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2025年、日曜劇場に初出演の “主役級”遅咲き女優「忘れられない」「伝説級」3年前、“劇場”で一世を風靡した代表作

  • 2025.12.26

“松本劇場”の名で一世を風靡した『やんごとなき一族』放送から約3年。怪演と呼ばれた美保子役で世間を魅了した女優・松本若菜は、その後も日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』でのシングルマザー役、年末放送の完全新作スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』でのキャスター役など、異なる顔を次々に見せ続ける。コミカルな毒舌キャラから、静かな情熱を秘めた母親、報道の最前線に立つキャスターまで。演じるたびに視聴者の印象を更新し続ける松本若菜。2025年の締めくくりに、あらためて彼女の“松本劇場”を振り返ってみたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

“松本劇場”開幕の衝撃

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松本若菜 (C)SANKEI

2022年、『やんごとなき一族』で深山美保子を演じた松本若菜は、この役を通じて大ブレイク。上流階級の家族を描く“アフター・シンデレラ”な物語において、主人公・佐都(土屋太鳳)に執拗な嫌がらせを繰り返す義姉・美保子の存在感は圧倒的だった。冷徹で権力に固執する一族の象徴のような彼女は、当初は典型的な“イヤな女”として描かれていた。

しかし、その常軌を逸した行動の数々は回を追うごとに笑いを誘うようになり、いつしかSNS上では『松本劇場』として愛される存在に変わっていった。

1話の時点で、佐都をサウナに閉じ込めるという奇行が目立っていた彼女。もちろん、あの名セリフ「ニョキニョキニョキニョキ、タケノコタケノコニョッキッキと生えてきやがって!」も忘れられない。シリアスなドラマに突如投入される替え歌や顔芸、緩急自在の台詞回しは、まさに視聴者の想像を裏切り続ける“怪演”だった。SNS上でも「おもしろすぎた」と話題になり、約3年たった今も「また観たい」「忘れられない」「伝説級」と言及されるほどである。

表情・声色・間の取り方、すべてが緻密で大胆。そして、観る者の記憶に深く焼き付く。『やんごとなき一族』は、松本若菜にとって“女優としての顔”を世間に刻みつけた代表作となった。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』の等身大の強さ

その後、松本は『西園寺さんは家事をしない』『わたしの宝物』などの恋愛ドラマ、『Dr.アシュラ』で医療ドラマの主演にも挑戦。日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』での野崎加奈子役も印象深い。

今作で彼女が演じたのは、北海道・日高地方の競走馬牧場で働くシングルマザー。パートナーを失い、幼い息子を抱えながら日々を生きる女性のリアルな苦悩と誇りが、繊細かつあたたかな眼差しで描かれた。

“美保子”とはまるで正反対のキャラクターでありながら、どこか根底に共通するのは、真っ直ぐに生きようとする女性の覚悟だ。コメディ要素を封印したこの作品では、目の奥に宿る光や言葉少なに、にじむ感情の揺らぎこそが、松本の演技の本領だった。

笑わせる演技から共感させる演技へ。演じる役の幅と深みが、どんどん増していくのがわかる。松本若菜という女優が、単なる“怪演の人”ではないことを強く印象づけた作品が続いた。

『ラストマン』での知性派キャスター役に注目

そして2025年のラストを飾るのが、TBS系年末スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』。福山雅治演じる皆実と、再会する報道キャスター・播磨みさき役で松本が出演する。

好感度No.1キャスターという役どころは、清廉さと鋭さを併せ持つ難役だが、これまで培ってきた松本の“空気を操る力”が存分に発揮されるだろう。柔らかい笑顔の裏に、現場を生き抜く冷静な判断力と、使命感が垣間見える演技が期待される。

突如巻き込まれるスタジオの立てこもり事件という非日常において、彼女がどう振る舞い、視聴者をどこへ導くのか。また違った種類の“松本劇場”の年末公演は、ふたたび目が離せない展開となりそうだ。

思えば松本若菜という女優は、いわゆる“主役級”のキャリアではなかった。しかし『やんごとなき一族』で一躍脚光を浴びて以降、立て続けに話題作に出演し、明らかに作品内の“空気”を変える存在としての地位を築いた。

それはクセが強い演技ではなく、場面に強さを与える力とも言えるだろう。シリアスにもコメディにも染まることができ、かつ、観る者に何かを残していく。

年末の『ラストマン』を経て、2026年、松本若菜はどんな舞台で新たな幕を上げるのか。きっとまた、“劇場”の続きを観たくなるのだと思う。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_