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幕開けは“衝撃的な号泣飛び込みシーン” 主演・木村文乃の“迫真の演技”が刺さると話題【木曜ドラマ】

  • 2025.8.19

Snow Manのラウールがホスト役を演じていることでも話題の木曜ドラマ『愛の、がっこう。』。真面目な性格ゆえに、いちずに愛を信じすぎてしまう堅物教師の小川愛実(木村文乃)と、家庭環境のせいで満足に学校に通えず文字の読み書きができないホストのカヲル(ラウール)。二人の許されない恋を描く作品として評判の一作だ。

愛し方を知らず、自己肯定感の低い教師

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木村文乃(C)SANKEI

第1話の冒頭、木村演じる愛実が泣き叫びながら海に飛び込むという衝撃的なシーンから始まる。そして、物語はそこから飛んでミッション系の女子高で教師をしている愛実の姿を映し出す。しかし、愛実は生徒からの信頼を得られておらず、失意の日々をおくっている。

愛実はかつて恋人に裏切られ、ストーカーのようになってしまい、仕事を失った。そんな自分に対して自己肯定感が低く、人を愛する方法もわからないでいる。父親に押し付けられた婚約者の川原洋二がいるが、そこに愛はない。しかし、自分のような人間には、愛のない生活が分相応だと思い始めてしまっている。

本作は、そんな愛実が文字の読み書きができないホストのカヲルに、個人授業をすることになり、教える喜びを見出していく様を描いている。そして、教師としての喜びがいつしか愛へと変わっていく様、そして、カヲルもまたホストとして女性に本気にならないモットーを破り、愛実に惹かれていく。そんな2人の間には教師とホストという立場の違いや、両親の介入、婚約者の尾行など、様々な障害が立ちふさがる。

木村文乃が見せる多彩な側面

そんな本作の主人公・愛実を演じるのは木村文乃だ。2006年にデビューしてまもなく20年のキャリアを刻む彼女が巧みに揺れる心理を表現しているのが、本作の見どころだ。

2015年の『マザー・ゲーム~彼女たちの階級~』(TBS系)でプライムタイムの連続ドラマ初主演を果たしてから、早10年。木村文乃は、着実に、そして多彩にキャリアを積み重ねてきた。「劇場版」へと発展した『七人の秘書』(テレビ朝日系)でのクールな仕事ぶり、『ザ・ファブル』シリーズで見せた天才的殺し屋の相棒・ヨウコという鮮烈なハマり役、そして国際的にも評価された映画『LOVE LIFE』での深遠な演技。硬軟自在な役柄をこなし、確固たる地位を築き上げた彼女が、脂の乗った芝居が堪能できるのが本作の魅力でもある。

自信なさげな佇まいや伏し目がちな表情を見せ、受動的な存在であるかのように見える愛実だが、カヲルと出会い、文字の読み書きを教えるようになって明るい表情を見せ始める。この鮮やかな変化を木村文乃がグラデーション豊かに演じて見せている。

そして、物語が進むにつれて、教師という立場と愛を渇望する1人の女性として、揺れ動くさまを多彩に表現する。婚約者の前では幸せな結婚を夢見るような演技を見せる、カヲルの前でもこの関係を続けるため、愛が芽生えているにも関わらず教師としての建て前を貫こうとする姿勢、心の内面と外面が裏腹な態度をとらざるを得ない苦悩が見事に表現されている。

そんな彼女だからこそ、時折見せるむき出しの本心が視聴者の心をとらえる。カヲルを侮辱されたときに、思わず「彼はバカじゃない」と言い放つシーンは出色だ。強権的な父親に逆らえず、自分を押し殺して生きてきた愛実が、愛によって主体性を獲得していく様を木村文乃は確かな表現力で演じている。

サバサバした親友・百々子を演じる田中みな実

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田中みな実(C)SANKEI

本作で輝いている女優はもう一人、いる。愛実の親友、町田百々子役の田中みな実だ。田中の役どころは、テレビの報道局を仕切るプロデューサー。いつも強気でだれに対しても物おじしない、リーダー気質の彼女は愛実とは正反対の性格に見える。元々テレビ局のアナウンサーだった田中にとっては、報道番組に携わる百々子の役どころは、身近な存在と言えるかもしれない。

流されがちな愛実を何かと心配し、婚約者の品定めをすると申し出たり、ホストクラブの取材の傍ら、愛実とカヲルの関係が健全なものかどうか探りを入れたりと、忙しい仕事のさなかでも愛実のためにアクティブに活動する。

そんな百々子は、愛実が半狂乱で海に飛び込む原因となった元恋人との別れの原因なのだと衝撃の事実もあっさりと告げる。自分が寝取ったにもかかわらず、愛実は友達でいてくれたことで、自分が愛実を一生守るのだと誓っているのだ。

女性ながらの王子様のような発言だが、カヲルはそんな百々子の裏の顔も見抜いているかのようだ。愛実のことをそんなに気に掛けるのは「暇つぶしでしょ」と言うカヲルに何も言い返せない百々子。果たして、勝気でサバサバした彼女にも裏の顔があるのか、田中みな実がそんな女性をどう演じるのか、物語に奥行きを与える存在として、後半の展開でも注目だ。

カヲルと愛実の愛の行方も気になるが、この2人の女性の友情の行方も気になる。百々子が追いかけているホスト刺殺事件という謎も提示されており、それがどのように物語をかき乱すのか。ミステリーと女性の主体性回復、そして許されぬ恋がかみ合う物語として、今後も目が離せない展開が続きそうだ。


ライター:杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi