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「いまだからこそ、はるな愛」Netflix映画『This is I』に流れる、愛のかたち。

  • 2026.3.4

映画『This is I』(Netflix)が配信されると聞いたときに、こう思った。

(なぜ、いま、はるな愛......?)

『This is I』は"エアあやや"のモノマネで、2000年代初頭に大ブレイクを果たした、はるな愛の半生をモチーフにした物語だ。トランスジェンダーのケンジ(のちにアイ/望月春希)が形成外科医の和田耕治(斎藤工)と出会い、女性の身体を手に入れる。まだ日本にトランスフォビアの意識が高かった当時、ケンジがアイとして葛藤や闘いを重ねながら生きていく様子が凝縮されている。前述通り、どこか狐に摘まれたような気持ちで作品を鑑賞すると、ラストシーンでは感動して泣いている自分がいた。さまざまな感情を動かされた、130分間を振り返りたい。

昭和も令和も変わらない偏見とパワハラと

まず学生時代のシーンに眉をひそめる。「アイドルになりたい!」と松田聖子の曲を歌い、男子生徒に恋するケンジを、校庭の隅で同級生の男子が執拗にいじめていた。殴られても蹴られても、泣き叫ぶしかできない。こういったシーンはいくつかの作品で見たけれど、拷問だ。ふと、最近SNSで頻繁に回ってきた中学生の動画で、同じようなシーンがあったと思い出す。同級生を殴っていた学生は警察に通報されたらしいが、ケンジは親にも真実を打ち明けられず、ただひたすら耐えるしかなかった。いじめとは昭和も令和も変わらない。観ているこちらも悔しかった。

続けて思い出したのは、はるな愛がブレイクした当時、各テレビ局で多く放送されていた、"オネエ"や"オカマ"を扱ったバラエティー番組。視聴率も良かったのだろうけど、どこか釈然としない気持ちだったのは私だけだろうか。彼らの"普通"を笑いとして表現するのは、いかがなものかとずっとモヤモヤしていた。同時期に、性同一性障害のタレントの告白本を編集していたせいだ。「自分が本当のことを話したら、新宿二丁目みたいなところに連れていかれるかもしれない。だから怖くて告白できなかった」と言っていた著者の言葉は、いまでも強烈に覚えている。

カラオケであややが歌いたくなる!

それでも常識を覆さなければ、前に進めなかった彼ら。ケンジも進み始める。両親には秘密で働き始めたショーパブで「アイ」と名付けられ、性別適合手術ののち、ひとりの女性となるのだ。手術前、和田医師はアイにこう言っていた。

「君は神様のちょっとした手違いで、男の身体に生まれてきた。それを元に戻すよ」

ここでダンサーのタクヤ(吉村界人)と出会い恋に落ちるが、いつも空虚な気持ちと隣り合わせ。パズルの最後のピースがはまらない気持ちに似ている。結局、恋は成就せず、アイは上京して本格的にタレントを目指す。その一方、バッシングを受けながらも性同一性障害者を救いたいと、性転換手術を続ける和田医師。そしてどこまでも味方でいると娘に誓う、母・初恵(木村多江)。いろいろな愛が、アイを支える。そしてここから"エアあやや"を武器にして、スターダムにのしがっていくアイの快進撃が始まる。

そんなアイを見ながら、自己観照。フリーランスで働いていると「とにかく動かなければ」と日々、内紛している。何が正解なのかも確認する間もないまま、時間が過ぎているのかもしれない。時に「止まって考えなくては」と焦る。いや、そんなに焦らなくても、自分らしく昨日を打破していけばいい......なんだ、私もアイと同じじゃないかと納得。

どんなに文化が進化しても止まない、変わらない、いじめの存在。対するように情報化社会の中で加速して求められていく、行動力。これらに対する警鐘が『This is I』。いまだからこそ、はるな愛の生き方を映像化する意味があったのだ。現代の教育システムでは無理かもしれないけれど、中高生の授業で見せる価値があると私は思った。

余談で。劇中には、アイがバイトする三軒茶屋のスナックが登場するが、実はこの店に時々遊びに行っていた。たまにはるな愛も店に顔を出していた。その店の内装が「おお、あの店じゃん......!」と思うほど、忠実に再現されていたのには驚いた。いまもあの店が実在するかは不明だけど、作品にすっかり感化されたので、今度スナックに行ったら松浦亜弥を歌うといまから決めている。

Netflix映画『This is I』2026年2月10日(火)より世界独占配信出演:望月春希、木村多江、千原せいじ、中村 中、吉村界人、MEGUMI、中村獅童/斎藤工監督:松本優作企画:鈴木おさむ特別協力:はるな愛https://www.netflix.com/thisisi

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