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「修学旅行も春に変更された」マラソン大会も紅葉祭りも各地でイベント中止…“異例の事態”なぜ?

  • 2025.10.20
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

紅葉が美しく色づき、涼しい気候の中でスポーツや野外イベントを楽しめる秋。多くの地域で、マラソン大会や駅伝、ライトアップイベントなどが開催され、地元住民や観光客の楽しみとなっています。

しかし今年、こうした地域の恒例行事が次々と中止や延期に追い込まれる事態が起きています。その理由は「クマの出没」。

野生のクマ類による目撃情報や人身被害が増加する中、参加者やスタッフの安全確保を最優先し、イベントを断念せざるを得ないケースが相次いでいるのです。

楽しみにしていた地域イベントが、クマを理由に立ち消えになる。そんな状況が今、全国各地で起きています。

相次ぐイベント中止・延期

実際に、クマの出没を理由に中止となったイベントの事例を見てみましょう。

富山県入善町では、今年10月26日に開催を予定していた「第53回入善町駅伝競走大会」が中止となりました。駅伝コース周辺にクマの目撃情報が相次いだことから、選手や役員の安全を最優先に考えた結果です。

長野県飯田市の遠山郷でも、10月19日に予定されていた「第16回チャレンジマラニックin遠山郷2025」が中止に。大会コース内で継続的なクマ目撃情報が寄せられていたため、参加者及びスタッフ等の安全を最優先した判断となりました。

北海道北斗市では、秋の風物詩として親しまれてきた「北斗紅葉回廊」が中止となりました。会場である八郎沼公園周辺でヒグマの痕跡が確認されており、ライトアップの時間帯が夜行性のヒグマの活動時間と重なることから、来場者および会場内スタッフの安全面を考慮しての決断です。

2023年はクマの出没した痕跡が発見されたとして、北海道のいわみざわ公園の一部が閉鎖になり、2024年は報道によると相次ぐクマの目撃情報を受けて、秋田市勝平地区の「鹿嶋祭」が中止となる事例もありました。

深刻化するクマ被害の実態

こうしたイベント中止の背景には、クマによる人身被害の増加という深刻な現実があります。

環境省が公表している本年度のクマによる人身被害件数(速報値、10月6日更新)によると、被害人数は108名、死者は5名に上っています。昨年1年間の被害人数85名、死者3名と比較しても、すでに上回るペースで被害が発生していることが分かります。

また、環境省はツキノワグマについて「令和7年度の4~7月の出没件数は過去5年間で最多となった」と発表しています。

クマの出没は山間部だけの問題ではなく、住宅地や市街地での目撃情報も珍しくなくなっています。こうした状況が、地域イベントの開催判断に大きな影響を与えているのです。

SNSに寄せられる不安の声

クマ出没の影響は、SNS上でもさまざまな形で語られています。

「山だけじゃなくて市街地でも安心できない」「今年は山登りは控えた」という声や、「一人では山に登らないようにします」といった声や、「子どもの修学旅行も春に前倒しに変更された」というコメントなど、教育現場にも影響が及んでいることがうかがえます。

また、「東北でのイベントやフェスがどんどん減っていくのではと心配」といった地域への影響を懸念する意見も見られます。

クマの出没が、人々の日常生活や地域のイベント、子どもたちの活動にまで影響を与えている状況が浮き彫りになっています。

もしクマに遭遇してしまったら

万が一、クマに遭遇してしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。環境省が公開している対処法をもとに、基本的な対応方法をご紹介します。

遠くにクマがいる場合

落ち着いて静かにその場から立ち去りましょう。急に大声をあげたり、急な動きをしたりするとクマが驚き、どのような行動に出るかわからないため、注意が必要です。

近くにクマがいる場合

クマは逃走する対象を追いかける傾向があるので、背中を見せて逃げると追いかけられる可能性があります。クマを見ながらゆっくり後退する、静かに語りかけながら後退するなど、落ち着いて距離をとることが重要です。慌てて走って逃げてはいけません。

至近距離で遭遇した場合

両腕で顔面や頭部を覆い、直ちにうつ伏せになるなどしてて重大な障害や致命的ダメージを最小限にとどめることが重要です。

クマ撃退スプレー(唐辛子成分のスプレー)を携行している場合は、クマに向かって噴射することで攻撃を回避できる可能性が高くなります。クマの目や鼻・のどの粘膜にスプレーが当たるよう、顔に向かって噴射することが重要です。射程距離は5メートル程度と短いため、十分に引き付けてから噴射する必要があります。

親子グマに遭遇した場合

母グマは子グマを守ろうと攻撃的になるため、特に注意が必要です。子グマを見かけたら、すぐ近くに母グマがいる可能性が高いため、速やかにその場から離れましょう。

参考:クマ類に遭遇した際にとるべき行動(環境省)

地域の「楽しみ」を守るために

クマ被害の拡大が、地域の楽しみや集まり、イベントを直撃しているという現実があります。長年親しまれてきた恒例行事が中止に追い込まれることは、地域のコミュニティにとっても大きな損失ですが、何より大切なのは住民の安全です。

イベントに参加するとき、山間地域を訪れるときには、事前に自治体の案内や最新のクマ出没情報を必ず確認しましょう。また、万が一に備えてクマ撃退スプレーを携行する、複数人で行動するなどの対策も重要です。

クマによる被害は決して他人事ではありません。一人ひとりが注意を払い、適切な対応を心がけることが、自分自身と地域の安全を守ることにつながります。


参考:
第53回入善町駅伝競走大会(入善町)
チャレンジマラニックin遠山郷2025中止のお知らせ(遠山郷)
10/7更新【令和7年度「北斗紅葉回廊」開催中止のお知らせ】(北斗市観光ガイド)
【クマ出没】公園一部閉鎖のお知らせ(いわみざわ公園)
連絡会議の概要及び会議資料(環境省)


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