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今回は“信用できない”阿部寛か 日曜劇場『キャスター』が初回から視聴者の心を惹くワケ

  • 2025.4.28

すでに大きな注目を集めているTBS日曜劇場『キャスター』。舞台となるのは報道番組だ。主人公は阿部寛演じる破天荒なニュースキャスター・進藤壮一。

視聴率が低迷する報道番組『ニュースゲート』のメインキャスターに就任。番組をぶっ壊すと言い、独自のルールで取材を行い、真実を掴んでいく。

……とこう書くと、真面目で曲がったことが嫌いで、生ぬるい報道番組を覆して見せる、という型破りだが正義感あふれる人物を想像する。が、進藤は真実を知るために手段は選ばない。ちょっとぐらいの悪事になら簡単に手を染めそうだ。第2話の時点では、事実を捻じ曲げることも厭わない人物にも見える。

報道番組が舞台、社会問題を作中に積極的に取り入れている、テレビ局の労働環境に触れる……と一見、骨太なドラマに感じられるが、実は非常に繊細で、不安定さもある作品なのではないか。

「お前が言うのか?」のブーメランにもなりかねない

社会問題を作中に要素として取り入れることはドラマでは珍しいことではない。フィクションではあるが、多くのドラマは現実と地続きだ。現代ドラマがあり得ないような世界観で描かれるとしたら、ジャンルにもよるが場合によっては逆に興覚めになる場合もある。社会問題が含まれることで、より物語にリアリティが増す。

が、テレビ局の報道番組をドラマの主軸で取り上げるとなると、少し観る側の目も厳しくなる。

「ドラマではきれいごとを言っていますが、そうおっしゃる御社の報道姿勢は胸を張れるものですか?」と問いかけられる可能性は大いにあるのだ。

そもそも「テレビ局が作る報道のドラマ作品なのだから」と視聴者側がよりリアリティを求めるし、意地悪な見方をする人もいるだろう。

視聴者側の好奇心も掻き立てる

作中でも話題になっていたが、ニュース番組を観る若者は少ない。情報収集はSNSが中心となるだろう。とは言え、ドラマをよく観る側としては、報道の裏側というのは気になるもの。その報道は忖度ではないのか? という点や、一体、報道番組はどのような人が働いているのかも興味が湧くところだ。

実際、1話を観ただけでも数多くある役職や、誰がどんな仕事をしているのか把握するのにも一苦労だ。これだけ複雑なのか、と思ってしまう。物語を把握するためには誰がどのようなポジションにいるか、ということは重要なポイントだ。それだけに、自然と設定を注視して観たという人も多いのではないだろうか。

個人的にはもう少しそれぞれの仕事内容だとか、組織図が示されると嬉しいところ。総合演出が別に番組のトップというわけではないのだな……と物語の初歩的なところでつまずきかねない。

進藤はダークヒーローなのか

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日曜劇場『キャスター』第1話より (C)TBS

阿部寛が出てくる日曜劇場がおもしろくないはずがない。そんなふうに思ってしまうぐらいには、阿部への信頼度が高い人も多いはず。抜群の安定感だ。

「世の中を動かすのは真実」と言うあたりも“日曜劇場の阿部寛”らしさがある。また、直近では、映画『ショウタイムセブン』でもキャスター役を演じていたこともあって、既視感があるのではないかと思っていたが、それも杞憂だった。

そして気になるのは進藤のバックボーンだ。内閣官房長官・羽生(北大路欣也)との関係性、第1話の進藤家の火事のシーン、進藤の父・松原哲(山口馬木也)の苦悶の表情……いまはまだ伏線が張られている状態なのだろう。

進藤を見ていると、本音を垣間見ることが今はできない。心の奥底に何かに対する復讐心を燃やしているようにも見えるし、実は本当に悪党なのか……。

総合演出として進藤に関わる崎久保華(永野芽郁)の存在も物語のキーに。進藤に対して疑心暗鬼の視線を向けながらも、何かしらの期待をしているようにも見受けられる。彼女自身も進藤と因縁がありそうだが……。

一挙手一投足がどことなく信用ならない進藤。信じていいのか悪いのか、という揺らぎではなく、こんなに「信用ならない」阿部はなかなか見られないようにも思う。

このまま「信じられない阿部」で居続けるのか、それとも信じさせてくれるのか、はたまた信じさせた上で裏切るのか。そんな視聴者も疑心暗鬼も作品の魅力のひとつにしてしまっているのかもしれない。

物語はまだまだ始まったばかり。疑いの目をもって、今はまだ「信用できない進藤」を観察し続けたい。


TBS系 日曜劇場『キャスター』 毎週日曜よる9時〜