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ハリウッドが恋したアナ・デ・アルマスの出演作をプレイバック──『ブレードランナー 2049』から『007』まで

  • 2025.8.5

『ノック、ノック』(2015)

KNOCK KNOCK - Ana de Armas, Lorenza Izzo, Keanu Reeves, 2014.

振り切ったエロティックスリーラーでキアヌ・リーブスと出会う

ハリウッドデビュー作となったのが、アナ・デ・アルマスが27歳のときに出演した『ノック・ノック』。キアヌ・リーブス演じる献身的な夫であり父親のエヴァンが、ある大雨の夜、ひとりで留守を守っていると、ずぶ濡れの美女ふたりが現れる。思わず家に招き入れてしまったことから、破滅へのカウントダウンが始まる──。

家に入り込んだ美女のひとりを演じたのが、当時はまだ無名だったアナ・デ・アルマス。迷子を装って男の家に入り込み、次第にその人生を狂わせていく“小悪魔”ぶりは、強烈な印象を残す。作品自体は、1977年のカルト映画『メイク・アップ』のB級リメイクで、お世辞にも良作とは言いがたい。しかし、金髪ヘアのアルマスの潔い脱ぎっぷりと、“愛らしいのにとにかくムカつく”という絶妙な演技を見せる姿は、一見の価値あり。同様に、追い詰められていくキアヌの“ブチ切れ演技”も見どころだ。この共演が、のちに『バレリーナ:The World of John Wick』へとつながる縁となったという意味でも、見逃せない一本である。

『ウォー・ドッグス』(2016)

WAR DOGS - Ana De Armas, 2016.

音で英語を完コピして挑んだクライムドラマ

『ウォー・ドッグス』は、ジョナ・ヒルマイルズ・テラーが演じる若き武器商人たちが、成功から転落までを駆け抜ける実話ベースのクライムドラマ。今作でアナ・デ・アルマスが演じるのは、マイルズ・テラー扮するデビッド・パッカウズの妻イジーだ。ダークなユーモアとマシンガンのようなテンポで進行する物語のなかで、彼女は静かな強さを放つ存在として物語に芯を与えている。

本作は『ノック・ノック』とほぼ同時期に出演が決まった作品だが、当時アメリカに渡ったばかりだったデ・アルマスは、英語がまったく話せなかったという。『The Hollywood Reporter』のインタビューでは、セリフを一語一句フォニックス(発音記号)で覚えて演じたと明かしている。しかしスクリーン上の彼女は、そんな苦労を微塵も感じさせないほどナチュラルで、その演技力にはただ脱帽するばかり。荒唐無稽にも思えるドラマのなかで、静かに現実を映し出すような存在感を放っている。

『ブレードランナー 2049』(2017)

BLADE RUNNER 2049 - Ryan Gosling, Ana de Armas, 2017.

心を揺さぶる、映画史上最高のAI演技を披露

彼女が29歳のときに公開されたのが、SF超大作『ブレードランナー 2049』。前作から30年後の世界を舞台に、社会の秩序を揺るがす秘密を発見してしまったブレードランナー、K(ライアン・ゴズリング)の運命が描かれる。アナ・デ・アルマスは、そんなKのホログラムAIの恋人・ジョイを演じている。プログラムによって設計された存在でありながら、荒廃した世界のなかで驚くほど人間的な温かみを感じさせる、「プログラム」と「真実の愛」の狭間に存在するキャラクターだ。その絶妙なバランスは、ひとえにふたりの演技力の賜物だろう。

1950年代のアメリカを思わせるクラシックな装いから、チャイナドレス、フューチャリスティックなスタイルまで、彼女の衣装の七変化も見どころのひとつ。米『LRM』の取材では「12回ほど衣装替えをしました。うち2着はカットされてしまったけれど」と語っている。この作品は、彼女を世界的な注目の的へと押し上げた一作でもある。

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)

KNIVES OUT - Ana de Armas, 2019.

俳優として不動の地位を獲得

ダニエル・クレイグが主演を務め、クリス・エヴァンス、トニ・コレット、ジェイミー・リー・カーティスら豪華キャストが脇を固める。スタイリッシュな中にユーモアが散りばめられた極上のミステリーで事実上の主演を務めているのが、アナ・デ・アルマスだ。彼女が演じるのは、85歳の誕生日パーティの翌朝に死亡しているのが発見された著名なミステリー作家の、心優しい看護師マルタ・カブレラ。嘘をつくと嘔吐してしまうという、特異な体質の持ち主でもある。

裕福で強欲な一家の崩壊劇に巻き込まれていくなか、多くを語らずとも、繊細な所作や表情から不安や戸惑いがひしひしと伝わり、観る者を味方につけてしまう。今作で彼女はゴールデン・グローブ賞の主演女優賞にノミネートされ、ハリウッドスターとしての地位を確固たるものにした。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)

NO TIME TO DIE - Daniel Craig, Ana de Armas, 2021.

わずか10分で圧倒的存在感を放つ

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』に続き、ダニエル・クレイグと2度目の共演となったのが、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。クレイグがジェームズ・ボンド役を演じる最後の作品となった本作で、ボンドウーマンに抜擢されたアナ・デ・アルマスの出番はわずか10分弱。それでも誰もが忘れられないほど強烈な印象を残す。

舞台はボンドが任務で訪れる都市のひとつ、キューバ・ハバナ。彼とともに行動するのが、CIAの新人エージェント、パロマだ。胸もとと背中がざっくりと開いた、オーストラリア人デザイナー、マイケル・ロ・ソルドによる大胆なミッドナイトブルーのキャミソールドレスに身を包み、銃撃戦や肉弾戦といった緩急自在のアクションを軽やかにこなす姿は、まさにタフ&クール。別れ際、ボンドから「いい腕だ」と称賛されるパロマだが、実際には「いい芝居」なのである。出演時間の長さではなく、その瞬間に何を残すか。彼女の演技が、それを雄弁に物語っている。

『底知れぬ愛の闇』(2022)

DEEP WATER - Ben Affleck, Ana de Armas, 2022.

スリラー作品でベン・アフレックと恋に落ちる

ベン・アフレックとの交際へと発展するきっかけとなったのが、本作。原作はパトリシア・ハイスミス、監督は『ナインハーフ』(1985)、『危険な情事』(1988)、『運命の女』(2003)などで知られる、エロティックスリラーの名匠エイドリアン・ラインだ。アナ・デ・アルマスは、感情と性に奔放な妻を、ベン・アフレックは、そんな妻を表向きは理解しているように振る舞いながらも、内には激しい怒りを秘める夫を演じている。

ただし、アルマスの美貌や官能的な描写に頼りすぎた一面的なキャスティングと脚本は、彼女の本来の魅力と才能を十分に引き出しているとは言いがたい。また、アフレックの演技も、いつものように抑揚に欠ける表情とトーンが続き、作品全体の単調さに拍車をかけている。作品よりも恋愛の方が取り沙汰された、いかにもハリウッドらしい一作とも言える。ちなみに、ふたりは公開前年にすでに破局している。

『ブロンド』(2022)

BLONDE - Ana de Armas, as Marilyn Monroe, 2022.

アカデミー賞に初ノミネート

アナ・デ・アルマスがアカデミー賞主演女優賞に初ノミネートされた記念すべき作品でありながら、その内容には賛否が分かれたのが『ブロンド』だ。彼女が本作で演じたのは、ハリウッドの象徴とも言えるマリリン・モンロー。伝記映画の体裁をとってはいるものの、実際の出来事に基づいているわけではなく、ジョイス・キャロル・オーツによる小説を原作としたフィクションである。

ストーリーは、世界的スターとしての成功や内面の葛藤に迫るというより、幼少期のトラウマを抱え、ハリウッドの権力者たちに翻弄される「不幸で哀れな女性」としての姿に焦点が当てられており、その描写には時代錯誤との批判もあった。さらに、必要以上にヌードシーンが挿入されていることから、アナ・デ・アルマスが過度に搾取されているように映る点も否めない。とはいえ、アルマスはこの役に全身全霊で挑み、モンローの幻想的な魅力と、ノーマ・ジーンとしての深い悲しみの両面を見事に体現している。物語の構成や演出に対する評価はさておき、剥き出しの感情と大胆さを伴った彼女の演技は圧倒的であり、アカデミー賞ノミネートという評価にも大いに頷ける。

Text: Rieko Shibazaki

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