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企画展「メキシコへのまなざし」が埼玉県立近代美術館で開催中

  • 2025.4.29

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。今回紹介するのがこちら。

美しい青空と太陽に恵まれた情熱の国メキシコへの誘い。企画展「メキシコへのまなざし」が埼玉県立近代美術館で開催中!

出典:シティリビングWeb

岡本太郎《建設》1956 年|油彩・カンヴァス|川崎市岡本太郎美術館蔵

夏休みに旅を考えたくなるこの企画展。埼玉県立近代美術館は以前に「イン・ビトウィーン」展を紹介しましたが、ふりそそぐ太陽の光、美しい空と海、食や文化、古代遺跡など世界的な観光地として人気のメキシコをテーマにするとは…。

日本を代表する芸術家の岡本太郎がメキシコに興味があったということも、注目した理由です。確かに岡本太郎の作品にはパッショネイトな印象を受けるものが多くありますが、もしかしてメキシコと何か関わりがあるのかもしれません。

出典:シティリビングWeb

河原温《20 ABR. 68》〈Today〉(1966-2013)より|1968 年|アクリル・カンヴァス|名古屋市美術館蔵|©One Million Years Foundation

姉妹提携と「メキシコの美術」

1950年代の日本では、メキシコ美術が展覧会や雑誌を通じて盛んに紹介されたそうです。

なかでも1955年に東京国立博物館で開催された「メキシコ美術展」は、美術家たちがメキシコに目を向けるきっかけに。

今回「メキシコへのまなざし」展を開催中の埼玉県立近代美術館は1982年の開館以来、メキシコの近現代美術を収集し、メキシコ美術に焦点をあてた展覧会をたびたび開催していますが、その活動の背景にあったのが、埼玉県とメキシコ州との姉妹提携締結(1979年)。

さらに1955年のメキシコ美術展を訪れ、メキシコ美術への造詣を深めていった初代館長である本間正義さんの存在だったのです。

展覧会では、1950年代にメキシコに惹かれた美術家たちの活動の足跡をたどりながら、メキシコ美術の普及に努めた本間正義さんの仕事とともに紹介。

作品や資料、開催された展覧会などを通じて、戦後日本がメキシコ美術に向けたまなざしを、様々な角度から検証する試みになっています。

出典:シティリビングWeb

利根山光人《いしぶみ》1961年|油彩・カンヴァス|東京国立近代美術館蔵|©一般社団法人アルテトネヤマ

注目すべき3つのポイント!

ポイントのひとつがメキシコ美術の魅力に触れられる機会だということ。1950年代、日本に大きな衝撃を与えたメキシコ美術。

この展覧会では、1955年の「メキシコ美術展」(東京国立博物館)の出品作家の中から、メキシコ壁画運動を牽引したホセ・クレメンテ・オロスコ、ディエゴ・リベラ、ダビッド・アルファロ=シケイロスや、次世代を代表するルフィーノ・タマヨなどの作品を紹介します。「メキシコ美術展」の出品作と考えられるシケイロスの作品や、壁画に関連する作品なども展示されています。

出典:シティリビングWeb

ホセ・クレメンテ・オロスコ《家族》1926 年|リトグラフ・紙|名古屋市美術館蔵

もうひとつのポイントが5人の美術家がメキシコに注いだまなざしに触れていること。メキシコに魅了された日本の美術家の中から、福沢一郎、岡本太郎、利根山光人、芥川(間所)紗織、河原温の5人の活動に焦点を当てて紹介。

古代文明や壁画への憧れ、色彩や造形的な影響、言語への関心など、5人はそれぞれの視点からメキシコを捉え、自らの制作に反映させていったのです。作品のみならず、メキシコで撮影した写真や蒐集した民芸品、当時の雑誌なども交えて彼ら彼女らがメキシコに注いだまなざしについて検証しています。

さらにもうひとつのポイントが同館のメキシコ美術コレクション、その形成の歩みを紹介していること。

メキシコ美術の普及に努めた同館初代館長・本間正義さんが手がけたメキシコ美術に関する仕事や、埼玉県とメキシコ州との交流について紹介し、同館のメキシコ美術コレクションの源をたどっています。

出典:シティリビングWeb

シケイロスのアトリエを訪れる岡本太郎_1967年 画像提供:川崎市岡本太郎美術館

多彩な出品予定作家の面々

福沢一郎、岡本太郎、利根山光人、芥川(間所)紗織、河原温をはじめ、ホセ・グアダルーペ・ポサダ、ホセ・クレメンテ・オロスコ、ディエゴ・リベラ、北川民次、ダビッド・アルファロ=シケイロス、ルフィーノ・タマヨ、堀内秀夫、高橋力雄、ルイス・ニシザワ、吉田穂高、フランシスコ・トレド、マルティン・ディアス=マンハーレスといったメキシコを代表する美術家など多彩な作家の作品が一堂に集結。筆遣いや色彩感覚など学びにもなる作品たちを楽しめるんです!

出典:シティリビングWeb

芥川(間所)紗織《大木にハサマレタ若い神》1956年|染色・布|世田谷美術館蔵

担当学芸員によるギャラリートークも!

日時|5月4日(日・祝)15:00~

場所|2階企画展示室

参加費|企画展観覧料が必要。詳しくは下記に記載しているURLよりご確認ください。

スライドトークで展示への理解を深められる!

スライドトークを希望するグループにスライドを使って展覧会の見どころを案内してくれる嬉しい企画です(予約制)。詳しくは下記に記載しているURLよりご確認ください。

学芸員からのひとこと

「この展覧会では、メキシコ美術が日本で大きく取り上げられた1950年代に、日本の美術家がメキシコをどのように捉え、制作に反映させたのかをご紹介しています。西洋のモダニズムを吸収しつつ、メキシコの土着性を打ち出したメキシコ美術は、戦後の復興期に新たなアイデンティティを模索していた日本の美術界にとって示唆に富むものでした。メキシコ美術のバイタリティーや、それに刺激を受けて日本の美術家が生み出した多様な表現をお楽しみいただければ幸いです。また、埼玉県とメキシコ美術との繋がりという、当館ならではの視点も盛り込んでいます」(担当学芸員 吉岡さん)

出典:シティリビングWeb

展示風景(写真は前期3月23日までの展示風景になります。*会期中一部展示替えがあります)

2025年5月11日(日)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

埼玉県立近代美術館

https://pref.spec.ed.jp/momas/2025eyes-on-mexico

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

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