ジャンポール・ゴルチエとデュラン・ランティンク。ファッション界の悪童とその後継者の共通点

2020年に引退したファッション界の“悪童”、ジャンポール・ゴルチエ（JEAN PAUL GAULTIER）の後継者がついに決まった。それは、37歳のデュラン・ランティンク（DURAN LANTINK）。「形やフォルムにこだわり、新しいアイデアを生み出そうとしている」と本人が語るように、茶目っ気とユーモアにあふれ、誇張されたシルエットを得意とするオランダ出身のデザイナーだ。

ランティンクはまた、既存の衣服や素材に潜む可能性に目を光らせて、積極的に再利用するデザイナーでもある。これはゴルチエにも通ずる考え方で、初期のコレクションの多くでは藁のランチョンマットから作ったドレスや、茶こしや鍋用の洗浄ブラシなどをジュエリーとして再提案した。あらゆるものを服や小物へと変身させたゴルチエは発想源も豊かで、メゾンのアイコンであり、フレグランスのパッケージとしても採用された金属缶からできたブレスレットは、飼い猫に餌をやっているときに思いついたという。

「日用品を特別なオブジェに昇華させる」というアプローチに加えて、2人は生活感や着用感のあるルックを高く買っている。1997年にオートクチュールラインをスタートさせたゴルチエは、自身が実際に着用していたデニムをアップサイクルしたルックをコレクションで発表。ランティンクも「着込まれた服に目がない」とインタビューで語っている。

だが、ランティンクとゴルチエの最も大きな共通点は、誇張されたシルエットのルックを好むところだろう。ランティンクは発泡スチロールでしなやかなフォルムを作るのを好み、ゴルチエは熱風で文字通り服を膨らますことがあった。その最たる例が、1995-96年秋冬シーズンに発表した「サイバー」コレクションのハットだ。空気を送り込むことで膨らむボンネットはドライヤーキャップそのもの。奇想天外なアイデアの宝庫であるジャンポール・ゴルチエで、ランティンクはどんな新章を描いていくのだろう。

Text: Laird Borrelli-Persson Adaptation: Anzu Kawano

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