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渋谷の自販機横、“崩壊ゴミ”をあえて「晒し者」に。日本人の4割が「知らなかった」悲しい現実

  • 2025.10.22
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

街を歩いていて、ゴミを捨てたいのに捨てる場所が見つからなくて困った経験はありませんか?日本の公共空間では、かつて当たり前のように設置されていたゴミ箱が、いつの間にか姿を消していきました。海外から訪れる旅行者も、「日本は清潔なのにゴミ箱がない」と驚くほどです。

そのせいか、飲料水の自動販売機横に設置されているリサイクルボックスに、一般ゴミが捨てられたり、ボックスの中ではなく周囲を取り囲むように放置されたりといった事態が頻発しています。

この状況に一石を投じる取り組みが、2025年10月に渋谷で行われました。それが、日本コカ・コーラが開催した「崩壊リサイクルボックスをなくそう展」です。

自販機の横に放置されたゴミや、異物が混入したリサイクルボックスの実態を“展示”するという斬新な方法で、私たちに問題提起をしています。はたして、日本の街から公共ゴミ箱が減った背景には何があるのでしょうか。そして、この問題にどう向き合えばいいのでしょうか。

コカ・コーラが可視化した「崩壊リサイクルボックス」の実態

日本コカ・コーラは、2025年10月17日から19日までの3日間、渋谷道玄坂広場で「崩壊リサイクルボックスをなくそう展」を開催しました。リサイクルボックスの適切な使い方とペットボトルの正しい分別を啓発するイベントです。

会場では、街中で実際に起きている「崩壊」の様子を、ユニークなネーミングで分類して展示しました。テイクアウトのカップが刺さっている「触角型」、リサイクルボックスの周りにお供えのようにペットボトルが置かれる「お供え型」、蓋がこじ開けられた「口開き型」、自販機裏など見えにくい場所に放置される「隠れ崩壊型」など、日常的に見かける光景をレプリカで再現しました。

使用済みペットボトルは適切に回収すれば再びペットボトルとしてリサイクルできますが、飲み残しや異物の混入により、リサイクルボックスが本来の機能を失ってしまう状況が生じています。見過ごされがちな小さなポイ捨てが、実はリサイクルの妨げとなり、「崩壊」のきっかけになることを、多くの人に気づいてもらうことを目的としたいべんとでした。

リサイクルボックスは「ゴミ箱」ではありません

そもそもリサイクルボックスとは、飲み終わった缶・びん・ペットボトルをゴミとしてではなく、リサイクルするための「資源」として集めることを目的に設置されており、「ゴミ箱」とは違うものです。

ですが、自販機横リサイクルボックスは、街中のゴミ箱が減少していく中で、何でも入れて良い「街のゴミ箱」のように誤解されているのだそう。全国清涼飲料連合会の調査によると、実に4割以上の人が「自販機横のボックスはゴミ箱ではなく、飲料容器専用のリサイクルボックスであることを知らなかった」と回答しています。

実際に、リサイクルボックスに入っているもののうち約3割が空容器以外の異物(一般ゴミ)だといいます。

こうした状況を受けて、清涼飲料業界は2022年から新機能のリサイクルボックスを導入しました。投入口を下向きにして飲料容器以外を入れにくくし、ボックス上部に傾斜をつけて上に物を置けなくするなどの工夫がされています。また、色も「ゴミ箱感」を払拭するためにオレンジ色に変更されました。実証実験では、異物混入が約3割から5割削減される効果が確認されています。

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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

公共空間からゴミ箱が次々と姿を消した背景

日本の街から公共のゴミ箱が減っていった背景には、いくつかの大きな出来事があります。

1995年の地下鉄サリン事件では、テロ対策としてゴミ箱が危険物の隠し場所になる懸念から、多くの駅でゴミ箱が撤去されました。2004年のマドリード列車爆破テロ事件も、公共交通機関のゴミ箱撤去を後押しする出来事となりました。また、新型コロナウイルス感染拡大時には、特に2021年から2022年にかけて感染対策の観点から一時的にゴミ箱が撤去されました。

公園からも、ゴミ箱は次々と姿を消していきました。埼玉県川越市は2024年11月に「家庭ゴミ等の持ち込みにより公園の美観がそこなわれており、また、ゴミの減量化のため」としてゴミ箱を撤去。茨城県石岡市も「家庭ゴミを捨てられてしまう」「カラスがゴミ箱をあさる」「犬の糞やタバコの吸殻をビニール袋に入れて捨てられてしまう」などの苦情があり、対策を検討した結果、ゴミ箱を撤去することにしたと発表しました。

また、東京都港区は、公園のゴミ箱について「過去に放火されたり、家庭ゴミを捨てられたりしたため、防犯・衛生及び景観の観点から」撤去したと説明しています。

東京都交通局は2022年5月、「お客様のご利用時の安全性向上の観点から」として、都営地下鉄各駅や日暮里・舎人ライナーの一部駅の改札口付近に設置していたゴミ箱を撤去しました。

民間施設でも同様の動きがありました。例えば、三重県鈴鹿市にあるツインサーキットでは、外部からの持ち込みゴミが多く、家庭ゴミまで捨てられていたこと、分別せずにゴミが捨てられること、タバコの吸殻をビニール袋に入れて捨てられること、カラスがゴミ箱をあさることなどの問題から、2024年4月にゴミ箱を撤去しました。

つまり、公共ゴミ箱の撤去は、テロ対策という安全面の理由と、本来の利用目的を超えた家庭ゴミの持ち込みという両方の要因が重なって進んだと考えられます。

SNSで交わされる多様な意見

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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

この問題について、SNS上ではさまざまな意見が交わされています。

まずは、自分のゴミは自分で持ち帰るべきというコメント。

  • 自分で出したゴミは自分で持ち帰るべきでは?
  • 「捨てられないなら持ち帰る」という意識になれば問題は発生しないのだろうけど…。

道端に放置せずゴミ箱の近くに置くのは、捨てられるならきちんと捨てたいという意識の表れではないか、という声も多数ありました。ゴミ箱の少なさに対する言及も目立ちました。

  • ゴミ箱があればゴミ箱の中に捨てたいという気持ちはあるのだろうな。
  • テロ等の対策として、ゴミ箱を撤去するのではなく、清掃や警備の人員の補充をしたほうが良いのでは。
  • 日本はゴミ箱が少なすぎる。私の住んでいる国では50メートルおきくらいにゴミ箱があるよ。

また、テイクアウトを提供している店や、ペットボトル飲料を販売している企業が「ゴミの回収」まで責任を持つべきという指摘も。

  • サービスを提供している事業者がゴミ回収まで責任を持つべきでは。
  • プラカップでテイクアウトできる店は近隣にゴミ箱を設置する義務を課したほうが良いのでは。

とはいえ、ゴミに対する意識やゴミ捨てマナーが悪いのは事実であり、そのようなマナー違反がゴミ箱撤去につながった、というコメントもありました。

  • ゴミ箱は設置していたけど、よそから持ってきたゴミを捨てる人がいるから撤去されたんだよね。
  • ペットボトル用のゴミ箱に、吸い殻や紙ゴミを入れている人もいる。

小さな気づきから始まる、持続可能な街づくり

公共ゴミ箱をめぐる問題は、安全面、衛生面、コスト面、そして私たち一人ひとりのマナーが複雑に絡み合っています。

コカ・コーラの「崩壊リサイクルボックスをなくそう展」は、このような問題を可視化したのです。日常的に見過ごされがちな光景を、あえて展示物として再現することで、多くの人に「自分ごと」として考えるきっかけとなりました。

リサイクルボックスがゴミ箱ではなく飲料容器専用であることを理解すること、飲み残しや異物を入れないこと、どうしても捨てられない時は持ち帰ることなど、一人ひとりの小さな行動の積み重ねが、より良い公共空間を作っていくでしょう。


参考:
10月20日は「リサイクルの日」 「崩壊リサイクルボックスをなくそう展」を渋谷で開催 10月17日(金)~19日(日)の3日間限定 ―そのポイ捨てが、崩壊のはじまり?―(日本コカ・コーラ株式会社)
リサイクルボックスの取り組み(一般社団法人 全国清涼飲料連合会)
日暮里・舎人ライナーのニュース【お知らせ】(東京都交通局)
公園のゴミ箱撤去(川越市)
公園のゴミ箱撤去についてのお知らせ(石岡市)
ゴミ箱撤去に関するお知らせ(株式会社ツインサーキット)


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