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「指定銀行でないと振り込めない」会社からの強制は違法?角を立てずに拒否する方法は【弁護士に聞いてみた】

  • 2026.3.18
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出典元:photoCA(画像はイメージです)

もうすぐ始まる新年度。新しい職場への入社準備に忙しく過ごしている方もいるのではないでしょうか。就職や転職、アルバイトを始めた際、会社から「給与の振込先はこの銀行口座にしてほしい」と指定されたことはありませんか。

「今使っているメインバンクを使いたい」「新しく口座を作るのは面倒」と感じる人も少なくないでしょう。

では、会社からの指定には必ず従わなければならないのでしょうか。

実は、給与の支払い方法には法律上のルールがあり、会社が特定の銀行口座の利用を強制することはできないとされています。

そこで今回は、会社から振込先の銀行を指定された場合の法的な考え方や、角が立たない断り方、トラブルになった場合の対処法について、弁護士の近藤姫美さんに詳しく解説していただきました。

「特定の銀行口座」の指定は法律違反?会社の強制力とは

---会社から給与の振込先として特定の銀行口座を指定されることがありますが、これは法律上問題ないのでしょうか?また、労働者はそれに従わなければならないのでしょうか?

近藤姫美さん:

「会社が労働者側に対して、給与の振込先として特定の銀行口座を使用してほしいと推奨することは法律上問題がありません。他方で、会社側が労働者に対して、会社が指定する特定の銀行口座の使用を強制させることはできません。

労働基準法第24条第1項は、『賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない』と定めており、給与については会社側は現金での直接払いを原則としなければならないことを定めています。ただし、現在において、直接現金で給与を手渡ししている会社は多くありません。

労働基準法施行規則第7条の2第1号は『使用者は、労働者の同意を得た場合には』『当該労働者が指定する銀行そのほかの金融機関に保有する当該労働者の預金または貯金への振込』ができるとしており、この条文を根拠に、会社は銀行口座に給与を振り込む方法によって労働者に給与を支払うことができているのです。この条文に反して、会社が労働者側の同意なく特定の銀行口座に給与を振り込むことはできません。

会社側としては労働者が会社が指定する特定の銀行口座への給与の振込を拒んだ場合には、労働者が指定する他の口座もしくは現金で直接給与を支払う必要があります。」

指定された口座を断りたい!角が立たない伝え方のコツ

---法的に強制できないと分かりましたが、実際に会社から「この銀行にしてほしい」と言われた場合、労働者はどのように断ればよいのでしょうか?

近藤姫美さん:

「会社から特定の銀行口座を給与の振込先にしてほしいと言われた場合は、労働者側は断ることができます。あくまで労働基準法は現金直接払いを原則として定めており、労働基準法施行規則は労働者が指定する銀行への振込を例外的に認めているからです。少なくとも法的には労働者は、会社側に対して、何ら理由を告げることなく自身が指定する銀行へ給与を振り込んでほしいと主張することができます。

ただ、法的には労働者側が銀行口座を指定することができることにはなっていたとしても、労働者側から会社側には言いだしにくいのが実情です。角が立つような断り方をしてしまうと、会社側から法に触れない程度の不利益な取り扱いをされる可能性は否定しきれません。角が立たないような理由をつけて、会社側の指定する振込先口座ではなくて労働者側が指定する銀行口座への振り込みをお願いするという形がもっとも不利益がない方法です。

例えば、利用しやすい場所に会社側が指定する金融機関のATMが存在しないとか、給与の管理は家族がしているがその家族が管理しやすい銀行口座にしてほしいと言ってきかなくて労働基準法をたてに自身もしつこく言われてしまっており会社に迷惑をかけたくないので、労働者指定の銀行口座へ振り込んでほしい等が考えられます。素直に会社側が指定する口座を利用したくない理由を告げてもいいかもしれません。」

「指定銀行でないと振り込めない」ときつく言われた場合の対処法

---もし会社側から「指定した銀行でないと給与は振り込めない」と強く言われてしまった場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか?どのような対策が考えられますか?

近藤姫美さん:

「会社から『指定した銀行でないと給与は振り込めない』ときつく言われてしまった場合、基本的には労働基準法の条文を見せる等して再度交渉をすべきです。それでもなお会社側がかたくなに労働者指定口座には給与を振り込めないと言う場合は、会社側に対して、労働者が指定する口座に振り込めない理由を聞いておいてください。

会社から『指定した銀行でないと給与は振り込めない』と言われた場合、労働者は、労働基準監督署に相談することができます。会社が労働者側が指定する口座にふりこみをしない理由によっては、相談後に、労働基準監督署から会社に対して、是正勧告といって労働者が指定した口座に給与を振り込むよう指導が入ったり、会社への立ち入り調査がなされる場合があります。例えば、給与の振込日に振り替えが間に合わないが来月からは労働者の指定する口座に振り込むことができそうであるというようなやむを得ない場合であれば、労働基準監督署等に相談をしたとしても勧告や調査がなされる可能性は低いと考えられます。他方で、会社側が振込手数料を節約したいから等の場合には、勧告や調査がなされる可能性があります。

また、会社の顧問弁護士や顧問社労士や社内コンプライアンス業務を行っている部署に対し、社内で相談できる環境がある場合には、顧問弁護士や顧問社労士に対して、相談をしてもよいでしょう。会社側の顧問弁護士・顧問社労士は、会社内のリスクを管理する必要があるため会社側に対して、労働者が指定した口座に給与を振り込まなければならない旨説明してくれる可能性が高いです。」

正しい知識を持ち、納得できる環境づくりを

給与振込の口座指定は、会社都合による「推奨」にすぎず、法的な強制力がないことが分かりました。自分が普段使っているメインバンクを指定できれば、毎月のお金の管理がスムーズになり、無駄な手数料を払う必要もなくなります。

しかし、会社との関係性を良好に保つことも働くうえで大切な要素です。もし別の口座を利用したい場合は、今回紹介された「角が立たない断り方」を参考に、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

万が一トラブルになった際も、専門機関や社内の窓口に相談できるという正しい知識を持っておくことは、今後安心して働くための心強い武器になるはずです。


監修者:近藤姫美 弁護士(埼玉弁護士会所属)
アディーレ法律事務所大宮支店

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