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【南青山】根津美術館「企画展 はじめての古美術鑑賞―写経と墨蹟―」

  • 2025.6.17

はじめての古美術でもじっくり楽しめる写経と墨書

根津美術館で開催中の「企画展 はじめての古美術鑑賞―写経と墨蹟―」[2025年5月31日(土)~7月6日(日)]を見て来ました。

写経と墨蹟の2つの異なるジャンルの名品が一堂に会する初心者でも楽しめる古美術鑑賞の展覧会です。 漢字ばかりで難しそう⁈に見えても、作品に添えられたパネルに鑑賞のポイントが分かりやすく解説されていますので大丈夫です。

奈良時代から千年以上大切に伝えられて来た写経の文字に込められた祈りや、禅宗の墨蹟に見る師から弟子への心のこもった「偈(げ)」など、国宝や重要文化財の書に出会えるチャンスです。 同時開催の大津絵のコレクションや特別仕様の美術品収納箱、仏教美術では中国の小金銅仏など根津美術館の多彩なコレクションと共に楽しめる展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。館内は撮影禁止です。

出典:リビング東京Web

重要文化財 釈迦多宝二仏並坐像 1軀 銅造鍍金 中国・北魏時代 太和13年(489) 根津美術館蔵

写経、仏への信仰と祈り

不滅の輝き、奈良時代の紺地銀字経、重要文化財《華厳経 巻第四十六(二月堂焼経)(けごんきょう まきよんじゅうろく(にがつどうやけきょう))》

謹厳実直な書で写経された重要文化財《華厳経 巻第四十六(二月堂焼経)》。

奈良時代の現存唯一の紺紙銀字経で、寛文7年(1667)二月堂お水取りの際の火災に遭いながら東大寺二月堂から取り出され、全巻が揃う貴重な名品で「二月堂焼経」とも称されています。 焼損の跡は残りますが、プラチナのような銀泥の文字の輝きは、千年以上の時を超えて大切に守られて来た仏への信仰と祈りを伝えています。

写経所で、国家鎮護の祈りを込めて写経生たちが経典の一文字、一文字を写経していた緊張感が感じられる書です。

出典:リビング東京Web

右、重要文化財 華厳経 巻第四十六(二月堂焼経) 1巻 紺紙銀字 日本・奈良時代 8世紀 根津美術館蔵

平安貴族の雅な書と料紙の美、国宝《無量義経・観普賢経(むりょうじゅきょう・かんふげんきょう)》

5世紀後半、聖徳太子の時代に日本に仏教が伝来し、天皇・貴族の帰依を受けた仏教は平安貴族の王朝文化に深く根付いていきます。

仏への祈りに美を込めた平安時代の写経、国宝《無量義経・観普賢経》。

金箔と色違いの料紙で華やかに荘厳され、流麗な和風の書で写経されています。 仏法真理の尊さに美を見出した平安貴族たちの美意識と仏教信仰が生み出した平安後期の写経の名品です。

出典:リビング東京Web

左、国宝 無量義経・観普賢経 2巻 彩箋墨書 日本・平安時代 11世紀 根津美術館蔵

禅僧の人柄がにじみ出る「墨蹟」、重要文化財《無学祖元墨蹟 附衣偈断簡(むがくそげんぼくせき ふえのげだんかん)》

禅の心得「墨蹟」は師から弟子への贈り物

重要文化財《無学祖元墨蹟 附衣偈断簡》(中央)。 宋書の書風を感じさせる太く堂々とした書で、無学の遺墨の中でも優品とされています。

中国僧・無学祖元(むがくそげん)は、鎌倉時代の執権・北条時宗(ほうじょうときむね)の招請を受けて来日した禅僧です。 中国に留学した日本僧で、京都・東福寺の聖一国師・円爾(えんに)と同じ無準師範(ぶしゅんしばん)を師に持ち、鎌倉の建長寺の住持をつとめ、円覚寺の開山としても知られている禅僧です。

偈(げ)は、宗教的な詩で、無元から日本僧一翁院豪(いちおういんごう)に、嗣法(しほう)の証として法衣を授けたことを詠んでいるそうです。 但し、冒頭の五行22文字と跋の一行目6文字が失われているそうです。軸のサイズに合わせたのでしょうか。大胆なカットです。

左は、国宝《布袋蒋摩訶図 (画)因陀羅筆 (賛)楚石梵琦賛》です。

出典:リビング東京Web

中央、重要文化財《無学祖元墨蹟 附衣偈断簡》 1幅 紙本墨書 日本・鎌倉時代 弘安3年(1280)、左、国宝 布袋蒋摩訶図 (画)因陀羅筆 (賛)楚石梵琦賛 1幅 紙本墨画・墨書 中国・元時代 14世紀、右、宗峰妙超墨蹟 法語 1幅 紙本墨書 日本・鎌倉時代 元亨2年(1322) すべて根津美術館蔵

同時開催「大津絵 つくられ方・たのしみ方」、「特別仕様の美術品収納箱」で多彩なコレクションを楽しむ

大津絵、旅の人気の土産物《鬼の念仏(おにのねんぶつ)》

《伊勢参宮道中図屏風(いせさんぐうどうちゅうずびょうぶ)》には、京都と大津を結ぶ街道沿いに大津絵を制作して売る店が描かれています。 買ったばかりの大津絵を広げて街道を行く旅人の姿も見えます。

《鬼の念仏》は大津絵の人気のキャラクターの一つ。墨衣に鐘をつき念仏を唱える鬼の殊勝な様子がユーモラスです。 大津絵は、昭和初年に民藝運動により再評価をされて「民画」として認められるようになります。初代根津嘉一郎は民藝運動の再評価を受けて、茶会の寄付(よりつき)の床にこの作品を用いたそうです。

大津絵の風刺の効いた絵柄に、観覧中にもかかわらず思わず笑ってしまいました。

出典:リビング東京Web

伊勢参宮道中図屏風 6曲1双のうち右隻 紙本金地着色 日本・江戸時代 17~18世紀 根津美術館蔵

出典:リビング東京Web

左、鬼の念仏 1幅 紙本着色 日本・江戸時代 18世紀ほか、「大津絵 つくられ方・たのしみ方」展示風景 すべて根津美術館蔵

こだわりの装飾が美しい美術品収納箱《絵過去現在因果経 収納箱(えかこげんざいいんがきょう しゅうのうばこ)》

重要文化財《絵過去現在因果経(えかこげんざいいんがきょう)》(展示室1)が収納されていた《絵過去現在因果経 収納箱》。 蓋表には螺鈿で葡萄文様が繊細に施されています。当時流行していた朝鮮半島の螺鈿細工の影響が見られるそうです。

紐金具は仏陀の説法をかたどった輪宝(りんぽう)です。仏法の教典を宝物のように敬い、丁寧に残そうとした人々の思いが伝わってくるようです。

出典:リビング東京Web

絵過去現在因果経 収納箱 1合 木胎漆塗 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

出典:リビング東京Web

重要文化財 絵過去現在因果経 第四巻 (画)慶忍・聖衆丸筆 (写経)良盛筆 1巻 紙本着色・墨書 日本・鎌倉時代 建長6年(1254) 根津美術館蔵

風待月(かぜまちづき)の茶

季節の茶道具取り合わせは風待月の茶です。 風待月とは旧暦の6月のことで、蒸し暑い日が続くなかに涼風を待つ季節を感じさせるのにふさわしい茶道具の取り合わせです。

出典:リビング東京Web

左、青磁透彫二階香炉龍泉窯 1口 中国・元時代 14世紀、ほか展示風景 すべて根津美術館蔵

出典:リビング東京Web

季節の茶道具取り合わせ展示風景 根津美術館蔵

緑の艶やかさを感じる庭園を散策

観覧の後は、庭園で散策。 庭園に出ると書のモノクロームの世界から、梅雨時の湿気を帯びた緑の艶やかさを感じさせてくれました。

根津美術館で開催中の「企画展 はじめての古美術鑑賞―写経と墨蹟―」は7月6日(日)までです。 写経と墨蹟の鑑賞の推しポイントを見つけに是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

根津美術館 庭園

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、大津絵付箋 瓢箪(550円)、香り袋 燕子花図屏風(990円)を購入。 大津絵付箋は大津絵の素朴な味わいそのままの付箋です。

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 根津美術館

〇根津美術館 NEZU MUSEUM
URL:https://www.nezu-muse.or.jp/
住所:〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1
TEL:03-3400-2536
開館時間:午前10時~午後5時(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日
展示室/ミュージアムショップ/庭園/NEZUCAFÉ

〇交通:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線〈表参道〉駅下車 A5出口(階段)より徒歩8分、B4出口(階段とエレベータ)より徒歩10分、B3出口(エレベータまたはエスカレータ)より徒歩10分
都バス渋88 渋谷~新橋駅前行〈南青山6丁目〉駅下車 徒歩5分
駐車場:9台(うち身障者優先駐車場1台)

〇企画展 はじめての古美術鑑賞―写経と墨蹟―
会期:2025年5月31日(土)~7月6日(日)
※都合により出品作品が変更になることがあります。
※オンライン日時指定予約
入場料:一般 1‚300円、学生 1‚100円
*障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料
・当日券:一般 1‚400円、学生 1‚200円
※予約優先のため、当日券利用は待ち時間が発生することがあります。混雑状況によっては当日券販売がないことがあります。
・1グループ10名まで予約可能。

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