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“ただの不倫ドラマ”では終わらない話題作 予想外の“サスペンス展開”に引き込まれる視聴者続出の『完全不倫』

  • 2025.8.19
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 (C)NTV

『完全不倫―隠す美学、暴く覚悟―』は、ただの不倫劇で終わらせるには惜しい異色作だ。仁村紗和演じる妻・千春は「夫を愛するために不倫する」という歪んだ愛の形を貫き、前田公輝演じる夫・拓哉は、その事実を知りながらやり直す選択をする。夫婦の愛と裏切りが表裏一体で描かれる構図に加え、予測不能の展開が視聴者を引き込んできた。放送時間は深夜0時台ながら、SNSでは毎話終了後に感想が飛び交うほどの熱狂を呼んでいる。

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

夫婦の罠と決断、そして忍び寄る影

物語が大きく動いたのは第5話。千春の不倫相手が書店バイトの佐々木(浅野竣哉)だと明らかになり、拓哉はジムへ行くふりをして千春を罠にかける。ついにホテルでの密会を見破られてしまった千春。夫婦は、いわば互いを欺く関係に陥っていたということだ。

その後の6話では、拓哉と千春の関係を案じた友人たちがバーベキューを計画。なんとか夫婦の仲を取り持とうとするが、結果的に拓哉は熟考の末、千春との離婚を決意することになる。

続く第7話では、拓哉が離婚届を記入し、夫婦関係の崩壊が示唆される。しかしバーベキューの場で見せた千春の振る舞いが気になった拓哉の友人たちには、「千春はまだ夫を愛している」ように映り、拓哉の心はふたたび揺らぐことに。

そんな彼の迷いを知ってか知らずか、千春のもとには不気味な脅迫メッセージが届き始める。拓哉が目にした「吉岡千春をもらう」という一文に、ただの不倫劇が一転してサスペンスへと舵を切ったように思えた。拓哉が目撃したゴミ置き場の不審者の正体、そして複数の不倫相手の存在。夫婦の関係を超えた“外部からの危機”が、ふたりをさらに追い詰めていく。

揺れる愛情と迫るストーカーの影

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第7話では、離婚を決意したはずの拓哉が、なおも千春を守ろうとする姿が描かれる。浮気を繰り返され、離婚届まで書いた男が、それでも妻の危機に「警察へ行こう」と即答する。この行動は、視聴者に「まだ千春を愛しているのでは?」という問いを突きつけるだろう。

裏切られたはずの夫が見せる揺るぎない優しさは、愛情の残滓か、それとも単なる責任感か。物語の核心に迫る心理戦が期待される。

また、千春を脅かすストーカーの正体も重要なポイントだ。

拓哉の友人たちが、離婚を思いとどまらせるために仕組んだ計画かのように思われたストーカー騒動だが、真犯人は別にいたのだ。これまでの“夫婦の騙し合い”に、“外部の敵”という新たな要素が加わることで、サスペンス性は一気に高まる。この騒動を機に、拓哉は離婚を思いとどまって千春との関係をやり直そうと心を決めるが、それに対する千春の行動もまた視聴者を驚かせた。

『完全不倫』の真骨頂は“予測不能な人間模様”

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『完全不倫』で、不穏とも言える存在感を示しているのが、千春の浮気相手の一人であり書店アルバイトの佐々木隆太を演じる浅野竣哉だ。

千春の不倫相手「S」の正体であることがわかった佐々木。千春の機転によってホテルラウンジでの密会を切り抜けるものの、その危うさ自体がふたりの関係を一層スリリングに見せている。

佐々木を演じる浅野竣哉は、学園ドラマで等身大の学生役をリアルに演じてきた新進気鋭の俳優だ。代表作であるドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』では、一見達観した生徒の裏に潜む葛藤を繊細に表現し、視聴者の共感を呼んだ。自然体で柔らかな佇まいを持ちながら、心の揺れや危うさを巧みに演じ分けられるのが彼の魅力である。SNS上でも「何もないわけない」「Sの正体意外だった」と話題を呼んでいる。

本作では、千春を翻弄する“若さと無垢さ”を体現しながら、その裏に潜む危険な予感を漂わせており、不倫劇にリアリティと深みを与えている。浅野の存在が『完全不倫』に緊張感をもたらし、物語の行方をより不可測にしている。

『完全不倫』がほかの不倫ドラマと一線を画しているのは、不倫そのものを「愛の延長」として描いている点にある。千春は夫を愛しているがゆえ、そして加速した愛が夫を傷つけてしまわないようにと、別の男性に走る逆説を体現。拓哉は裏切られながらも、なお妻を守ろうとする。そこにストーカーという外的要因が加わって、物語は「夫婦再生か、完全崩壊か」という二択に迫られていく。

この不協和音のような展開が、視聴者に“次の一手”を予測させず、深夜枠ながら高い没入感を生み出しているのだ。第7話は、夫婦の愛憎劇とサスペンスが交錯する重要な回だった。またあらためて夫婦関係をやり直そう、と心を決めた瞬間に、かつての浮気相手たちに「また会いたい」とメッセージを送る千春の深層心理も含め、ここを乗り越えた先にタイトル「完全不倫」の意味がより鮮明になるのではないだろうか。


日本テレビ系 ドラマDEEP『完全不倫―隠す美学、暴く覚悟―』毎週火曜24時24分~

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_