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【高野への旅/後編】「行きたいな」と思ったときが訪れどき金剛峯寺・奥之院で心のデトックス

  • 2025.6.24

こんにちは、奈良在住の編集者・ふなつあさこです。前編では、高野山を訪れる前にお参りすべき、かつらぎ町「丹生都比売(にうつひめ)神社」、九度山「慈尊院(じそんいん)」をご紹介した聖地旅、後編はいよいよ高野山へ!

一緒に行った方にとっては初の高野山。山上にたどり着くと「え!? 高野山ってこんな感じなん!?
思ったより開けてる!」と驚いてはりました。お大師さま(=弘法大師空海)が山上盆地に開いた高野山は、金剛峯寺(こんごうぶじ)を中心に町が広がっていて、高野山大学もあります。
 
何度訪れても「来てよかった!」と思える山上の聖地で、心に抱えたモヤモヤやイライラを全部デトックス! ここにしかない美しい風景のなか穏やかに手を合わせたり、おいしいものを食べたりしていると、みずみずしい気分が満ちていきます。
 
さぁ、いよいよ高野山の見どころをご紹介してまいります!

お大師さまが伝えた密教の宇宙が広がる高野山

平安時代のはじめに、真言宗の開祖・弘法大師空海(こうぼうだいしくうかい)が開いた高野山。その中心に位置するのが、「金剛峯寺」です。

高野山は「一山境内地(いっさんけいだいち)」と称し、いわば高野山全体がお寺。金剛峯寺は、その寺務を執り行うところなのだそう。ちょっと頭こんがらがりますね!

私は5、6回目の高野山詣でですが、毎回「おっきいな〜」とスケールの大きさに驚きます。左右に大きく広がる金剛峯寺の主殿(本坊)もとても大きい!

度重なる火災により焼失(屋根の上に大きな桶があるのも火災への備えです)と復興を繰り返したものの、近世末に再建された現在のお堂の多くは創建時の規模や形式を概ね踏襲していることから、昨年重要文化財に指定されたそう。

主殿のなかに置かれている高野杉。いったい何年モノなのでしょうか?

金剛峯寺には「山林部」という部署があり、お堂のメンテナンスに備えて高野山の木を育てているのだそう。

ちなみに、私が以前企画・制作した『とっておきの高野山 総本山 金剛峯寺 高野霊木ブレスレット BOOK』(宝島社 ※販売終了)のブレスレットには、高野山で育てられた材木「高野霊木」によって再建された中門の端材を使用しました。

高野山の植物を使ったスプレー。以前母にあげたら気に入ったようで、使い切ってしまったと言ってたので、再びおみやげに。自分用にも購入しました。

サッパリしたさわやかな香りで、リフレッシュできるんです。「お清め水」「お守り水」というネーミングもいい!

国内最大級の石庭、蟠龍庭(ばんりゅうてい)。雲海で向き合う雌雄一対の龍が、奥殿を守るように表現されているそう。

龍をあらわす花崗岩はお大師さまご誕生の地である四国、雲海をあらわす砂は京都(京都の東寺もお大師さまゆかりのお寺です)のものが使われています。写真だと分かりづらいんですが、本当に大きいんです!

茶の間の障屏画《断崖図》は、世界的に活躍する日本画家・千住博画伯の作品。このほかにも、斎藤等室(さいとうとうしつ)や山本(狩野)探斉(やまもとたんさい)の作と伝わる襖絵も。

美術館などでは横に並べられているだけですが「そっか、襖絵って、部屋にあってこそだよね」と妙に納得。空間芸術なんですよね。

囲炉裏の間の障屏画《瀧図》も、千住さんの作品。中央にあるのは、仏壇ではなく囲炉裏です。そして、現役だそうです。

私が古い社寺を訪れるときには、お供えにも注目しています。高野山では、大きめのお野菜がスパッと斜めに切られています。「なんでだろう?」と思ってしまいますが、きっと“こうするもの”と代々伝えられてきているんでしょうね。

多くの僧侶たちが寝起きしたであろうことが、大きなおくどさん(=かまど)から想像できます。こちらは使用されていないそうですが、今でも使われているかまどもあるそうです。

空から曼荼羅を見下ろす!? 圧倒的スケールの壇上伽藍

次は壇上伽藍へ。

もうとにかく大きい、根本大塔(こんぽんだいとう)。多宝塔様式としては日本最初のものといわれています。こちらも重要文化財。左の御影堂(みえどう)には、年一度の御逮夜法会(おたいやほうえ)だけ一般参拝ができるそう。いつかお参りしたいです。

右には三鈷の松(さんこのまつ)。唐(現在の中国)から帰国される際、お大師さまがご自分の道場を開く場所を求めて投げた三鈷杵(さんこしょう)という宝具が引っかかっていた松と伝えられています。四つ葉のクローバーならぬ、三つ葉の松の葉であることが特徴。皆さん一生懸命、落ち葉を探されています。松の奥に見えているのが、高野山の総本堂である金堂(こんどう)。

根本大塔のなかに入ると、仏さまたちのおられる世界に飛び込んだような気分になります。ご本尊の胎蔵大日如来(たいぞうだいにちにょらい)を金剛界の四仏(しぶつ)が取り囲み、柱にも壁にも仏さまやお坊さんの姿が描かれています。まさに立体的な曼荼羅。

※通常は撮影禁止。特別な許可を得て撮影しています

お大師さまが高野山を開くにあたり、最初に建てたとされているのがこちらの御社(みやしろ)。

前編でご紹介した、丹生都比売(にうつひめ)神社(別名、天野社)から勧請(神仏の分身を別の地に招いてお祀りすること)し、高野山の鎮守とされたそう。丹生都比売大神は、高野山では「丹生明神」と呼ばれています。

こちらは不動堂。見落としがちな気がしますが、国宝です。このお堂のつくりはちょっと変わっていて、四隅の形が全部違うんです。四人の匠がそれぞれの技巧を凝らして造ったためなのだそう。

こちらにお祀りされていた運慶作の「八大童子(はちだいどうじ)」は、霊宝館に収められています。

八大童子に会いたいな〜と、霊宝館へも立ち寄りました。残念ながらご不在(?)でしたが、快慶作の仏像がモリモリ並んでいて、大満足。重要文化財指定記念特別展「大伽藍」も開催中でした。

小型木製五輪塔をモチーフにした拝観券がかわいい。6種類の色バリエがあるみたい。

霊宝館所蔵の仏像のなかから今日の私におすすめの仏像を教えてくれる「高野山 推し仏診断メーカー」にもトライ。ちょっとした心理テストがあり、私は如意輪観音坐像でした。

霊宝館のInstagramが6月1日開設されたばかりだそうなので、ぜひチェックしてみてください。私はもうフォローしました。

お大師さまに会いに、奥之院へ

高野山は、お大師さまが開いた真言密教の聖地であるとともに、お大師さまに対する信仰の場でもあります。それがそのまま形になっているのが、奥之院。

高野山 奥之院
写真提供:(公社)和歌山県観光連盟

奥之院の御廟(ごびょう)橋の正面突き当たり、写真で見えている燈籠堂のさらに奥にあるのが「御廟」です。お大師さまは、承和2(835)年3月21日にこちらで永遠の瞑想に入られたとされています。
 
橋の先は撮影禁止。脱帽のうえ、静かにお参りしましょう。ちなみに、お大師さまのお姿は目には見えません。私は心のなかでお会いして(る気になって)ます。

1200年もの間、1日2回行われている「生身供(しょうじんぐ)」は、お大師さまに食事を届ける儀式。御供所(ごくしょ。いわばキッチンですね)で調理された食事は、こちらの嘗試(あじみ)地蔵で味見していただいてから運ばれていきます。

奥之院の参道には、実に約20万基もの墓が並んでいます。こちらは豊臣秀吉をはじめとする豊臣家墓所。一時は高野山に圧力をかけた秀吉でしたが、元武将の僧侶・木喰応其(もくじき おうご)の働きにより、一転して再興に力を注いだそう。応其さん、すごいネゴシエーター。

有名・無名を問わずとにかくたくさんのお墓がありますが、実際にお骨が納められているのは一部なんだとか。

「見たことあるぞ」な供養塔も。

お地蔵さんもたくさん。

多くの人々がお大師さまのそばにいたい! という願いが形作った奥之院の雰囲気は独特。

これは超個人的な見解ですが、奥之院にお参りすると壮大なファンミ(ファンミーティングの略です)みたいだな〜といつも思います。

静かで厳かなのだけれど、湿っぽいムードではなく、どちらかというと“ここにいられて嬉しい”というようなポジティブな想いが満ちている気がして、私は元気になります。

毎年3月21日には、お大師さまの衣替えがあります。その御衣の端切れから奉製(ほうせい)されるお守りが、こちらの「御衣切(おころもぎれ)」。奥之院燈籠堂で例年4月に頒布されます。

ご縁があっていただくことができた(泣いた)のですが、今年の頒布は終了しているそうです。4月(のできれば早いうち)に伺うのがおすすめです。

元気になったらおなかがすいた! 高野山グルメを楽しむぞー!

心をデトックスしたら、おなかがすいていることに気づきました。人間だもの。でも大丈夫、高野山には、お買い物スポットやおいしいものもたくさんあります!

まずは、前編でご紹介した高野下駅舎ホテル「NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道」の部屋で広告を見かけて「食べたい!」と思っていた角濱ごまとうふ総本舗 小田原店の角濱式高野山NOODLE。

「ごまとうふの原液をスープに植物性出汁“miracore®️”を加えた精進NOODLE」とのこと。麺は米粉を使用したグルテンフリー麺です。写真の塩のほか、白湯(パイタン)味、味噌、麻婆がありました。「ごまとうふ懐石五彩」と迷いましたが、初志貫徹。ごまとうふは食べたかったので、プラスしてオーダーしました。

ショップスペースでは、ごまとうふはもちろんのこと、ごまを使用した調味料などもずらり。賞味期限が当日の「出来立て 生ごまとうふ」を購入してみたのですが、これがもう本当においしい。フレッシュ。

カフェ、ショップ、ワークショップスペースを備えた複合施設「天風てらす」にハシゴ。

ショップには、高野山麓の名産品が取り揃えられています。

ストールやバッグ、ポーチなどのかわいいものやおいしそうなものもたくさんありましたが、私は高野山の奇跡の苔「高野万年草」をget。

日本最大の苔だそうで、ヤシの木みたい。 生命力がすごく高くて、あまりお手入れしなくていいというのも私のようなズボラには嬉しい。

……と今、書きながら心配になって様子を見てきましたが、ビンのなかで元気いっぱいでした。なんならちょっと大きくなってる気がする。タフな子でありがたいです。

2階のカフェでおやつ。卵・乳製品を使っていないのに驚くほど濃厚なチョコレートテリーヌと、5種のアートから選べるカフェラテをいただきました。

看板メニューはこちらの「天風てらす特製 米粉バンズのクラフトバーガープレート」。パテはビーフと大豆ミートから選べるそう。今度高野山を訪れたら、このバーガーを食べます(パテはビーフにします)。

実はここ最近、結構な辛いことが目白押しだったのですが、高野山に出かけて推し(=お大師さま)に会えて、おいしいものを食べて、誘ってくれた友人母娘といっぱいしゃべって、本当に行ってよかった!

もし「あ、行きたいな」と思ったら、訪れどきです。ぜひ旅のご計画を!

この記事を書いた人

編集者
ふなつあさこ

ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE! 京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

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