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朝ドラに“6年ぶりの登場”「もう出ないのかな」「他の作品見たくなる」役柄によって“異なる印象を与える”女優の魅力

  • 2025.8.19
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『あんぱん』第14週(C)NHK

朝ドラ『あんぱん』で、小田琴子を演じる鳴海唯。おしとやかな雰囲気の奥に、酒席では饒舌になるという二面性を持つ琴子は、戦後初の女性記者として高知新報で奮闘する存在だ。鳴海は、声のトーンや視線の変化で内面を巧みに表現し、人物像にリアルな奥行きを与えている。『Eye Love You』での韓国語を操る同僚役や、主演映画『偽りのないhappy end』など、多彩な役柄を自然体で演じ分けてきた鳴海。役への真摯な向き合い方と柔軟な表現力は、『あんぱん』でも遺憾なく発揮され、視聴者の心を掴んでいる。

おしとやかに見えて饒舌『あんぱん』小田琴子の二面性

朝ドラ『あんぱん』に登場する小田琴子は、戦後初の女性記者として高知新報に勤める、新しい時代の象徴のような存在だ。主人公・のぶ(今田美桜)の同僚だった女性で、柔らかな物腰の奥に芯の強さを秘めている。

鳴海唯が演じる琴子は、一見おしとやかで物静かな女性に映るが、お酒を口にすると驚くほど饒舌になり、本音や感情をのぞかせる。その二面性が魅力だ。

このギャップを自然に演じる鳴海は、視聴者に「ただのおしとやかさ」でも「ただの明るさ」でもない、人間らしい奥行きを感じさせる。シーンによっては声のトーンや目線の強弱を巧みに変え、琴子の内面をじわりと浮かび上がらせている。SNS上では未だに「琴子さんもう出ないのかな」「他の作品見たくなる」という声が多い。

鳴海唯が描く「人間味あるキャラクター」

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『あんぱん』第14週(C)NHK

鳴海の演技の魅力は、役柄に合わせた微妙な感情の機微を丁寧に描けることだ。『あんぱん』の琴子もそうだが、彼女が演じる人物は往々にして「見た目の印象と本質が異なる」。そのズレを、わざとらしさなく表現できるのが鳴海唯という女優の強みだ。

酒席で饒舌になる場面では、声量やテンポ、笑顔の広がり方まで変化させ、琴子という人物が抱える「表と裏」を鮮やかに浮かび上がらせる。こうした演技は、単なる脚本上の性格付けを超え、キャラクターを生きた人間へと昇華している。

鳴海唯は、これまでも幅広い役柄を演じ分けてきた。

『Eye Love You』では韓国語を操る同僚役として、言葉の壁を越えて心を通わせる演技が話題に。映画『偽りのないhappy end』では、失踪した妹を探すなかで罪悪感に苛まれる女性を繊細に演じ、観客の胸を締めつけた。『熱のあとに』では愛という曖昧な感情の輪郭を探り、ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』では日常の重さを背負う女性を等身大に描いた。

特筆すべきは、その適応力だ。人気Instagramアカウント『ICHIRIN』では、朝ドラとはまるで違う洗練されたスタイリングと凛とした表情で登場し、そのギャップに多くのファンが驚いた。役柄によってまったく異なる印象を与えられるのは、女優としての引き出しの多さゆえだろう。

女優としての歩みと、今後の期待

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『あんぱん』第14週(C)NHK

鳴海唯の女優人生は、意外なきっかけから始まった。映画『ちはやふる』へのエキストラ出演を機に女優の道を志し、後にドラマ『ちはやふる-めぐり-』で強豪校の顧問役としてふたたび出演を果たす。この経験は、夢を現実に変えた象徴的なエピソードだ。

2019年の朝ドラ『なつぞら』でデビューし、その後も映画やドラマで存在感を発揮。2020年代に入ってからは主演作『偽りのないhappy end』をはじめ、多くの作品で重要な役どころを任されるようになった。

役に対して常に真摯に向き合っているであろう姿勢は、視聴者にとっての信頼感につながっている。『あんぱん』での小田琴子役は、鳴海にとって6年ぶりの朝ドラ出演だが、その存在感は以前にも増して強い。

『あんぱん』での鳴海唯は、二面性を持つキャラクターを自然体で演じることで、物語の奥行きを広げている。おしとやかな顔と饒舌な一面、その間を行き来する表現は、彼女の持つ柔軟性と洞察力の賜物だ。

これまでの作品で培ってきた演技の幅、そして役柄に誠実に向き合う姿勢。そのすべてが、琴子というキャラクターに注ぎ込まれている。今後も鳴海唯は、ドラマや映画の枠を越えて、観客の心を揺さぶる女優であり続けるだろう。


連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_