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【堤真一さん&中村倫也さんインタビュー】「劇場という空間で揺れ動く、俳優同士の人間ドラマ」

  • 2025.9.1

堤真一さんと中村倫也さんが2025年秋に挑む、舞台『ライフ・イン・ザ・シアター』。「劇場」という特別な空間を舞台に、ベテラン俳優のロバートと、若手俳優のジョンとの関係性を描いた、濃密なふたり芝居です。2009年の初共演以来、親交を深めてきたというおふたりが、どんな人間ドラマを紡ぐのか、期待が膨らみます。

ふたりの関係は…言葉にできないところが素敵なんです(中村さん)

——おふたりの初共演は、2009年の舞台『バンデラスと憂鬱な珈琲』です。中村さんは堤さんのことを「役者人生における父」と表現されていますが、当時の印象は?

 堤真一さん(以下、堤) 前から上手い役者だという話は聞いていて、実際に共演したらすごくおもしろいと思って。でも、“後輩”に教えてやるぞ、なんて意識はなかったですし、「この人は大丈夫」という印象でしたね。だから、倫也のことは気にはかけるけど、あまり気は遣ってなかったかも。しょっちゅう会うわけではないけど、肩肘張らずに話せるところは、ちょっと古田(新太)との関係に近いかもしれないですね。

中村倫也さん(以下、中村) 面倒を見てくれる人、教えてくれる人、気にかけてくれる人……といろんな先輩がいて、それぞれ当てはめるなら先輩なのか、兄貴なのかと考えると、堤さんは向けてくれる目線や距離感、優しいだけじゃなく厳しいことも言ってくれるところが「親父」って感じで(笑)。具体的に何かを教わったというより、一緒にいる時間や会話を通じて、先輩が見ている目線を少しだけ、勝手に垣間見させてもらったような感覚です。

——それを言葉にするなら…?

中村 それはできないです(笑)。言葉にできないところが、素敵なんですよ。でもきっと、自分がその年齢になったときに、「こういうことだったんだ」と受け取っていたものの深さや裏側が理解できる。だから言語化は難しいですよね。

“いそうでいない”人を演じる。それが、演劇のおもしろさ(堤さん)

——『ライフ・イン・ザ・シアター』では久しぶりの共演となりますが、印象が変わったところは?

まったくないですね。あんなに可愛かったのに……とは思うけど(笑)。年を取ったのはお互いさまだから。

中村 堤さんと共演したのは『バンデラスと憂鬱な珈琲』と『スーパーサラリーマン左江内氏』だけなんですよね。どちらも福田雄一さんの「できるだけふざけてほしい」という世界でしか共演していない(笑)。そういう意味では、今回のような真面目な翻訳もので、しかも初めてのふたり芝居というのは新鮮ですね。

——『ライフ・イン・ザ・シアター』は、楽屋や本番直前の舞台裏、舞台上など、「劇場」を舞台に、世代の異なるふたりの俳優の心情や関係性の変化を描いた作品です。今は稽古が始まったばかりとのことですが、どんなところにおもしろさを感じていらっしゃいますか?

俳優同士が、リアルにああいう会話をするわけではないと思うのだけれど、この“いそうでいない”感じが、演劇のおもしろさだと思う。

中村 僕が感じているおもしろさは、染み入るものとハッとさせられるもの、そして少し滑稽に映るところと……。そういう人間の奥深さ。それこそ「大人のおしゃれ手帖」の読者の方には楽しんでもらえると思います。難しいのは、どこまでわかりやすくするか、というところ。丁寧に梱包して手渡すほど押し付けがましくなるので、どのくらいの“あっさりさ”にするのか。カンパニーとしてのさじ加減を問われる作品でもあるのかなと思います。場面転換も多いので、そこでいかに飽きさせないかの工夫も必要ですね。

——堤さんは1997年の本作の初演で、若手俳優のジョンを演じています。今回は演じる役もジョンからベテラン俳優のロバートになりますが、作品の捉え方は変わりましたか?

初演のときは、ロバートを演じた石橋蓮司さんの印象が強くて、自分がどうやったのか覚えていないんですよ。蓮司さんの立ち方や振る舞いはすごく頭に浮かんでくるんですけど。当時はやっぱり若かったし、作品の全体像を見るところまではできていなかったと思う。蓮司さんとはその後も映像で共演したけど、僕は蓮司さんのことがすごく好きなんですよね。だから初演のときも本当におもしろかった。

初めて挑戦するふたり芝居は“二人三脚”のようなイメージ(中村さん)

——おふたりが感じている、ふたり芝居の醍醐味や難しさは?

僕は何度か経験しているけど、大人数が出る舞台と比べて、ふたり芝居は「毎日違う」のを肌で感じます。同じことをやっている感覚が全然なくて、そこがおもしろい。前に千葉哲也さんとふたり芝居をやったとき、何か月もふたりきりでいたら途中で口をきかなくなるなんじゃないか…と心配していたけど、地方公演中も毎日一緒に飲んでた(笑)。今思うと、なぜそんなに話すことがあったんだろうと思うけど。今回はお互いを追い詰めていくような作品でもないし、舞台上ではプロとしてちゃんと作りあげるけど、あとは自由に楽しくできれば。

中村 僕はふたり芝居が初めてなんです。ふたり芝居って、二人三脚の紐で足を結んでいるようなものですよね。ひとりがミスしたら、もうひとりがフォローするわけで、一蓮托生な感じがあります。でも堤さんが相手だったらミスしても、「どうなるだろう?」と楽しめる気がする。のびのびやって、最悪、ふたりでお客さんに謝ればいいと思ってます(笑)

——お互いの世代もキャリアも違うからこそ、得られる刺激や発見はありますか?

あまり年齢は意識しないですね。というか、倫也ってちょっとおっさんぽいというか(笑)、僕らの世代に近い感覚があるのかも。

中村 僕も若手というより、もう38歳ですからね。

それが信じられないんだよ。

中村 僕は同世代の人とあまり話が合わないんですよ。20代前半の頃に、堤さんや古田新太さん、河原雅彦さんのような大先輩とばかり仲良くしてきたからかな。そういう意味では、演劇界の特進クラスみたいなところに入っちゃったのかも。

「米を食べるのは朝だけ」の習慣で健康に(堤さん)

——今回は地方公演も含めて、長丁場の公演となりますが、体調管理の工夫は?

以前は年に何回も風邪を引くタイプだったんですけど、ここ数年はあまり病院に行ってないんですよね。そんなに生活習慣を大きく変えたわけじゃないけど、今は米を食べるのは朝だけで、炭水化物はあまり取らない。それほど量も食べないから、結果的にそれが健康にいいのかもしれません。

中村 僕はもともと、体が丈夫なほうで。食べるものや体のケアのルーティンも決まっていて、あまり乱れることがないので、おのずとコンディションも整いますね。体が疲れても、帰ってからその部位をほぐすのが楽しみなんですよ。あとは、最近これが足りてないなと思った食材をスーパーで買って、なるべく自炊する。睡眠不足のときも、隙間時間で寝られる体質なので、ストレスもなく健やかです(笑)

PROFILE

堤真一(つつみ・しんいち)
1964年生まれ、兵庫県出身。最近の主な出演作に、舞台『カラカラ天気と五人の紳士』『A Number―数―』、映画『お前の罪を自白しろ』『室町無頼』『木の上の軍隊』など。2025年10月からはNHK連続テレビ小説『ばけばけ』に出演予定。公開待機作に映画『旅と日々』(11月7日公開)がある。

中村倫也(なかむら・ともや)
1986年生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に、舞台『OUT OF ORDER』、劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演いのうえ歌舞伎『バサラオ』、映画『宇宙人のあいつ』、ドラマ『ハヤブサ消防団』『Shrink-精神科医ヨワイ』など。現在、W主演ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』が放送中。声の出演をする映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』が2025年12月5日に公開予定。

[舞台]『ライフ・イン・ザ・シアター』

舞台上のみならず、楽屋や舞台袖、廊下など、さまざまな劇場空間で、堤真一さん演じるベテラン俳優・ロバートと、中村倫也さん演じる若手俳優・ジョンが対峙。時間の経過とともに変化していくふたりの男の心理的なパワーバランスを、ときにユーモラスに、ときに残酷なほど辛辣なタッチで描いていく。

作:デヴィッド・マメット
翻訳:小田島恒志
演出:水田伸生
出演:堤真一 中村倫也
日程:
9月5日(金)~9月23日(火・祝)東京・IMM THEATER
9月27日(土)・9月28日(日)京都・京都芸術劇場 春秋座
10月4日(土)~10月6日(月)愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
10月9日(木)~10月14日(火)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
10月17日(金)・10月18日(土)愛媛・愛媛県県民文化会館 サブホール
10月25日(土)~10月26日(日)宮城・多賀城市民会館 大ホール(多賀城市文化センター内)

中村さん衣装:Tシャツ¥12,650、ジャケット¥51,700、パンツ¥29,700/すべてラッド ミュージシャン(ラッド ミュージシャン 原宿03⁻3470⁻6760)、その他/スタイリスト私物
 
撮影/天日恵美子 スタイリング/中川原寛[CaNN](堤さん)、戸倉祥仁 [holy.](中村さん) ヘアメイク/奥山信次[B.sun](堤さん)、Emiy(中村さん) 取材・文/工藤花衣

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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