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ウニ、カニ、ホタテ…北海道が誇る「海の幸」に危機 海の中で起こっている、大きな変化【気象予報士が解説】

  • 2025.8.28

北海道と言えば「海の幸」。ホタテやサンマ、タラ、サケなどなど…海の恵みは、全国でもトップクラスの水揚げと品質の高さを誇るものばかりで、道外の方もそれらを目当てにやってくるのも納得ですよね!

ただ、そんな海の恵みにも、温暖化の影響が出始めているのです。

HBCウェザーセンターの気象予報士・篠田勇弥が、「地球温暖化と北海道」をテーマに、北海道では何が起こっているのか?これから何が起こるのか?連載企画でお届けします。

より影響が身近な暮らしに迫ってきた今、何ができるのか…。一緒に考えてみませんか?

前回の記事では、「海の中でも進む温暖化」の影響として、台風のリスクが高まることを解説しました。この記事ではその続きとして、海の生きものへの影響についてお伝えします。

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連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
特別企画:地球温暖化と北海道の話~「日本の気候変動2025」を紐解く~ 第4回

大打撃!?地球温暖化が海の生き物に与える影響

コンブに異変?

味噌汁や煮物などの出汁に欠かせない「コンブ」。実は、日本で出荷されるおよそ9割は北海道産ということは知っていましたか?

コンブは元々、日本の中でも北海道から東北にかけての比較的冷たい海に生息する海藻ですが、近年は記録的に海水温が高く、コンブがうまく育たない場所が出てきているんです。さらに、漁師の後継者不足も重なり、コンブの生産量は年々減少。

北海道のホームページによると1989年には3万3千トンあった水揚げ量が、2024年には初めて1万トンを下回りました。

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北海道のコンブ生産量(北海道「水産統計」をもとに筆者作成) 1990年頃から右肩下がりとなっています。

北海道ではコンブの安定生産のために、コンブが成長しやすい漁場づくりや高い海水温に強い品種を育てる研究などが進められていますが、現時点でもそれだけ海の中の環境に変化が起こり始めているということが言えそうです。

秋の味覚「サケ」にも影響が…?

北海道の秋の風物詩の一つに「サケの遡上」を思い浮かべる方もいると思いますが、サケにも温暖化の影響が現れ始めているようです。

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サケもコンブと同様に、冷たい海で成長する魚です。冬に川で生まれたあと、稚魚まで成長し、春にかけて川を下り、海へと移動していきます。

海に出たサケの稚魚は1~2か月間、沿岸付近で成長し、その後、オホーツク海、ベーリング海と北の冷たい海へと旅立ちます。しかし、北海道立総合研究機構によると、温暖化の影響で沿岸付近の海水温が高くなりすぎると、稚魚が成長できる期間が短くなり、早いタイミングで冷たい海へと移動を余儀なくされることで、生き残るサケが減ってしまう可能性があるとのことです。また、秋も海水温が高くなることで、サケが川に戻ってくるタイミングもこれまでより遅い時期に変わるかもしれません。

温暖化が最悪のペースで進んでしまうと、天然のサケが貴重なものになってしまう…そんな未来もあり得る話なのです。

これらはほんの一例に過ぎません。普段、41度で入っているお風呂が44度になると、入っていられないくらい熱く感じるように、海水温の上昇は海の生き物たちにとって私たちが想像できないような変化をもたらす可能性があるのです。

海が「酸化」する!?

海の温暖化と一緒に知ってほしいのが「海洋酸性化」という言葉です。

「地球温暖化」に比べてあまり聞きなじみがない言葉ですが、実は、私たちの将来の食卓や生活にも関わる大きな問題なんです。

海の表面付近の水は弱アルカリ性(㏗8.1くらい)ですが、近年は大気中に二酸化炭素が増えるとともに、海の中に溶け込む二酸化炭素の量が増えて、海水が少しずつ酸性側に近づいてきているのです。

ちなみに、札幌市の水道水はほぼ中性の㏗7.2。二酸化炭素がたくさん溶け込んだ炭酸水は弱酸性の㏗5.0前後です。

この変化は、目に見えるものではありませんが、貝やカニ、サンゴなど、殻や骨格を持つ海の生き物たちにとっては深刻な影響があります。

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私たちになじみ深いホタテやウニ、カキ、カニなど、殻を持つ生き物は、海が酸性側に傾いてしまうと成長が遅れ、うまく育たなくなることが危惧されています。

これは北海道の海でも例外ではありません。実はこの「海洋酸性化」は冷たい海ほど進みやすいことがわかっています。

冷たい海流の影響を受けやすい北海道の海では、「海洋酸性化」の影響をいち早く受けて、漁業や私たちの暮らしにも影響が及ぶかもしれません。

まとめ

最近、「日本で漁獲量が減っている」というニュースを耳にすることがありますが、世界全体で見ると、漁獲量はむしろ増えているようです。

日本で漁獲量が減っているのは単純に温暖化の影響だけではなく、漁師の高齢化や人手不足、魚の獲りすぎなど様々な原因が重なっていると言われています。

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日本と世界の漁獲量の推移(水産庁「漁業・養殖業の国内生産の動向」「世界の漁業・養殖業生産」をもとに筆者作成)

日本ではピークとなる1980年代と比べると、およそ3分の1まで減っています。

そこで日本では、2020年に「水産資源の管理」などを盛り込んだ新しい漁業法がスタートしました。新たに漁獲量に制限を設けるなど、将来にわたって資源を守り、安定して魚を獲れるようにするための動きが進んでいます。

私たち消費者もできることがあり、たとえばMSC「海のエコラベル」がついた魚介類を選ぶことで、地球の環境に配慮した漁業を応援することができるんです。

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近くのスーパーでMSC「海のエコラベル」がついた魚を買ってみました!
水産資源や環境に配慮し、適切に管理された漁業で獲られたことを証明するマークです。

毎日の買い物や食卓で、少しだけ未来の海のことを思い出してみるだけでも、これからの地球を守っていく力になるかもしれません。

最終回となる次回は、「地球温暖化とオホーツクの流氷」について取り上げます。

北海道にやってくる流氷はただの冬の風物詩ではなく、北海道の冬の気候に影響を与え、海の恵みを運んでくる大切な役割があるんです。

まずは知ることが、地球温暖化を緩やかにするための最初の一歩となります。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
特別企画:地球温暖化と北海道の話~「日本の気候変動2025」を紐解く~

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文: HBCウェザーセンター 気象予報士 篠田勇弥
札幌生まれ札幌育ちの気象予報士、防災士、熱中症予防指導員。 気温など気象に関する記録を調べるのが得意。 趣味はドライブ。一日で数百キロ運転することもしばしば。
HBCウェザーセンターのインスタグラムでも、予報士のゆる~い日常も見られますよ。

編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の情報は記事執筆時(2025年8月)の情報に基づきます

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