1. トップ
  2. 恋愛
  3. ジョディ・フォスター63歳、ハリウッドからフランスへ。「エイジングとは、後世に知恵を授けること」

ジョディ・フォスター63歳、ハリウッドからフランスへ。「エイジングとは、後世に知恵を授けること」

  • 2025.11.19

「これまでフランス語で映画に出演したことはありましたが、こんなに多くのセリフを使ったのはこの作品が初めてでした。ですが、それが本作への出演の決め手になったのは確かです。私はずっと、フランス人のチームでフランスの日常に基づいた本物のフランス映画を作りたかった。ハリウッドの大掛かりな資本の入らない、本物のフランス映画を。そのチャンスが、この作品でした」

2025年、『Variety』誌にこう語ったジョディ・フォスターは、1962年11月19日、アメリカ・LAに生まれた。今月63歳を迎える彼女の新作「Vie Privée」が11月26日にフランスで公開されることもあり、今あらめて彼女に注目が集まっている。

本格的なフランス映画出演に挑む

著名な精神科医リリアン・シュタイナーは、患者の一人を亡くし深い悲しみに暮れるが、それが殺人だったことを確信し独自に捜査に乗り出す──「The Silence of the Lambs 」(1991)、「The Accused」(1988)等々社会派問題作やサスペンススリラーに多く出演してきた彼女が本作「Vie Privée」で挑むのは、全編フランス語での演技だ。監督はフランス・パリ出身のレベッカ・ズロトヴスキ、共演にダニエル・オートゥイユ、ヴィルジニー・エフィラらフランスを代表する名優を迎えた”本格的なフランス映画”である本作への主演は、ジョディの映画人生における新章の幕開けでもある。

そんな彼女は、18歳のとき『Interview』誌上でのアンディ・ウォーホルとの対談でリセ・フランセ・ドゥ・ロサンゼルスに学び、フランス語に非常に堪能であることを明かしている。そのため、これまでもたびたびフランス映画に出演したり、英語圏の映画のフランス語版の吹き替えも行ってきた彼女のフランス語に、ズロトヴスキ監督が「むしろフランスの俳優ではない」ことに違和感を覚えるほどだったという。

昨今は語学力を武器に多言語エンターテインメントに進出し、ボーダーレスな活動を展開する若手俳優らが増える中、63歳でフランス映画界に本格的に進出したジョディは、どちらかと言えば遅咲きかもしれない。だが一方で、本作で実際にフランス映画界に触れた彼女は、ハリウッドとの明確な違いについてこんなふうに語っている。

「私はアメリカの映画業界で育ちましたが、脚本スーパーバイザーやメイクアップアーティスト以外、現場で女性スタッフを見たことはありませんでした。ましてや女性の技術者やプロデューサー、スタジオ責任者、さらに監督などの”リーダー”が出現し始めたのは、私のキャリアが半ばを過ぎた頃だったのです。ですがよりずっと以前からフランスにはすでに世界初の女性映画監督アリス・ギイ=ブラシェ(1873~1968)やアニエス・ヴァルダ(1928~2019)らがいた。本当に素晴らしいことです」

エイジングとは、持てる知恵の継承

1988年8月24日にニューヨーク市のクラブMKで開催されたアンディ・ウォーホルの新刊『Andy Warhol's Party Book』の出版記念パーティーに出席したジョディ・フォスター。
Ron Galella Archive - File Photos 20101988年8月24日にニューヨーク市のクラブMKで開催されたアンディ・ウォーホルの新刊『Andy Warhol's Party Book』の出版記念パーティーに出席したジョディ・フォスター。

現在ではハリウッドで多くの女性映画監督が活躍する一方、2022年のイタリアのジョルジャ・メローニ首相やメキシコのクラウディア・シェインバウム大統領(2024)、そして直近の日本の高市首相の誕生など、世界の各方面で女性を取り巻く環境が大きな転換期を迎えている昨今。そんな中、人生の後半に差し掛かったタイミングで新たな挑戦に乗り出した動機について、彼女はこう明かす。

「それは多分、”年齢”だと思います。実は30歳になった日と60歳になった日に、自分の中で大きな変化を感じました。そして60歳で感じた変化が、一番ポジティブで大きなものだったのです。反対に一番苦しかったのが50代で、いろいろ葛藤も多く苦難の連続でした。40代後半や50代になると、誰でも体型や顔立ちが変わります。もう20代や30代の時と同じではないという現実を受け止めきれず、『まだいける』と焦っていたのかもしれません。ですが60歳になった時、突然『このままでいいんだ』と自分を受け入れるようになったのです。そして同時に、仕事に対してもこれまでと違うアプローチで取り組んでみようと思うようになりました」

さらに、自身の中で起きたもう一つの大きな変化について続ける彼女は、これまで以上に他の人──特に若手をサポートすることを心から楽しむようになった、とも。

「私は、もうこれまで十分過ぎるほど自分のために時間を費やしてきました。だから今は、”彼ら”のために時間を使いたいと思うようになったのです。それに、彼らに自分の持てる知恵の全てを授けることは、彼らと同じ時間を共有すること。いつまでもスタンドプレーで頑張るより、素晴らしいことを成し遂げるチームの一員でいる方がずっと満足感がある──そういうスタンスが、今はとても心地良いのです」

何事にも自分の意見を持ち、物事を俯瞰で捉え、細分化して考えながら未来を見据えるタイプだと自身を分析するジョディ。一方で、整理整頓が得意で集中力があるものの、少々強迫性障害気味だから「自分はどちらかというと俳優より監督向き」かもしれないと続ける彼女は、現在共感できる役を探している最中だという。

「もし私のキャリアで一つだけ後悔があるとすれば、監督として多くの映画を作れなかったことかもしれません。手がけた作品はどれも大ヒット作ではありませんでしたが、私にとってとても意味のある大切な作品ばかりです。

今後は、リリー=ローズ・デップなど、もっとフランス語圏の俳優と共演したり、作品に出演したいと思っていますが、一番やりたいのは長年の知り合いでもあるクリスティン・スコット・トーマスとの姉妹役です。私たちはフランス語が得意だから、実現は可能かもしれません。今彼女は監督業もしているから、一緒にフランス語の映画作らない?と声をかけてみても良いかもしれませんね(笑)」

Text: Masami Yokoyama

参考文献

READ MORE

元記事で読む
の記事をもっとみる