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堤人美さんに教わる「だし」の使い方をマスターすると料理が見違えるほど美味しくなる!

  • 2025.5.22

「イチからだしを取るのはたいへん」というのは、思い込みと堤人美さん。
手軽にだしを取る習慣をつけると、調味料要らずでおいしい料理が楽しめます。

教えてくれたのは・・・
堤 人美さん
身近な食材の味を活かしたセンスのいいレシピが人気。書籍や雑誌、CMの料理製作も手がける。近著『なんでもレモン』をはじめ、著書多数。

だしをちゃんととって素材のおいしさを味わいます

煮干しやひき肉はそのまま具材にだしをとるのは意外と簡単

「調味料を使わずとも、素材から出る旨味で十分おいしい」と話す堤さん。そのため、料理を作るうえで、だしを取ることは欠かせない、といいます。

「若い頃からだし感のある料理が好きなので、簡易的にでも必ずだしはとるようにしています。忙しいときは、かつお節をザルに入れ、サーッと熱湯をかけるだけ。こんな方法でも十分おいしいだしがとれるんですよ」

イチからだしをとるなんて面倒、と顆粒のコンソメや粉末だしを使っている人も多いはず。しかし、堤さん曰く「西洋のブイヨンや中国の上湯に比べたら、日本のだしは意外と簡単」。

もっともよく使うという煮干しは、取り除く手間を省き、具材として食べてしまうのが堤さん流。さらに、肉や魚介など旨味の多い食材を使えば、煮込むだけでおいしいだしが出るといいます。

「だしとしても具材としても使えるのがひき肉。新鮮な肉を選び、焼き付ける際に日本酒をふりかけると臭みが消え、ていねいにあくを取りながら煮出せば、和洋中、何にでも合うおいしいだしがとれます」

パックや顆粒のだしの中には塩や旨味成分などが入っているものも多く、「簡単にだしを取ることを覚えて、素材そのもののおいしさを知ってほしい」と堤さんは提言します。

煮干し・かつお・昆布で簡単に

「煮干し、かつお節、昆布は常備し、料理や食材などに合わせて選びますが、最もよく使うのが煮干し。簡単にとれ、我が家の日常だしです。私はそのまま具材として食べていて、栄養も満点」。
煮干しの脂は時間とともに酸化するため、乾煎りするのがおいしく仕上げるコツ。
鮮度の高いうちに使い切るよう心がけて。

煮干し

常備しているのは瀬戸内「やまくに」のいりこ。香川県伊吹島産「かたくち煮干し」で完全無添加。うろこ剝がれのない、きれいな銀付で上品ななかにも旨味が豊かに広がります。

かつお

よく使用するのは「築地和田久」削り節。手軽にだしをとりたいときはスーパーで買えるパックの削り節と水を鍋に入れて煮出しても。「うどんのだしは、かつおに限ります」

昆布

利尻の昆布をよく使います。すっきりした味に仕上がるので、澄んだ味わいの煮物などに。かつおや煮干しの動物性の旨味と合わせると「旨味の相乗効果』でよりおいしく。

ひき肉は万能! 中華や和食、洋風の料理にも

ひき肉は何より鮮度が大事。
「鮮度が高いと臭みが出にくいので肉屋で挽いてもらうのが理想です。洋風や中華風、和風など、炒める際の油や仕上げの調味料、加える香味野菜などで自在にアレンジできます」。
例えば、オリーブオイルとセロリ、ローリエで洋風、ごま油としょうがとねぎで中華風、しょうがとしょうゆで和風に。

よく使うのが豚ひき肉と鶏ひき肉。
鶏ひき肉は脂分が少なく、鍋底にこびりつきやすいので焼き付けず、水と一緒に鍋に入れて火にかけ、じっくりと煮出すのがポイント。

少ない素材とだしを組み合わせ そぎ落とされた味を楽しむ

堤さんの料理の神髄は「食材そのものの味をシンプルにいただくこと」。そのため、使う食材も少なめです。
 
「みそ汁も、自分でいただく時は具をたくさん入れません。具だくさんもおいしいのですが、2種類くらいの具材とだしで、それぞれの素材をきちんと味わいたいほうなんです」
 
普段の食事は、煮ものやみそ汁といったシンプルな献立が中心で、だしは料理に合わせて、その都度とることが多いとか。
 
「なかでも煮干しだしは、作り置きが必要ないくらい簡単。バターとの相性がとてもよく、白菜を煮込んで酒としょうゆとバターで仕上げるのもおすすめです」
 
にらと納豆のみそ汁など、クセのある素材同士を合わせてもおいしくまとまり、まさに万能だしと堤さん。
 
煮干しを具材として使うことも多いそうで、「ひじきや豆、根野菜などと炒めて一緒に煮込めば一品料理に。乾煎りして野菜とごはんと炊き込んでもおいしいですよ」

煮干しだしの取り方

1.

煮干し約10尾の頭を除き、背の部分から開いてはらわたを取る。

2.

鍋またはフライパンに入れ、弱火で香りが出てカラッとするまで木べらで炒る。

3.

300 mLの水を加えて中火で煮る。煮立ってきたらアクを除く。

【POINT】
油はひかずに乾煎りし、焼魚のようないい香りがしたら水を加えるタイミング。
魚、肉は沸く前にふたをすると臭みがでるのでふたはしないこと。骨など煮干しの口当たりが苦手な人は、煮立った後にとりだして。

だしの素材を使ったアレンジレシピ

【煮干しだしを使った】 煮干しごとふっくらと!「豆もやしのごはん」

材料( 作りやすい分量 )
もやし … 1 パック
太白ごま油 … 小さじ1
米 … 2 合(洗米してざるに上げる)
煮干し … 10 尾(頭とはらわたを除きフライパンで乾煎り)

A
酒 … 大さじ1
しょうゆ … 大さじ1
水 … 370mL
塩 … 小さじ1/3

作り方

1. もやしはさっと洗い水気をふき、ごま油をまぶす。

2. 米と煮干し、もやしを鍋に入れ、Aを加えて強めの中火で炊き、沸騰したら、弱火で15 分炊く。炊き上がったら塩を加えさっくり混ぜる。

【ひき肉だしを使った】 忙しい時こそ体に沁みるだしの旨味 「ひき肉とワンタンの塩スープ」

材料( 2人分 )
豚ひき肉 … 150g
しょうがの千切り … 1 かけ分
ワンタンの皮 … 12 枚
ごま油 … 小さじ2
水 … 300mL

A
酒 … 大さじ2
塩 … 小さじ1/2
しょうゆ … 小さじ2

作り方

1.

鍋にごま油を入れ、豚肉を中火で色が変わる程度に1 分半ほど炒める。

2.

水を加え、煮たててアクを除き、しょうがとAを加えて味を調える。

3.

仕上げにワンタンの皮を1枚ずつ重ならないように入れさっと煮る。

〔POINT〕
ワンタンは1 枚ずつ、そのまま投入。ひき肉を包む作業が不要なので、忙しい時や疲れている時も簡単に作れます。


撮影/砂原文 文/坂口みずき
 
大人のおしゃれ手帖2025年5月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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