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「絶対にお止めください」Jリーグクラブが“一部ファンの悪質投稿”に声明。所属選手も「やめてほしい」と悲鳴…

  • 2025.12.1
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

先日、サッカーJ1リーグへの昇格が決まった、J2リーグの水戸ホーリーホックが2025年11月26日、公式WebサイトおよびSNSを通じて「ファン・サポーターの皆さまへお願い」と題した声明を発表しました。

SNS上で一部のファン・サポーターによる不適切な投稿が相次いでいることを受けたもので、対戦相手チームや選手、パートナー企業などに対する侮辱的・攻撃的な発言が問題視されています。クラブは法的措置も辞さない姿勢を示しており、スポーツ界におけるSNSトラブルの深刻化を象徴する事態となっています。

選手からも「やめてほしい」の声

水戸ホーリーホックによると、現在SNSやインターネット上で、一部の方による不適切な投稿が確認されており、クラブに対して多くの意見や問い合わせが寄せられているといいます。

特に問題視されているのは、個人のSNSアカウントのプロフィールやアイコンから水戸ホーリーホックを応援していると推察される一部のユーザーによる、対戦相手チーム・選手・サポーター、さらにはパートナー企業や行政・自治体に対する侮辱的・攻撃的な発言です。

クラブは声明の中で、「選手たちからも、SNSでの不要な争いや、クラブおよびJリーグ全体の価値を下げる恐れのある言動について、非常に残念な想いをしている、やめてほしいという声が上がっております」と明かしています。たとえ一部の人の行為であっても「水戸ホーリーホックのファン・サポーターの声」として受け取られることが多く、クラブおよび選手・スタッフの印象にも影響を及ぼすとして、相手を不快にさせる投稿や誹謗中傷と受け取られる投稿を控えるよう呼びかけました。

また、不適切な投稿に反応することは状況悪化を招く可能性があるとして、返信や引用などで関与しないよう求めています。クラブは悪質な行為に対してはSNS運営会社への通報、投稿削除依頼やブロック対応、顧問弁護士との協議による法的措置など、必要な手続きを随時進めていく方針を示しました。

水戸ホーリーホックは同日、公式X(旧Twitter)アカウントでもこの声明を投稿し、「誹謗中傷・侮辱的・攻撃的な発言や、リスペクトを欠いた投稿は絶対にお止めください」と改めて注意を促しています。

スポーツ界で相次ぐSNS誹謗中傷問題

水戸ホーリーホックだけでなく、スポーツ界全体でSNS誹謗中傷は深刻な問題です。

バスケットボールBリーグの千葉ジェッツふなばしは、2025年4月、所属選手および選手家族のSNSアカウントへダイレクトメッセージによる誹謗中傷、人種差別、侮辱、脅迫のメッセージが送られていたことを公表しました。チームは「いかなる理由があっても、誹謗中傷、人種差別、侮辱、脅迫は決して許されることではありません」として、既に管轄の警察署への報告を実施し、弁護士や警察などの関係機関と連携しながら法的措置も検討する方針を明らかにしています。

日本プロ野球選手会は、より先進的な対策として、2025年のクライマックスシリーズおよび日本シリーズにおいて、英国Signify Group社のAI誹謗中傷検出・通報支援サービス「Threat Matrix」を導入しました。このシステムは日本語を含む42の言語と絵文字に対応し、主要なSNS上での選手に対する投稿を監視して不適切な投稿を自動で検出・特定します。

同システムは「FIFAワールドカップカタール2022」や「ラグビーワールドカップフランス2023」などの国際大会でも採用されており、英プレミアリーグのアーセナルFCでは導入後、SNS上でのチームへの誹謗中傷の検知件数が90%減少したという実績も報告されています。

SNS誹謗中傷のリスクとは

SNS上での誹謗中傷は、単なるマナー違反では済まされません。政府広報の公式Webサイトによると、SNS上で根拠のない悪口を投稿すると、名誉毀損罪や侮辱罪などに問われたり、高額の慰謝料を請求されたりすることがあります。

侮辱罪については、インターネット上の誹謗中傷など悪質な侮辱に厳正に対処するため、法定刑の引き上げが行われ、2022年7月7日から施行されています。

また、自ら誹謗中傷の投稿をしなくても、リポスト(リツイート)などで拡散した場合も同様に責任を問われる可能性があります。匿名だからといって何を言ってもいいわけではなく、技術的に投稿の発信者は特定できるため、民事上・刑事上の責任を問われることがあります。

誹謗中傷を投稿しないためには、以下の点に注意する必要があります。

  • 誹謗中傷と批判意見は異なる:相手の人格を否定または攻撃する言い回しは、批判ではなく誹謗中傷に当たります
  • 匿名でも発信者は特定される:対面や実名では言えないような攻撃的な表現はSNSでも避けるべきです
  • 時間を置いて投稿を見直す:カッとなったとしても、勢いですぐに送信せず、一度冷静になってから投稿する習慣をつけることが重要です

スポーツ選手やタレントなど有名人であっても、相手の人格を否定または攻撃する投稿や拡散が許されるわけではありません。「正義感からやった」という主張も通用しないことを認識する必要があります。

また、2022年10月1日からは法律の改正により情報開示の手続きが簡易・迅速になり、匿名の発信者を特定して損害賠償請求などを行うことも可能になっています。

投稿する前に一度立ち止まって

水戸ホーリーホックの今回の注意喚起は、スポーツを楽しむファン・サポーターと選手、クラブの関係性において、SNSが新たな課題となっていることを浮き彫りにしました。

SNS上では、「今までで最もわかりやすい書き方だった」「すごく具体的でいい」など今回のリリースの内容に対する賞賛のコメントや、「サッカー好き同士仲良くしようよ」「私たち他のチームのサポーターも気をつけよう」という声が寄せられていました。

応援の熱意が行き過ぎて誹謗中傷や攻撃的な言動につながってしまうと、愛するチームの印象を損ない、選手たちを傷つけることになります。

SNSの向こう側にいるのは、同じくスポーツを愛する一人の人間です。投稿する前に、その内容が相手をどう傷つけるか、一度立ち止まって考えることが求められています。


参考:
ファン・サポーターの皆さまへお願い(水戸ホーリーホック)
【重要】SNS等における誹謗中傷について(千葉ジェッツふなばし)
クライマックスシリーズおよび日本シリーズにおける誹謗中傷検出システムの導入について(日本プロ野球選手会)
あなたは大丈夫?SNSでの誹謗中傷 加害者にならないための心がけと被害に遭ったときの対処法とは?(政府広報オンライン)


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