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「表情筋バキバキ」1週目の配信からクセになる人続出…!“脂の乗った”製作陣が蘇らせた“伝説的ブラックユーモア作品”

  • 2025.7.24

「ココロのスキマ、お埋めします」そう言って現れるのは、黒ずくめのスーツに異様な笑顔、どこか人間離れした存在感を持つ謎のセールスマン・喪黒福造。2025年夏、その名作が令和版として蘇った。Amazon Prime Videoで配信中のドラマ『笑ゥせぇるすまん』は、藤子不二雄(A)の伝説的ブラックユーモア作品を、ロバート秋山竜次主演で実写化した全12話のオムニバスドラマだ。脚本陣には宮藤官九郎、マギー、細川徹、岩崎う大(かもめんたる)と、いまの日本でもっとも脂の乗ったコメディ作家たちが名を連ねる。笑えて、ちょっとゾッとする。そんな絶妙な30分間が、3週に分けて配信される。

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

喪黒福造という“令和の妖怪”

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(C)藤子スタジオ/TV TOKYO

何より注目すべきは、喪黒福造を演じるロバート秋山の怪演だ。あの独特すぎる風貌と表情筋が、喪黒というキャラクターの奇怪さと絶妙にマッチしている。

無理に原作の喪黒をなぞるわけではなく、「令和の喪黒福造」として新たに降臨したような存在感。まさに“いま、喪黒福造を演じるならこの人しかいない”と言いたくなるキャスティングだ。

1話「たのもしい顔」では、喪黒がなんとトイレの洗面台から現れるという衝撃の登場を果たす。演出は奇抜だが、意外にもその存在に説得力があるのが秋山の凄さだ。笑ってしまうようなバカバカしさと、背筋がゾッとするような不気味さの両立。秋山の喪黒、クセになる。SNS上でも「表情筋バキバキ」「ずっと秋山のコント劇場」と秋山の演技に触れる声が圧倒的に多い。

本作はオムニバス形式で、1話完結の物語が全12話収められている。毎話登場するのは、何かしらの悩みや欲望を抱えた現代人たち。そこに現れる喪黒が、妙に魅力的なアイテムや助言を与え、状況を一変させる。だが約束を破ったり、欲をかいたりすれば……必ず“落とし穴”が待っているのだ。

この展開、いわば現代版の寓話とも言える。「ちょっとズルしたら、ちょっと幸せになれた。でもその代償は……」というブラックなユーモアが炸裂する。

クスッと笑って、でも刺さる。“優しい毒”がたまらない

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(C)藤子スタジオ/TV TOKYO

このドラマの素晴らしいところは、怖がらせるだけでも、説教臭くするだけでもなく、「あ〜分かる」「自分もちょっとやりがちかも」と思わせる“軽やかさ”があるところ。あくまでブラックコメディでありながら、どこかに優しさがあり、ヒューマンな目線がある。

喪黒福造という存在は、罰を与える者ではなく、“見ている者”に近い。彼はただ差し出すだけ。どう使うかは、あなた次第。失敗したのは本人の選択……。そんな構図が、見ていて妙に納得できるのだ。

今作が素晴らしいのは、Z世代や原作を知らない層にもフレンドリーであるという点。現代的な悩みやSNS文化を取り入れた脚本で、誰でも共感できる内容にアップデートされている。配信初週で視聴ランキング2位を獲得したのも、その幅広い訴求力ゆえだろう。

何より秋山喪黒の怪演は、一度見たら忘れられないインパクトを残す。「この人、本当にどこかにいそう」と思わせてしまうリアルさがクセになる。

笑えるのに怖い。軽いのに深い。短いのに刺さる。この『笑ゥせぇるすまん』は、そんな“ギャップの妙”がぎっしり詰まった現代の寓話集だ。

1話約30分、サクッと見られる構成ながら、観終わった後の余韻はなかなかにヘビー。それでも次の話が気になるのは、喪黒福造という謎のセールスマンが、誰よりも私たちの“スキマ”を知っているからかもしれない。


テレビ東京『笑ゥせぇるすまん』
動画配信サービス『Prime Video』にて独占配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_