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セルフレジでスキャンだけして未払い「危うく前の客の会計まで払うところだった」逃げた人の法的責任は?

  • 2025.10.23
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

買い物をより便利に、そしてスムーズにしてくれるセルフレジ。今やスーパーやコンビニで当たり前の存在となり、多くの人が日常的に利用しています。

しかし、セルフレジでスキャンだけして支払いをしないという事例も発生しているそう。SNSに「前の客の支払いデータが残っていて、前の客の分も払いそうになった」といった趣旨の投稿がされ話題になりました。

はたして、スキャンだけして支払わずに去る行為は、どのような罪になるのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

「スキャンだけして去る」のは犯罪?弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

「セルフレジ未払い」はどんな罪になる?

---「スキャンだけして支払わずに去る」行為はどのような犯罪に当たるのでしょうか?

寺林弁護士:

セルフレジで商品をスキャンしたにもかかわらず、支払いをせずにそのまま店を出る行為は、一般的に「窃盗罪」(刑法第235条)に該当する可能性があります。窃盗罪とは、他人の財物を不法に占有する行為を指し、万引きもこの罪に含まれます。

ただし、セルフレジ特有の事情として、「スキャンしたが支払いを忘れた」「操作に不慣れで精算を完了したつもりだった」といった「うっかり」のケースも存在します。このような場合、故意(わざと)か過失(うっかり)かの判断が重要になります。

スキャンだけして支払わずに去る行為が故意であれば、店側の財物を不法に取得する意図が認められ、窃盗罪が成立する可能性が高くなります。さらに、他人に支払いを押し付けるような手口であれば、「詐欺罪」(刑法第246条)に問われる可能性もあります。

実際には、監視カメラ映像や本人の供述、行動の一貫性などをもとに、故意の有無が判断されます。

---客側の「誤会計」や「勘違い」で未払いが発生した場合、意図がなくても責任を問われる可能性はありますか?

寺林弁護士:

意図がない「誤会計」や「勘違い」で未払いが発生した場合でも、状況によっては法的責任を問われる可能性があります。ただし、基本的には「故意」があるかどうかが重要な判断基準となります。

1. 故意がなければ原則として犯罪にはならない
セルフレジでの未払いが「うっかりミス」や「操作の不慣れ」によるものであれば、窃盗罪(刑法第235条)は成立しません。たとえば、バーコードの読み取りミスや、スキャンしたつもりで実際には読み込まれていなかった場合などが該当します。

2. ただし「気づいた後の対応」によっては別の罪に問われる可能性も
未精算であることに後から気づいたにもかかわらず放置した場合、占有離脱物横領罪(刑法第254条)に問われる可能性があります。この罪は「他人が占有を離れた物を不法に取得する」行為に該当し、1年以下の懲役または10万円以下の罰金・科料が科されることがあります。

3. 誠実な対応
店を出た直後や帰宅後に未精算に気づいた場合は、速やかに店舗に連絡し、事情を説明して代金を支払うことが重要です。自ら申し出ることで「故意ではない」と認められやすく、刑事責任を問われる可能性は大幅に下がります。

働いている店で「セルフレジ未払い」があったらどうしたらいい?

---店舗側がこのような「未払い」被害に遭った場合、法的な観点から、どのような対応が可能でしょうか?

1. 警察への被害届の提出
故意による未払い(窃盗や詐欺の疑い)がある場合、刑事事件として警察に通報・被害届を提出することができます。特に、監視カメラ映像やレシート履歴などの証拠がある場合、捜査の対象となる可能性が高まります。

2. 損害賠償請求(民事)
未払いによって店舗が損害を被った場合、民事上の損害賠償請求を行うことも可能です。ただし、相手の身元が判明しており、故意性が認められる場合に限られます。

3. 店内での注意喚起・警告対応
故意か過失か不明な場合でも、店内での口頭注意や警告文の提示により、再発防止を図ることができます。客がその場で未払いに気づき、申し出た場合は、柔軟な対応が求められます。

便利さの裏にある責任、利用者・店舗双方の意識が大切

セルフレジでのスキャン後未払いは、故意であれば窃盗罪や詐欺罪に問われる可能性があり、決して軽い問題ではありません。一方で、うっかりミスによる未払いは原則として犯罪にはなりませんが、気づいた後の対応が重要になります。

便利なセルフレジですが、利用者一人ひとりの責任が伴います。操作に不慣れな場合は店員に尋ねる、会計画面をしっかり確認してから支払うといった基本的な注意が必要でしょう。

また、店舗側にも、前の客のスキャン情報が残らないようなシステム改善や、利用者への分かりやすい案内など、トラブルを未然に防ぐ工夫が求められます。

セルフレジは今後もますます普及していくでしょう。利用者と店舗、双方の意識と配慮によって、誰もが安心して利用できる環境を作っていくことが大切なのではないでしょうか。

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