「日曜劇場の中でも秀逸」「夢中になりすぎた」“とくに”おすすめ大傑作３選 “大人が本気で観られる”TBS・日曜９時枠

2025.11.30

TBS日曜夜9時に放送されている“日曜劇場”は、テレビドラマファンにとって一つのブランドとも言える存在だ。“大人が本気で観られるドラマ枠”とも言えるような、社会的テーマや上質な映像、逆転劇のカタルシス、実力派俳優の熱演などが絶妙に掛け合わされる。今回はそのなかでもとくにおすすめしたい3本をピックアップし、その魅力を紹介していく。

※以下本文には放送内容が含まれます。

デジタル×情熱の逆転劇『アトムの童』

2022年10月期に放送された『アトムの童（こ）』は、ゲーム業界を舞台にした異色のヒューマンドラマ。大手企業に潰されかけたインディー開発者たちが、老舗玩具メーカーと手を組んで再起を目指す様は、まさに“日曜劇場らしさ”の真骨頂だ。SNS上でも「日曜劇場の中でも秀逸」「大好きなドラマ」「夢中になりすぎた」とファンの多い一作でもある。

主人公の安積那由他を演じるのは、山﨑賢人。彼は、正体を隠して活動する伝説のゲームクリエイターである。孤高の才能と人間関係の不器用さを内包した難役だったが、彼は持ち前の繊細さと存在感で、観る者に強く訴えるキャラクターを創出した。

作中では、デジタル時代における“ものづくり”の精神と、巨大資本による買収というリアルな問題を絡めながら、友情・再起・信頼といった熱いテーマが丁寧に描かれている。技術と人間味の融合、そして最後に待つ痛快な逆転劇。ゲーム開発というニッチなテーマながら、普遍的な感動を届けてくれる作品だった。

サスペンスに人間ドラマを融合『天国と地獄〜サイコな2人〜』

2021年1月期に放送された『天国と地獄〜サイコな2人〜』は、刑事と殺人犯の魂が入れ替わるという、大胆な設定を掲げたサスペンス。設定の奇抜さに反し、緻密な脚本と緊張感のある展開で、回を重ねるごとに引き込まれる作品となった。

主演の綾瀬はるかが演じた望月彩子は、正義感が強く不器用な刑事。殺人事件の容疑者・日高（高橋一生）と入れ替わった後は、その身体に宿る“他人の魂”を演じなければならない難役を課された。

しかし彼女は、身体的動作や表情、声のトーンまでも使い分け、見る者に“本当に中身が入れ替わっている”と錯覚させるほどの説得力を持って演じ切った。

この作品は、スリリングな展開のなかに、“他者の視点で生きる”という普遍的なテーマを描いている。善と悪の曖昧な境界、人間の本性と感情が交差する様が、じわじわと視聴者の心を掴む。コミカルなシーンと緊張感のバランスも絶妙で、“日曜劇場×サスペンス”という新たな方向性を提示した一作となった。

タイムスリップで問う家族と正義『テセウスの船』

2020年1月期放送の『テセウスの船』は、タイムスリップ×ミステリーという王道の構成に、濃密な家族ドラマを織り交ぜたヒューマンサスペンス。主演の竹内涼真が演じるのは、父親が過去に犯した“重大事件”の真相を追い、自らも過去へとタイムスリップしてしまう青年・田村心だ。

作品名にもなっている“テセウスの船”のパラドックス……“構成要素がすべて入れ替わったとして、それは同じものと言えるのか？”という哲学的命題を軸に、過去の選択が未来をどう変えるか、という重厚なテーマを投げかけてくる。

竹内の演技は、誠実さと人間味がにじむ熱演で、観る者の感情を揺さぶる。何度も壁にぶつかり、信じたい気持ちと疑う気持ちの狭間で揺れ動く田村心の姿に、共感せずにはいられない。過去の真実と家族の再生を巡るラストに向け、怒涛の展開と涙のカタルシスが待っている。

大人の心に響く、これぞ日曜劇場

日曜劇場という枠は、単なるテレビドラマのカテゴリを超え、テレビドラマが持ち得る“力”を再確認させてくれる存在だと言えるのではないか。どの作品にも、現代社会に通じる問題意識、奥行きのあるキャラクター描写、そして逆転劇の快感が詰まっている。

一見するとハードルが高く見える骨太なテーマも、優れた脚本と演者の力によって、私たちの日常に引き寄せられるように描かれる。それが、日曜劇場の魅力であり、長年愛され続けている理由なのかもしれない。

まだ観ていない作品があれば、この週末にぜひ一度、触れてみてほしい。自分のなかに新しい感情や視点が芽生える、そんなドラマ体験がきっと待っているはずだ。

ライター：北村有（Kitamura Yuu）
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X（旧Twitter）：@yuu_uu_