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【丸の内】カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語@東京ステーションギャラリー 11月9日(日)まで

  • 2025.10.11

世界を魅了した布 ― インド更紗の美と物語

東京ステーションギャラリーにて、2025年11月9日(日)まで開催中の「カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語」。

本展では、世界屈指のテキスタイル・コレクターであるカルン・タカール氏が長年にわたり集めた、14〜19世紀のインド更紗の貴重なコレクションが日本初公開されています。更紗は、色鮮やかな文様と驚くべき染色技術によって、古代から世界中の人々を魅了してきた布。装飾用としてはもちろん、儀式、服飾、小物など多彩な用途で愛されてきました。

出典:リビング東京Web

会場入り口奥にある作品《白地人物草花文様更紗儀礼用布》は額の線と首のルドラークシャ数珠から、この人物はヒンドゥー教シヴァ派の信者とわかります。生い茂る植物の中で、祈りの儀式に使う花を摘む姿は、特に優雅な姿勢と繊細な指先の描写が印象的な作品です。 注目すべきは、その描写の細やかさ。花を摘む指先の一つ一つに、制作者の祈りのような心が宿っています。

右手《白地人物城郭文様更紗裂》の作品上段には占い師や太鼓奏者、オランダ国旗の砦が描かれ、幻想的な世界が広がります。下段では宝石をまとった人物が指示を出し、楽器の音が響く祝祭的な宮廷の様子が表現されています。

出典:リビング東京Web

会場展示風景 左:《白地人物草花文様更紗儀礼用布》17-18世紀、南東インド(スリランカで発見と伝わる) 右:《白地人物城郭文様更紗裂》18世紀、南東インド海岸部(スリランカで発見と伝わる)

交易が生んだデザインの多様性

インド更紗の魅力のひとつは、インドからヨーロッパ・アジア各地への輸出を通して発展した、国や地域ごとの“好み”に合わせた多彩な文様の展開にあります。

出典:リビング東京Web

会場展示風景

例えばヨーロッパ向けにはチューリップや聖母子、インドネシア市場では「太陽(マタハリ)」文様など、異文化の趣向を巧みに取り入れながらも、インドの職人たちの誇る美意識が随所に感じられます。

出典:リビング東京Web

会場展示風景

“世界初のグローバル・プロダクト”が語るもの

ひとつひとつの裂(きれ)は、ただの装飾品ではなく、布が語る“物語”。 人物、動植物、風景、宗教的モチーフまでが細密に描かれた更紗は、まるで布の上に広がる歴史絵巻のようです。 特に《白地人物城郭文様更紗裂》(画像下中心の作品)では、砦や宮廷、音楽や占いの場面など、当時の生活風景を感じさせるユニークな構図が広がり、見る者を惹きつけます。

出典:リビング東京Web

会場展示風景

子ども用の帽子にも

大航海時代、ポルトガルやオランダの商人によりインド更紗がヨーロッパに伝わり、その鮮やかな色彩と模様は人々を驚かせました。やがて人気が高まりすぎて禁止令が出るほどに。紹介された帽子は、貴重な更紗を無駄なく使うため、端切れをつなぎ合わせて作られたものです。

出典:リビング東京Web

会場展示風景

インド更紗がウィリアム・モリスに与えた影響

19世紀イギリスでアーツ・アンド・クラフツ運動を牽引したウィリアム・モリスは、自然をモチーフにした有機的なデザインや、職人の手仕事による美を大切にしました。この思想や美意識は、まさにインド更紗に通じるものがあり、モリス自身も実際にインドの更紗を収集・研究していたといわれています。

出典:リビング東京Web

会場展示風景

《草花文様更紗ベッドセット》は、南東インド製の伝統的な更紗とヨーロッパで作られた更紗が組み合わさった貴重な一例です。 一方、《白地人物文様布地》は、西洋の海軍力と植民地拡大の歴史を背景に生まれた作品で、東西の文化交流とその複雑な力関係を映し出しています。

これらの布は、美しさを持つだけでなく、当時の世界の文化交流や歴史の動きを伝える貴重な資料でもあります。

出典:リビング東京Web

会場展示風景 左《草花文様更紗ベッドセット》白地更紗:18世紀、南東インド海岸部 濃紫および白地更紗:18世紀、イギリスまたはフランス 右:《白地人物文様布地》 1785年頃、ナント(フランス)

インド更紗の奥深さにふれる、またとない機会

“布の芸術”とも称されるインド更紗。その魅力を余すことなく堪能できる展覧会です。デザインの美しさはもちろん、それぞれの更紗に宿る文化背景や物語に想像が広がります。

また、世界屈指のコレクターであるカルン・タカール氏の貴重なコレクションが展示される日本初の機会であり、その質の高さと多様性にはただただ感嘆するばかりです。 ぜひ会場で、その繊細で力強い布の世界を体感してみてください。

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