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まるでハリーポッターの世界!自然派薬局や修道院で植物の力に出合う【50代からの「整う」ヨーロッパ便り】

  • 2025.9.2

皆さんこんにちは、自然療法ジャーナリストで自然療法セラピストのmadokaです。
20代半ばから英国で自然療法を学び、世界各地の自然療法を体験しながら、現在は自然療法ジャーナリストとして活動しています。
本連載では、セラピストとして活動するなかで出会った仲間たちとのヨーロッパ周遊の記録をお届け!

カラダ踊る、ココロほどける知恵

中世ヨーロッパの古い街や建物を訪れると、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような気分になります。魔女の宅急便のような街並みに身を置くと、小さな見習い魔女が本当に存在してもおかしくないような、不思議なことが起きそうな気さえしてきます。目を閉じれば、当時の街の喧騒や人々の声が聞こえてくるようです。
 
2週間の滞在期間中、イタリアの街をいくつも巡り、その中には修道院や、山の奥で薬草を育てて蒸留している錬金術の工房も。どこも忘れられない風景と香りに満ちていました。
特に印象的だったのは薬局と植物薬の製造、修道院の文化、そしてそこに根付く自然療法でした。

世界五大修道院の一つ パヴィア修道院へ!

イタリア北部にある14世紀建立のパヴィア修道院。両側に大きな木がそびえる並木道を歩くと、美しい建築が姿を現します。「これが修道院なのね!」と思うほどの壮麗さですが、これはただの門のような役割のゲートハウスでした(笑)。
ゲートをくぐると視界が一度ぎゅっと小さくされ、その先に広がる中庭が際立ち、実際よりも大きく見える感覚。その先に教会がどーんと現れ、その美しさに思わず「うわ〜」と声が出てしまいました。

ゴシックとルネサンス様式が混ざった大理石のファサードには多くの彫刻が施され、中に入ると印象的な青い天井と壁に描かれた絵やステンドグラスが教会の荘厳さを際立たせます。

教会の奥には四角形に配置された回廊とその周りには修道士の僧房があります。それぞれの住処の向こう側には個人用の小さな庭がありました。庭仕事も祈り同様、大地と自分と向き合う大切な時間なのです。
修道士たちは、朝、夜の礼拝、読書、畑や庭仕事、就寝という日々のルーティンを沈黙と静寂の中で過ごしているそう。

中世ヨーロッパでは薬局や医療の役割も担っていた修道院。その名残として、今でもハーブブレンドやリキュール、ハチミツなどが販売されています。

見どころしかない 薬草薬局「エルボリステリア」

私はヨーロッパの古い街を訪れると、必ず探すお店があります。それは薬局です!
「なぜ薬局?」と思うかもしれません。皆さんが想像するような日本の調剤薬局やドラッグストアとは全く異なる雰囲気を持つので、一度「薬局」の概念を取り払って読み進めてもらえたらと思います。

ヨーロッパの薬局では、西洋医学のほか、自然療法のハーブ、ホメオパシーやジェモセラピーのレメディ、サプリメントなどと幅広い選択肢がそろっています。古くからの文化と現代の自然療法が共存しているのが魅力です。なかでもハーブを中心に扱う薬局は「エルボリステリア」と呼ばれます。自然食品店のような店構えや、お土産店のような店舗など、コンセプトはさまざまですが、共通するのは「自然と調和した暮らしを提案している」こと。

今回訪れた薬局の中には、ハリーポッターの映画に出てきそうな道具が並ぶところもあれば、薬局が始まった頃のインテリアをそのまま残すステキなお店もありました。壁画のあるお店も多く、その絵は店の創立者だったり、当時の薬となっていた植物だったりと、薬局の歴史やその時の文化背景を垣間見ることができます。
品揃えも店舗ごとに異なり、どんな哲学や思想を持って運営している薬局かを知るのも楽しみのひとつ。

薬局で働くスタッフはみな薬剤師。なかには、薬学部を出て、さらに自然療法の勉強をしたという人も多数。とりわけ、ホメオパシーは人気で、「勉強するのに時間はかかるけど、効果も高いし、求める人も多いから、自分にもお客様にも役に立つ」という話を何度も聞きました。
同行した友人が「膝の痛みがあって……」と相談すると、好みや希望を丁寧にヒヤリングしながら、さまざまな商品をおすすめしてくれました。

【旅の豆知識】
自然療法で扱う「薬」のことをレメディ(Remedy)と呼びます。語源は、Re=元に戻す、medi=中庸・中心。「調和を取り戻すもの」という意味があります。レメディを扱う薬局では、たいていカウンターの後ろの棚にハーブが入った缶が並んでいて、風邪や腹痛などの症状に合わせてハーブをブレンドしてくれます。

宇宙と私たちを繋ぐ錬金術?

今回の旅では、スパジリック・レメディを作っている工房も訪ねました。
そこはアルプスの山奥。あちこちで美味しい水がこんこんと湧き、車もほとんど通らない、環境汚染とは無縁の地。澄んだ空気の美しい風景の中に畑と工房があります。

「錬金術」と聞くと、ハリー・ポッターに出てくるような魔法使いを思い浮かべる人もいるでしょう。実際は、発明家や化学者に近い存在だったのだと私は思っています。かつては“不老不死の薬”や“金”を作ることを目的にしていたと言われますが、本来は「どうすれば本当に効く薬が作れるのか」=「長生き」 を探究する実験をしていたのではないでしょうか?

こちらで行われているのは、スパジリック製法という錬金術。宇宙と大地のエネルギーを取り込みながら育てた植物を、その力を余すことなく抽出。地球や宇宙のリズムに合わせて製品を生み出しています。
と、この説明だけではいまいちわかりにくいかもしれませんが、スパジリックとは「抽出して集める」という意味。植物の成分を抽出し、浄化し、再融合させることで、体・魂・精神という三位一体の調和を人体にももたらします。
その力は目には見えませんが、香りや色、肌で触れるだけで「なんだかすごい!」と直感できるほど。植物が持つ力を火や水や空気など自然界にある力で引き出す、一見原始的とも思えるやり方ですが、自然の摂理に沿ったホリスティックな手法です。

「病を治すとは、不快な症状を消すことではなく、心と体、そして外の世界まで含めた“全体の調和”を取り戻すこと」だということ。私たちが心地よく生きるために欠かせないのは、自然と共にあることを忘れないことです。
もし都会暮らしで自然から離れ、調子を崩していると感じたら、自然の力で作られたレメディが、調和を取り戻す助けになるかもしれません。そのことを知るだけでも、心が少しワクワクします。

身近なところから、できることを少しずつ。
食べるもの、飲むもの、肌に触れるもの、それらは私たちの体を整えることもあれば、壊すこともあります。一度に全部は変えられなくても、手元になくなったものから、自分に優しいものを選んでみる。そんな小さな選択が、地球の健康を守り、次世代に美しい環境や昔からの知恵を残すことにつながっていきます。

ヨーロッパでは、こうした環境が日本よりもずっと身近にありました。私も日本で、そんな未来が訪れるよう少しずつ行動を広げていきたいと思っています。
忙しい日常の中で、植物の力や調和の知恵に触れる時間は、心をそっとゆるめてくれる。「なぜ薬局がこんなに心に響くのか?」その答えが、少し見えてきた気がします。

この記事を書いた人

自然療法ジャーナリスト/セラピスト
藤田 円

藤田 円

英国で自然療法に出合い、英国ホメオパス資格を取得。沖縄で育つ「リバイタライズヘナ」の魅力に惹かれ、商品プロデュースも行う。雑誌記事や書籍の執筆、著書に『ホメオパシーのくすり箱』がある。セミナーなどを通じて植物の力と自然と調和する暮らしの楽しさを伝えている。

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