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避難所での熱中症を防ぐには? 対策や防災グッズを紹介

  • 2025.6.30

写真:PIXTA

災害時の避難生活では、環境が大きく変化することにより熱中症のリスクが高まります。この記事では、避難所でできる熱中症対策、熱中症の予防に役立つ防災グッズなどを紹介します。

災害時に熱中症の危険性が高くなる理由

災害時に熱中症の危険性が高くなる理由として、停電や断水、水と食料の不足、避難所生活の疲労や睡眠不足が考えられます。

熱中症の危険は、気温の高い夏だけでなく、湿度の高い日や、体がまだ熱さに慣れていない梅雨時に発生しやすく、春から秋にかけて油断ができません。特に高齢者や子どもは熱中症になりやすく、自分で体調の異変に気づきにくいため、注意が必要です。

ここからは、停電や断水がどのように熱中症につながるのか、疲労や睡眠不足でなぜ熱中症の危険が高まるのかを、それぞれくわしく見ていきましょう。

停電

近年の夏は、家の中にいても熱中症になったり、死亡する恐れもあったりするほどの猛暑が続いています。災害時の避難所となる学校の体育館には、エアコンが設置されていないことが多く、夏に災害が起こった場合には、熱中症になる危険があります。

災害時に、学校の教室や公民館などエアコンが設置されている場所に避難できたとしても、災害の影響で停電が発生するおそれがあります。そのため、エアコンが使用できない状況で、どのように暑さ対策をするか事前に考えておくことが必要です。

家族に高齢者や乳幼児がいる場合、猛暑時にエアコンがないと危険な状況となることも考えられます。エアコンの利用できる避難所を探す、あるいは被災地から離れた場所にある親戚宅などへの避難を検討することも大切です。

断水

断水は、生活にさまざまな影響をもたらします。飲み水や調理に使う水が十分に確保できなくなるかもしれません。水洗トイレが使えなくなり、トイレに行く回数を減らそうとして水分を控えることも心配されます。

また、手洗いなどがしっかりとできないことにより、感染症が流行するおそれもあります。脱水や病気による体力の低下で、熱中症を起こしやすい状態になることが懸念されます。

水と食品の不足

わたしたちが1日にとるべき水の量は成人で約2.5リットルが適量で、普段であれば、そのうちの約1リットルを食事からとっています。

しかし、災害時には水も食品も十分に確保できるとは限りません。災害時の食事は非常食のアルファ米や、炊き出しのおにぎりなどの炭水化物に偏りやすく、味噌汁やスープは食べられないことも考えられます。

ビスケットや乾パンなどでしのぐ場合には、食事からとれる水分はさらに大きく減ってしまうでしょう。

また、水分不足だけでなく、栄養不足も熱中症のリスクを高めるといわれています。

睡眠不足/疲労の蓄積

大勢の人が集まる避難所では、周囲の話し声や物音が気になり、よく眠れない場合があります。睡眠不足で疲労が蓄積すると、体温調節の機能が下がり、熱中症になる危険性が高まります。

避難生活でもできるだけ睡眠の環境を整え、眠れなくても横になって休み、疲れをためないようにすることが大切です。

片付け/復旧作業

災害時には、食事や睡眠もままならない状況でありながら、復旧作業に取り組む人が少なくありません。避難所から被災した自宅の片付けに通うこともあるでしょう。

非常時だからと無理をしがちですが、暑いところで体を動かす作業は、熱中症になる危険の高い行為であることを忘れないようにしてください。

その日の天候などに応じて、屋外での作業は朝の涼しい時間帯に行う、1日の作業時間を決めて行う、こまめに休憩をとり水分と塩分を補給するなどの対策が必要です。

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避難所でできる熱中症対策

避難所では、熱中症を予防するために次の5点を心がけましょう。

【1】こまめな水分補給

水分は、のどが渇いたと感じなくてもこまめに飲むことがポイントです。汗をかいて体内の水分と塩分が失われると、体内の塩分バランスを保とうとして、脱水しかかっている状態にもかかわらず、喉の渇きを感じにくくなることがあるからです。

また、就寝中にも水分が失われていくので、就寝前や起床時にも、コップ1杯程度の水を飲むようにしましょう。

【2】塩分補給を忘れない

大量に汗をかき、体内から水分だけでなく塩分などの電解質も失われると、こむら返りなどの筋肉のけいれんが起こりやすくなります。暑い日に屋外で復旧作業をしたり、停電中の、エアコンが使えない環境で家の中を片付けたりするときは、水分補給とともに塩分補給を忘れないようにしてください。

作業中の塩分補給には、塩タブレットや塩分(ナトリウム)を含むスポーツドリンク、経口補水液などを活用すると良いでしょう。物資が限られるときは、水1リットルあたり1~2gの塩を入れた食塩水でもかまいません。

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【3】服装の調整や冷却グッズを活用

大勢の人が集まる避難所は、熱気で湿度が高くなりやすい環境です。人は汗をかくことで体温を調節しますが、湿度が高い環境だと汗をかいても蒸発しにくく、体に熱がこもりやすくなります。

汗の吸収がよく、さらっと渇きやすい素材の服、風通しのいいゆったりとした形の服を着て、体に熱がこもらないようにしましょう。

肌に触れるとひんやりと感じるネッククーラー、水に濡らして使う冷却タオルなどの暑さ対策グッズは、災害時にも役立ちます。

【4】温度だけでなく湿度にも注意

熱中症の危険度は気温の高さだけでなく、湿度の高さや、風の有無によっても変わります。避難所の中で煮炊きをしたり、洗濯物を干したりすると湿度が上昇し、暑い日にはさらに熱中症の危険が高まるので注意しましょう。

多くの人が集まる避難所では、定期的に窓やドアを開放して、空気の入れ替えを行うことも大切です。

環境省では、湿度、周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた「暑さ指数」を元に、熱中症警戒アラートならびに熱中症特別警戒アラートを発表しています。
気温のそれほど高くない日や、曇っている日でも、熱中症の危険が高い場合があります。暑さ指数を確認して熱中症対策をしましょう。

暑さ指数は「環境省熱中症予防情報サイト」で確認できます。

【5】熱中症の初期症状を見逃さない

熱中症は、重症化すると命に関わる病気です。初期症状にはめまい、立ちくらみ、筋肉の硬直(こむら返り)などがあげられます。この時点で体調の異変に気づき、涼しい場所で休んで水分と塩分を補給し、体調が改善してくるようであれば軽症で、医療機関を受診せずに済む場合もあります。

休んでも体調が回復しない場合や、激しい頭痛、吐き気・嘔吐があるときは、医療機関を受診してください。意識がもうろうとしていて、呼びかけに応えられないようであれば、救急車を呼びましょう。救急車の到着を待つ間は無理に水を飲ませずに、衣服をゆるめて氷のうや凍らせたペットボトルなどで体を冷やしてください。

熱中症に備える防災グッズ一覧

災害への備えを見直して、暑さ対策・熱中症対策を追加しましょう。

水と食料

水と食料の備えは十分か、改めて確認してみてください。

ペットボトルの水だけで備えようとせず、常温で保管できるパックの野菜ジュース、エネルギーのとれるゼリー飲料、電子レンジ調理ができるスープなども水分として数え、日常的に使いながら災害時の備蓄とするローリングストックにするのがおすすめです。

熱中症対策として、スポーツドリンクや経口補水液も備えておきましょう。

塩タブレット

大量に汗をかいたときに補給する塩分は、料理に使う塩、味噌、梅干しなどでもかまいませんが、熱中症予防で携帯するには、個包装の塩タブレットが便利です。

うちわ、扇子

うちわや扇子は、停電時にも使える暑さ対策グッズです。風が、体の表面近くにある体温で温まった空気を動かしてくれることで、涼しさを感じられます。

体に濡れたタオルをかけて、うちわや扇子で風をあてる方法でも、水分が蒸発するときに熱を奪う気化熱の働きで涼しく感じられます。電池式や充電式のハンディファンも使える限り活用しましょう。

ボディシート

汗を拭くためのボディシートは、入浴ができない避難所では重宝する衛生用品です。肌に清涼感を与える冷感タイプもあります。

冷却アイテム

ひんやりとしたネッククーラーなど、普段使っている冷却アイテムも活用しましょう。熱中症対策として、冷凍庫に凍らせたペットボトルや冷却枕を普段から常備しておくと、停電時の熱中症対策、暑さ対策に役立ちます。

帽子、日傘

屋外で過ごすときは、帽子や日傘を使い直射日光を避けることが大切です。

ポータブルバッテリー

大容量のポータブルバッテリーは、停電時でも扇風機などを動かす際に使えます。ソーラー充電ができるタイプもあります。

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まとめ

熱中症の危険性は、気温や湿度などの環境、体調などの体の状態、運動や作業などの行動によって変わります。

災害にあい避難生活を送っている人は、疲労の蓄積などにより普段よりも熱中症になりやすい状況です。意識して水分をとり、汗をたくさんかいたら塩分も忘れずに補給しましょう。

避難生活のなかでも、できるだけ栄養のある食事、十分な睡眠、感染症の予防を心がけることも熱中症の予防につながります。高齢者や子どもは熱中症になりやすいので、周囲の人と声をかけあって、体調を確認するようにしてください。

<執筆者プロフィル>
山見美穂子
フリーライター
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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