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『退職金を住宅ローンに使う人』は気をつけて…お金のプロが教える“3つのリスク”とは?

  • 2025.10.4
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

退職後の資金計画を立てる際に、退職金を住宅ローンの返済にあてようと考える人は少なくありません。一見すると、まとまったお金を使ってローンの負担を軽くできるため合理的な判断です。しかし、安易に手元の退職金を減らしてしまうのは危険です。

この記事では、「退職金を住宅ローンに使う人」が直面しがちな3つの注意点をわかりやすく解説。退職金の使い道に悩んでいる人はぜひ読み進めて、後悔しない資金設計の参考にしてください。

知らずに損する?退職金を住宅ローンに使う際の落とし穴とは

退職金はこれまでの労働の成果として受け取る大お金です。住宅ローンの返済や繰り上げ返済に充てることで、金利軽減や総返済額の減額が期待できます。実際に退職金を活用して住宅ローンを完済する人も少なくありません。ただし、退職金をすべて住宅ローンに回す計画は一歩間違うと後悔につながります。その理由として以下のポイントが挙げられます。

  • 老後資金の不足リスク
    退職後は収入が減少するため、予備資金が少ないと生活が苦しくなる可能性があります。退職金が丸ごと住宅ローンに消えれば、急な医療費や介護費用に対応できず生活の安定が損なわれる恐れがあります。

  • 税制メリットの消失
    住宅ローン控除などの税金優遇は、借入額の残高があることで恩恵を得る仕組みです。繰り上げ返済で一気にローンを減らすと控除期間が短くなり、結果的に税金面で不利になる場合があります。

  • 資金流動性の低下
    退職金は現金や預金の形で持っておくことで、必要なときに柔軟に使えます。住宅ローンの返済に直接使うと手元資金が減り、自由に使える資金が少な苦なります。

これらのリスクは、個人の生活スタイルや家族構成によって異なります。たとえば、手元の予備資金が心得ない状況であるにもかかわらず、退職金の大半を繰り上げ返済に回してしまうのはリスクが大きいたでしょう。
退職金を活用する際は、バランスよく資金計画を立てることが重要です。退職時における資産状況や今後起こり得るライフイベントなどを想定したうえで、活用法を考えましょう。

より賢く使うには?退職金と住宅ローンの賢い付き合い方

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

では、退職金を住宅ローン返済に使う場合、どのようにすればリスクを抑えられるのでしょうか。対策としては、次の3つのポイントが挙げられます。

  1. 生活防衛資金は最低限確保する
    退職金の一部は手元に残し、生活資金や緊急時の備えとして活用できるようにしましょう。生活費のシミュレーションをしっかり行い、必要な額を見積もることが欠かせません。

  2. 繰り上げ返済の時期や金額を慎重に検討
    繰り上げ返済は総返済額を減らせる一方、住宅ローン控除のメリットを損なうこともあります。税金の効果や手持ち資金の状況を踏まえ、いくつかのパターンでシミュレーションすると良いでしょう。

  3. 資金流動性を保つため資金分散を心がける
    退職金を全部使ってしまわず、現金や金融商品など流動性の高い資産も残しておく方法がおすすめです。万が一のときにすぐに資金を動かせることは、老後の安心感につながります。

例えば、退職金が300万円ある場合、住宅ローンの繰り上げ返済に100万円だけ充てて残りは預貯金や金融商品に分散する方法です。この方法なら、万が一急な出費が発生しても、流動性の高い資産で対応できます。

このように、繰り上げ返済は無理なくできる範囲で少しずつ行うのが理想的です。住宅ローンの残債や資産状況に応じて柔軟にプランを組むことで、安心して老後を迎えられます。ただし、住宅ローン控除のメリットや老後資産のシミュレーションをする際は、ある程度専門性が求められます。最適な資金計画を立てるためにも、必要に応じてファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家へ相談も検討しましょう。

退職金を住宅ローンへ使う前に知っておきたいことまとめ

退職金としてまとまった一時金を受け取ると、気分が高揚してしまいがちです。しかし、使い道を誤ると生活に支障をきたすリスクが潜んでいます。

特に住宅ローンの返済へ充てる場合は、老後資金の不足や税制面のデメリット、資金流動性の低下といった3つの大きなリスクに注意すべきです。「住宅ローンがゼロになってスッキリする」という心理的なメリットがある一方で、自由に使える手元のお金が減ることによる影響を、慎重に考えなければなりません。

退職後の暮らしを見据え、生活費や医療費、突発的な支出の備えを充分に確保しつつ、住宅ローンの繰り上げ返済や住宅ローン控除を活用することが大切です。退職金を無理なく活かして、安心で快適なセカンドライフを送りましょう。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。