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【虎ノ門】大倉集古館 企画展「幽玄への誘い―能面・能装束の美」

  • 2025.6.3

幽玄の世界、大名家旧蔵の能面と能装束の美、狂言面とともに

大倉集古館で開催中の企画展「幽玄への誘い―能面・能装束の美」[2025年4月15日(火)~6月29日(日)]を見て来ました。

江戸時代、「武家の式楽」とされた「能楽」は、室町時代14世紀に観阿弥・世阿弥親子により大成された歌舞劇です。

大倉集古館には因州(鳥取藩)池田家伝来の能面と、備前(岡山藩)池田家伝来の能装束のコレクションが多数所蔵されています。また有馬伯爵家旧蔵と伝わる貴重な狂言面のコレクションも展示されます。

大名家旧蔵の貴重な能面や豪華な能装束に加えて、本展では狂言にも注目した展示が見どころの展覧会です。

※展示室内はすべて撮影禁止です。本記事に掲載の写真は、すべて主催館の許可を得て撮影したものです。

出典:リビング東京Web

左、《鬱金地夕顔垣根模様縫箔》 江戸時代・18世紀 備前池田家伝来、ほか展示風景 すべて大倉集古館蔵

華麗で雅やかな能装束と気品ある面立ちの能面が誘う幽玄の美

能楽は、豪華な能装束を身にまとい能面を付けたシテが、能舞台で謡(うたい)と囃子(はやし)で演ずる歌舞劇です。

能面が表すのは、神霊や鬼神であったり、あるいはもとは人間界にいた者が、異界の者・死者の魂となって現れ、生きていた時の思い残し―哀しみや怒り、昔を懐かしみ、恋慕の情を募らせたりします。 舞台上では、演じるシテの身振り手振りで能面の表情が変わり、物語が展開してゆきます。

現代よりも神や仏、鬼や生霊、死者の霊魂をより身近に感じていた中世の人々にとり、能の幽玄の世界は、彼岸と此岸を行き来する不思議な世界、センス・オブ・ワンダーを体験する機会だったのかもしれません。

備前(岡山藩)池田家伝来の能装束

備前(岡山藩)池田家伝来の美麗な能装束は、豪華で華やかな大名文化を偲ばせます。

《濃萌葱地輪宝模様袷狩衣(こいもえぎじりんぽうもようあわせかりぎぬ)》(左)は、公家の装束ですが、能では最も格の高い貴人の役柄で用いられる男役の装束です。

袷狩衣(あわせかりぎぬ)は金糸で模様が織り出された金襴や錦で、皇帝や鬼神の役で用いられるそうです。濃い萌黄色の地に金色の輪宝が威厳を感じさせる能装束です。

中央の《天冠》の右側は天女の役などに用いる《紅繁菱地蓮唐草模様舞衣(べにつなぎびしじはすからくさもようまいぎぬ)》です。舞衣は、女役に限って舞を舞う時に着用される広袖の上着です。薄く軽い広袖を軽やかに翻すたびに天上界へ舞い上がって行く天女をイメージさせる華やかな能装束です。

展示された能装束は、保存状態もよく染織の鮮やかな色彩が残り大切に保存されて来たことを伺わせます。

出典:リビング東京Web

左、《濃萌葱地輪宝模様袷狩衣》 江戸時代・18世紀 備前池田家伝来、中央、《天冠》 江戸時代・18-19世紀、右、《紅繁菱地蓮唐草模様舞衣》 江戸時代・18世紀 備前池田家伝来 すべて大倉集古館蔵

因州(鳥取藩)池田家伝来の能面

因州(鳥取藩)池田家は北条氏滅亡後、池田輝政(いけだてるまさ)に再嫁した徳川家康の次女・督姫(良正院)(とくひめ(りょうしょういん))の子孫に当たる大名家です。

《能面 三光尉(のうめん さんこうじょう)》(右)は、猟師や木こりなど庶民の老人役を表す能面とされています。室町時代の面打、三光坊(さんこうぼう)が創作したとされる能面です。深い皺が印象的です。

《能面 増女(のうめん ぞうおんな)》(右から2番目)は、天女や女神、楊貴妃などの役に用いられる能面で、品の高い透明感のある面差しを感じさせます。室町時代の田楽の名手、増阿弥(ぞうあみ)が創作したと伝えられることから「増女(ぞうおんな)」と言われるそうです。

出典:リビング東京Web

右、《能面 三光尉》 桃山時代・16-17世紀、《能面 増女》 江戸時代・18世紀ほか、因州池田家伝来能面 展示風景 すべて大倉集古館蔵

旧久留米藩主有馬家旧蔵「猿に始まり狐に終わる」狂言面の面白さ

《狂言面 猿(きょうげんめん さる)》と《狂言面 狐(きょうげんめん きつね)》

旧久留米藩主有馬家旧蔵のものと伝わる《狂言面 猿》と《狂言面 狐》です。

狂言は「猿に始まり狐に終わる」と言われ、狂言役者は幼い頃に「靭猿(うつぼざる)」で初舞台を踏み、修業を重ねた集大成として「釣狐(つりぎつね)」が演じられるそうです。

出典:リビング東京Web

右、《狂言面 猿》 江戸時代・17-19世紀 有馬伯爵家旧蔵、左、《狂言面 狐》 江戸時代・18世紀 有馬伯爵家旧蔵 どちらも大倉集古館蔵

旧久留米藩主有馬家旧蔵の狂言面

能と能の上演の合間に行われる狂言は、大名や武士、市井の人々の日常を描いたセリフと所作による舞台劇です。

能が、神霊や異界の存在が現れて、神々しさや時に悲劇的な内容を語る重厚な謡と囃子で表すのに対して、狂言は人間の喜怒哀楽からにじみ出る滑稽さを狂言師がセリフと身振り手振りで面白おかしく演じる喜劇です。

展示されている狂言面は、整った面貌の能面とは異なり様々な表情がコミカルに誇張されています。 狂言面をつけて舞台に現れるだけで人々の笑いを誘ったのではないでしょうか。

旧久留米藩主有馬家旧蔵の狂言面は数も多く、一度にまとめて見られるのは貴重な機会です。

出典:リビング東京Web

左、《狂言面 毘沙門》 江戸時代・17-19世紀、ほか有馬伯爵家旧蔵能面 展示風景 すべて大倉集古館蔵

繫岡鑒一(しげおかけんいち)の「能画(のうえ)」

繫岡鑒一が大倉集古館の主任学芸員時代に開催された展覧会(昭和52年(1977))に出陳された能装束を能と狂言の役柄に当てはめて描いたものだそうです。

能面をつけ能装束を身にまとった姿が色鮮やかに描かれた本作は貴重な記録として資料的価値も高く、実際の能舞台の姿をイメージさせてくれます。

出典:リビング東京Web

繫岡鑒一 「能画」20枚1組 紙本着色 昭和51年(1976)頃 大倉集古館蔵

薪能(たきぎのう)のような大観《夜桜(よざくら)》の篝火(かがりび)

夜の闇に沈む山の端にのぼる月。 赤々と焚かれた篝火が照らし出す満開の夜桜が薪能の舞台のような横山大観の《夜桜》。

能面や能装束と共に展示されると、能の「西行桜」の老桜の精や「泰山木/泰山府君」の天女や閻魔界(えんまかい)の泰山府君が現れてきそうな幽玄の世界を感じさせます。

展示された大名家旧蔵の能面や能装束、狂言面からは、「武家の式楽」としての格式の美が伝わってきました。

大倉集古館で開催中の企画展「幽玄への誘い―能面・能装束の美」は6月29日(日) までです。 是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

横山大観 《夜桜》 6曲1双 昭和4年(1929) 大倉集古館蔵 前期展示 ※《夜桜》の展示は5月18日で終了しました。

ミュージアムショップ

ミュージアムグッズは、練り香水(1,430円)、《紅白段業平菱菊模様唐織》(部分、江戸時代18世紀)のクリアファイル(600円)を購入。 練り香水は少し手に取るだけで優しい香りが気分転換になります。 ※価格は全て税込みです。文中の作品名は記載のないものは全て大倉集古館所蔵です。在庫はご確認ください。

出典:リビング東京Web

ミュージアムショップ 大倉集古館

〇大倉集古館
URL:https://www.shukokan.org/
〒105-0001東京都港区虎ノ門2-10-3(オークラ東京前)
TEL:03-5575-5711

交通:東京メトロ南北線 六本木一丁目駅 中央改札(泉ガーデン方面)より5分
東京メトロ日比谷線 神谷町駅 4b出口より7分
東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 A2a出口より8分
東京メトロ銀座線・南北線 溜池山王駅 13番出口より10分
東京メトロ銀座線 虎ノ門駅 3番出口より10分
※駐車場はございません。

〇企画展「幽玄への誘いざない―能面・能装束の美」
会 期:2025年4月15日(火)~6月29日(日)※会期中展示替えがあります。
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
※19時までの夜間開館は行われていません
休 館 日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入 館 料:一般:1,000円、大学生・高校生:800円※学生証提示要 中学生以下:無料
※各種割引料金は公式HPの「利用案内」をご確認ください
※同会期中のリピーターは500円引き
※20名様以上の団体は500円引き
※障がい者手帳、被爆者手帳をご提示の方とその同伴者1名は無料
※お着物(和装)でご来館の方は300円引き
※ミュージアムパスポート 5,500円
※オークラ東京とのセット鑑賞券(ランチセット 6,000 円、茶菓セット 3,100円)
※割引併用不可
※ミュージアムショップ:大倉集古館の営業時間に準ずる

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