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「転んでも立てばいい」30年ひきこもった兄が遺したメモ。孤独死の現場で見つけた、失われなかった“人間らしさ”

  • 2026.1.4

遺品整理の現場を通して、現代社会が抱える「孤独」や「家族のあり方」を問いかけるYouTubeチャンネル「遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)」。

今回ご紹介するのは、30年もの間、社会との接点を絶ち、自室で孤独に最期を迎えた60代男性の物語です。

80代の親が、中高年となったひきこもり状態の子を支えるこの「8050問題」は、今や全国で約61万人もの人々が直面しているといわれる過酷な現実です。

ゴミに埋め尽くされたその部屋で見つかったのは、絶望だけではなく、故人が必死に「生きよう」ともがいていた切実な証でした。

同じ時代を駆け抜けた「一人の人間」として

今回の現場は、数年前まで80代の母親と暮らしていた男性の部屋。亡くなってから1ヶ月が経過していました。

2階にあるその部屋を訪れたメモリーズ代表の横尾さんの目に飛び込んできたのは、積み上げられた大量のビデオテープの山。

「宇宙戦艦ヤマト」「ルパン三世」…。懐かしいタイトルの数々に、「僕らと同世代ですね」と、横尾さんはふと目を細めました。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

故人は決して、私たちと違う世界の住人ではありませんでした。同じ時代のアニメやドラマを楽しみ、物語に胸を躍らせていた。

しかし、それを見守るはずのテレビは、いつしかゴミの下に埋もれ、二度と電源が入ることはありませんでした。

テーブルの上に遺された「時間のグラデーション」

荒れ果てた部屋のテーブルには、故人の「心の叫び」ともいえる3枚の自筆メモが遺されていました。

1枚は、茶色に変色した古い紙に書かれた

「転んでも立てばいいのさ 何度でも」という言葉。

そしてもう1枚は、比較的あたらしく、白い紙に記された

「このチャンス ぜったいものにしてみせる」という力強い決意。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

人間関係に疲弊し仕事を辞職してからの30年という長い月日。故人は何度も絶望し、それでも「今度こそは」と、新しい紙に希望を書き記していました。

精神的な不安定さや孤独に苛まれながらも、故人は最期まで自分を諦めまいと、心の中で戦い続けていたのかもしれません。

「誰も悪くない」のに壊れてしまった家族の形

依頼者である妹様は、複雑な思いを抱えていました。

数年前、看取り介護が必要な状態だったお母様を、妹様が引き取ります。その後、お母様が亡くなられた際、故人がその葬儀に姿を見せることはありませんでした。

それどころか、お母様の死後、故人は実家の鍵をすべて自分で変えてしまったといいます。

妹様を拒絶し、一人で閉じこもる道を選んだ故人。妹様のもとには時折、困窮と孤独が混じった、やり場のない怒りの電話が届くだけでした。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

誰が悪いわけでもない。けれど、一度こじれてしまった糸は、家族の力だけでは解くことができませんでした。

「一遺品整理人が語るには重い」けれど

清掃が進むにつれ、山のようなライターや電池が姿を現します。それは、故人が歩んできた長い年月を、プロのスタッフが丁寧に解きほぐしていく作業でもありました。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

作業中、スタッフから解決策を問われた横尾さんは、静かに答えました。

「一遺品整理人が語るには、あまりに重い問題です。けれど、中高年のひきこもりが60万人以上にのぼる今、コミュニケーションが苦手だったとしても、必ず受け入れてくれる場所はあるはず。だから、(自分だけで)我慢したらあかんと思う」

「転んでも立てばいい」を合言葉に

4時間の清掃を経て、ゴミの下からようやく畳が姿を現しました。

娘様に手渡されたのは、故人が大切にしていた趣味の品や、幼い頃の写真。そこには、かつて家族で笑い合っていた「普通」の時間が刻まれていました。

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出典:『遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)』(YouTube)

「こうした方々を、どうにかして行政や適切な支援へと繋いでいくこと。それが、今の社会が抱える大きな課題だと思うんです」

作業を終えた横尾さんは、そう締めくくりました。

「転んでも立てばいい」故人が遺したその言葉を、今度は私たちが、困難の中にいる誰かに手を差し伸べるための、「合言葉」にする番かもしれません。



動画:「30年間引きこもり男性がゴミ屋敷で孤独死…発見は1ヶ月後

取材協力:「遺品整理人横尾将臣(メモリーズ代表)」、「公式Webサイト

参考:(厚生労働省)ひきこもり支援に関する取組

参考:(厚生労働省)令和4年度 総合評価書 分野横断的に実施している政策の評価について

※本記事は動画の権利者に許諾を得た上で記事の制作・公開を行っています


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