。
でも、だからといって—

「子どもがいない先生は、担任として力がない」

という話にはならないと、今ははっきり思います。

子育てと「担任の力」は、似ているようで別物

子育ては、基本的には“わが子”と一対一で向き合う時間が中心です。

一方、担任は30人前後の子どもたちの集団を見ながら、学級を運営します。

  • 全員が安心して過ごせる空気づくり
  • 子ども同士のトラブル対応
  • 45分間の授業を成立させる
  • 「この子には今、どんな声かけが必要か」を瞬時に判断する

これは、経験と日々の研鑽でしか得られない「専門性」です。
そしてその専門性は、子育て経験の有無で測れるものではありません。

実際、若くても驚くほど力のある先生はたくさんいます。

言葉が柔らかくて、でもブレない。
叱るときは厳しく叱るけれど、子どもの心をつかんで離さない。

そういう先生って、年齢に関係なく“強い”んですよね。

「子どもがいない」の背景は、人それぞれ

もうひとつ、この言葉の背景について、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
それは、教員の中にも、望んでも子どもを持てない人がいるという現実です。

激務で体調を崩し、子どもを諦めた人。
不妊治療をしながら働いていたけど、授かれなかった人。
やっと妊娠しても、妊娠を継続するのが難しかった人。

こんな体験をしている先生が、私の周りには大勢いました。

そんな背景を抱えている先生に対して「子どもがいないから分からない」と言う言葉は、時に刃のようになってしまいます。

もちろん、保護者の方も余裕がなくて、つい言ってしまうことはあると思います。

でも、もし少しだけ立ち止まれるなら、覚えておいてほしいのです。

先生たちもまた、ひとりの人間として、それぞれの事情と必死さを抱えながら教室に立っているということを。

あの頃の自分や若い先生に伝えたい

当時の私は、あの言葉が悔しくて、情けなくて、心の中で何度も反芻しました。

でも今なら、あの頃の自分にこう言ってあげたい。

「あなたが積み重ねてきた日々は、ちゃんと子どもたちに届いているよ」
「胸を張って、子どもたちの前に立っていいんだよ」

先生は教育の専門家です。
若くても、子どもがいなくても、その事実は変わりません。

私は現場を離れましたが、これから子どもたちがお世話になる学校の先生には、年齢や子どもの有無に関係なく、敬意をもって接したいです。

もちろん、親として必死で子育てをするのもとても大変なこと。

お互いが敬意をもって関係を築けたとき、子どもたちにとっての「安心」は、きっと増えていくはずです。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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