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校長室で告げられた「妊活は2年諦めて」 5年生の担任を打診された女性教諭の“決断”とは

  • 2025.10.16
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出典:photoAC(写真はイメージです)

こんにちは。元小学校教員で、現在はWebライターをしているみずいろ文具です。

教員として働いていた頃、今でも胸に残る出来事があります。ある校長先生の一言が、同僚の女性教諭の人生を大きく揺さぶったのです。

校長から衝撃の提案「妊活は2年諦めてほしい」

これは、私が教員2年目の頃の話です。

当時30代半ばの同僚女性のE先生と親しくしていました。E先生は当時の私より10歳ほど年上でしたが、穏やかで面倒見がよく信頼できる人柄でした。

そんなE先生が、年度末を迎えたある日、校長室に呼び出しを受けました。「来年度は5年生の担任をお願いしたい」と打診を受けたそうです。

実はそのときE先生は、新婚でした。子どもを考えていた彼女は正直にこう伝えたそうです。

「実は来年、妊活を考えています。できれば産休に入りたいと思っています」

すると校長は、ため息まじりにこう言いました。

「5年生は宿泊学習もあるし、卒業まで2年続けて見てほしい。だから、妊活は2年だけ諦めてくれないかな」

責任感と現実のはざまで

5・6年生は、高学年として学校を引っ張る立場です。

学習も難しくなるうえ宿泊を伴う行事もあり、体力的にも精神的にもハード。もちろんやりがいはありますが、担任の負担もより多い学年なのです。

校長の言葉には、子どもたちを想う気持ちや、人手不足の現場の事情もあったのかもしれません。

でもそれは、個人の人生に踏み込む発言でした。

責任感の強いE先生は、迷ったうえでしぶしぶ承諾。次年度、5年生の担任になりました。

校長の提案通り、妊活は見送ることに。

2年間全力で子どもたちに向き合い、立派に卒業式を迎えたのです。

桜の舞う中子どもたちと涙を流すE先生は、教師として本当に輝いていました。

いざ妊活しても、なかなか授かれず

卒業生を見送ったあと、E先生は満を持して妊活をスタート。

けれども、「なかなか授かることができない。不妊治療を始めようと思う」と報告されました。不妊治療は、時間的にも体力的にも女性に大きな負担がかかります。

忙しい仕事の中、同僚に頭を下げて治療に通うE先生。

私は心から応援していましたが、何度か弱音をつぶやいていました。

「卒業生を見送れたことはよかったけど、あの2年間のうちに行動していれば、授かれていたかもしれない。もう30代後半。年齢的にももう無理かもしれない…」

当時まだ20代で独身だった私。

不妊治療の大変さなど想像するしかできませんでしたが、E先生に赤ちゃんが来てくれることをただ願っていました。

そして3年後…E先生は体外受精で待望の妊娠。私は心から祝福し、出産後は赤ちゃんを抱っこさせてもらいました。彼女のこれまでにない幸せそうな表情に、「本当に良かった」と私も心から嬉しかったのを覚えています。

教員にも人生がある

あの出来事を思い出すたびに、「教師である前に、1人の人間である」という当たり前のことを考えます。

どんなに責任の重い仕事でも、誰かの人生計画を“組織の都合”で左右していいはずがありません。「妊活を諦めて」と言うことは、人生の選択を制限する行為です。

教育現場では、子どもの成長を第一に考えるあまり、先生自身の人生が後回しにされがちです。

でも、教師にも生活があり、家庭があり、未来があります。

仕事への責任感と、個人の人生。どちらも大切にできる職場環境が、もっと増えていくことを願っています。



ライター:みずいろ文具
関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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